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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第八章 天空都市
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第126話 リア・ルミナス(3)

「話しておかなければならないことは……これくらいだが。何かあるかね?」


「私としては……特には。ミルアルト君、君は?」


「オレは……あ、そうだ。古代都市って、何が危険なんですか? さっきの話では、もともと吸血鬼ヴァンパイアが生活していた遺跡なんでしょう?」


 古代都市は一種の迷宮ダンジョンのようになっているらしいが、そんなところで吸血鬼ヴァンパイアは暮らせたのか、それとも何か変異したのか……。


迷宮ダンジョンが何か、それは知ってるかね?」


「えぇ、魔素が充満したために魔物が出現する、というものでしょう? 一度行ったことはあります」


 イスダン迷宮、夏休みの前だったな。アレは確か全二十階層からなる人為型迷宮メイドダンジョンだったか。ただあそこだって、危険と言われるほどのものでもない。


「古代都市の最下層に存在する巨大な魔石、それは魔素を吸収するものだ。つまり、魔物の発生抑制にもなる」


「……いいことでは?」


「あぁ、いいことさ。ただ上手くいかないこともあってね。魔石のある最下層、魔石に溜め込まれた魔素から生まれた魔物が厄介でね」


 なるほど……。魔物とは過密度の魔素から生まれるもの、つまり都市を浮かせるほどの魔素があれば、相応の魔物が生まれるというわけだ。Aランクか、あるいはSランクか……。


「その魔物というのは?」


混沌彼岸騎士(カオス・リナイト)、肉体を持った骸骨スケルトンさ。ただの彼岸騎士リナイトでも七星級に匹敵する力だというのに」


 ……彼岸騎士リナイトか……良い思い出もないな。アレを見たのもイスダンだったか。迷宮ダンジョンの主っていうのはどこも彼岸騎士リナイトなのだろうか。


「ならば私が倒しておきましょうか?」


「ぜひともそう依頼したく、あなたをお呼びしたのだ、シューレット殿。一応、あの魔物が魔石の守護者とはなっているが、どうにも不安でね」


「いやいや、お気になさらず。私としても古代都市には興味がありますから。して……浅層までは学園の生徒達を同行させても?」


「もちろん。迷宮ダンジョンはなかなか面白いだろうから、学びにもなろう」


 ほう……確かに面白いな。八星級ならば混沌彼岸騎士(カオス・リナイト)に負けることもないだろうし……。しかし混沌カオスか……混沌カオス……ん?


「……リア王、その混沌彼岸騎士(カオス・リナイト)の現れる前、混沌(カオス)系の魔物は出ていましたか?」


「あぁ、肉体を持った魔物というのは珍しいが、迷宮ダンジョンではそのばかりではないからな。特に古くからの死体も迷宮ダンジョンに吸収されていたりするわけで……」


「だとしたら歴史の破壊者(デスティニー)だ! ヤツらが関与してる!」


「……何ッ!?」


 ヤツらは混沌人(カオスゾンビ)混沌竜カオスドラゴンを生み出していた。恐らく人工生命体ホムンクルス、幹部の失敗作だ。断定することはできないが、オレの勘ではまず間違いなく歴史の破壊者(デスティニー)が関与している。


「シューレットさん! こうしてる暇はないかもしれません! リア王、すみません!」


「あ、あぁ!」


 ただ全力で、走り出した。分からない。偶然、オレ達がここに来ているドンピシャのタイミングに行動を起こすのか。そう聞かれればイエスとも言えないが……が。考えるべきは“最悪”だ。


「……あ、古代都市ってのはどちらに?」


「……門を出て右に進むといかにもな入り口がある。学園の生徒が近くにいるだろう。私も準備が整ったら助太刀する」


「ありがとうございます!」


 リア王の呆れ気味な顔が痛いが、今は気にする暇もない。歴史の破壊者(デスティニー)の幹部がいるとは限らない。いたとしたら……。


「はぁ、はぁ……ランファ先生!」


「あぁ、ミルアルト君、国王様とのお話は終わりましたか?」


「あのぉ……諸事情により、シューレットさんと共に古代都市に入ります! すみませんが何が起こるか分かりませんので、どうか備えておいて……」


「は!?」


 マズい……怒られる。ランファ先生は怒ると怖いんだ。本当に……マジに怖いんだ。ここを素通りはできないか。せめて説得しなければ……。


「なぜですか!?」


「あのぉ……ちょっと危ないヤツがいるかもそれなくて……」


「それが本当なら行くべきは私達教師です」


「そ……それもそうっすね……」


 極めて正論……だが。歴史の破壊者(デスティニー)がいるとするならば、そもそもその存在は機密なわけで……どうする? どう言い訳したらいい……。


「えーっと、えーっと……」


「ランファさん、悪いけど、こればかりは譲れない。私の判断だ」


「シューレットさん……」


 よく言ってくれた! さすが法帝だ。発言権って言うのかな、やっぱりオレも法帝を目指した方が便利そうだな。が、そんな様を黙ってみていない人もいて……。


「シューレットさん、私達にはあなたに意見するほどの力はない。が、彼は生徒だ。相応の理由を聞くさかねば、納得もできませぬ」


「ジンデールさん。確かに彼は生徒だろうが、英雄の契約者でもある。これはそのレベルの問題だと思ってくれ」


「……それ以前に、生徒だと言っているんです。教師は生徒を守るものだ。彼だけを危険に向かわせるわけには……っ!」


 瞬間、都市は大きく揺れた。地震? いや、ここは天空都市、揺れるような大地はない。だとしたら……。


「行くぞ! ミルアルト君!」


「すみません! 先生! お叱りは後で聞きますから……!」


「あっ……おい!」


 オレとシューレットさんは並んで古代都市に足を踏み入れた。埃臭いような匂いに、変わらず揺れる地面。


「……ッ!」


「参ったね……これは……」


 重い空気と……重い魔力。魔物のものではない。これは……そんなレベルではない。

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