第124話 リア・ルミナス(1)
「エスト!? マジで!?」
ネフィル=エスト、知らない者はいない。10,000年前の世界を救った英雄……神話を知らない者でもその名前くらいは知ってる。
「だからさっきも言ったけど……この剣、私が使ってたやつだよ」
これ以上ないほどの納得と、驚き。まさかそんな……そんな大物だとは。多少の予想はしていたけれど、いざそうだと確信すると……
「そりゃあ強いわけだよ。……強いって言うか、バケモノなわけだ」
「えぇ〜……それなら私も会ってみたかったな」
「……まぁそのうち機会があればな」
ルーシュはどこか冷静だが、まぁ分からないこともない。オレだってあまりに突然で……現実離れしているせいで騒ぐことさえできない。……思えば、白天を使えたのも元々師匠の技だからか。
「爺さんになってたけど……若い頃はもっと強かったのかな」
「あの人、歳取るのね。老いてるってことはまぁ……肉体が若い頃の方が力はあったんじゃない?」
「魔王なんだっけ?」
「そうだよ」
セリアから聞いたところによると、魔王とは魔神・ルシフェルの子のことなのだとか。大魔王と呼ばれるだけあって、生物としては人間ではないらしいが。
「ま、魔族と人間の違いなんてさほどないけどね。少なくとも組成的には」
「……まぁ今はいっか。ルーシュ、この後はどっか行くのか?」
「うーん……公園でのんびりしようよ。久しぶりに帰ってきて……さっきので疲れてるでしょ?」
「ははっ、気遣い嬉しいよ」
オレはルーシュとしばし時間を共有し、それから寮に戻った。久しい部屋、静まり返った外の暗闇。案外、何とも思わないが……これが安心ってものかな。
***
「さぁ、これから天空都市に向かいます。点呼を取りますから、呼ばれた生徒は……」
一週間、時間が飛んだのかと思うかもしれないが、この間驚くほどに何もなかったのだ。そりゃあもう、特訓やら何やらばかりで……。
あぁ、そうそう。進歩と言えば、ジンリューとの激闘を見たからか、オレに争奪戦を申し込む生徒はめっきりいなくなった。……それくらいかな。……オレの方こそルーシュに争奪戦でも申し込もうかと思ったが、やっぱり狙うなら序列一位だよな。
「さて、では改めまして、今回ご同行いただくシャーレットさんからご挨拶をもらいます」
「やぁ、諸君! 改めて、私は“剣帝”シリアン=シューレット、よろしく!」
極めて簡潔、面白いほどにあっさりしていた。まぁそんなもんか。長々と演説する必要もないだろうしな。
と、そんなことを考える暇もなく、空から一筋の光が降りてきた。……いや、立ち昇ったのか? とにかく、その光によってこの地と天がつながった。……なるほどね。
「さて、みなさん。この光がゲートとなります。天空都市に繋がる……私達のためにわざわざ移動してくださったんですよ」
……天空都市、というものにはあまり詳しくもないが、なるほど、空を自由に浮かんでいるのか。……なんかめっちゃ好待遇だな。
「では、一人ずつこちらに入ってください」
鬼教官……もといジンデール先生を先頭に、一人ずつその光に歩みを進める。転移門と似たような原理か。座標を指定しなくてもいい代わりに、直線の転移しかできないってところかな。
引率の教師はジンデール先生とランファ先生……七星級の二人に法帝もいるのだからまず安心か。
「あ、そうでした。ミルアルト君、あなたは生徒代表として国王様に挨拶に行ってください。シューレットさんが同行しますが」
「んなばかな。なんでオレが? 一介の生徒ですよ?」
「生徒会じゃないですか」
「それを言うならカミュールだって……」
オレが何をしたったいうんだ。何も悪いことはしてな……してないよな? そんな重大そうな……無礼を働いたら殺されるんじゃないか?
「向こうからの指定です。“グランデュース=ミルアルトと会いたい”と。今回天空都市に行く許可を貰えたのも……というかあちらからお願いしてきたのも、それが条件でしたから」
「えぇ……そういうのはオレに相談してくださいよ」
「セルセリア様から許可なら取ってますよ」
セリアかっ……! そうか、オレが師匠のところで修行してる間……まぁ面白そうだしいいか。それより、なるほどね。変に好待遇だと思ったらオレ達がお願いしたんじゃなく、向こうから申し出てきたのか。それほどまでにオレに会いたい理由……。
(セリアは知ってるのか?)
(さて、どうかしら)
困ったものだな。それもまぁ、光の向こうの景色を見れば、どうだってよかったと思えたが。




