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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第八章 天空都市
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第123話 争奪戦(3)

「いやしかし……本当に驚いたよ。まさかこの2ヶ月でここまで腕を上げているとはな。加えてまだ本気ではないと来た」


「いや……本気じゃないって言うと違うな。殺し合いじゃないと条件を満たせないんだ」


「なるほど、条約か。見れないのが惜しいね」


 試合も終わり、観客は流れるように減っていった。勝てないもんだな。学園最強っていうのは……人類最高戦力ってのはなかなか遠いもんだ。ふふっ、いやぁ、面白い。


「ミラー! お疲れ!」


「おわっ……。ちょっと身体が痛むから……」


「凄かったね、ミラ! めっちゃ強くなってんじゃん!」


「よく言うよ」


 ルーシュの魔力は七星級の最上級……総量だけでいえば八星級とも言えるだろう。ユリハ様との修行はされだけのものだったのか……いや、オレも人のことは言えないが。


「いや、しかし……私も驚いたな。なぁ、ミルアルト、私は置いてかれた気分だよ」


「おぉ、お前も久しいな、カミュール。……つっても、魔力は六星級にはなってるよな?」


「この夏休み、母上の時間があってな……」


 ……あぁ、カミュールの母さんといえば十法帝、“剣帝けんおう”のシューレットだったか? 六星の壁は高いと聞くが……彼女もまぁまぁ怪物だな。


「師匠が特別でね。オレはまぁ……恵まれてただけで……」


「少年! ナイスファイトだったぞ!」


「ん……?」


 聞き慣れたような……いや、聞いたことのない声に呼ばれた。ただその顔は知っている。知らない方がおかしい顔だ。


「は、母上! いきなり来ないでとあれほど……!」


「これはこれは、シューレットさん。初めまして。カミュールにはいつもお世話になって……」


「ミラのことは私の方がお世話してますけどね」


「ルーシュ、今そういう話じゃないよ」


 若々しいお姉さん、そんな雰囲気の女性だった。なんていうか……自由奔放そうな。自律はしているだろうけど、たぶんセリアとかその辺と同じタイプだ。……一応言っておくが別に舐めてるわけじゃない。


「……いや、流してるけどなんで学園に?」


「はっはっ! そうか、君は知らんか。特別教師だよ。来週のな」


「来週というと……あぁ! まさか法帝がいらっしゃるとは!」


 来週は一年の課外授業、カミュールの親という縁があるからか? 本来、そんな実力者が同行するものでもないし……そもそもランファ先生がいれば何ら問題はないだろうに。


「しかし心強いですね。シューレットさんが見守ってくださるとは……」


「ん? 知らないのか? 今回行くのは天空都市だぞ?」


「……あぁ……なるほど」


 天空都市、危険なんてものじゃない。雲の上に浮かぶ幻想の都、そこは翼人と呼ばれる種族が住まう……それはもう美しいところだと聞く。あぁ、いや、都市そのものが危険なわけでもないが……オレがイメージしているのが正しければ、危険なんてものじゃない。


「なぁ、カミュール。まさか課外授業で、観光だけ、なんてことはないよな? ましてやオレ達特等クラスが……」


「あぁ、もちろんだ。ふふっ……古代都市、ロマンがあるよなぁ」


 やっぱりか……まさか古代都市に、ね。学生を行かせるか? 普通さ……。オレは全くもって問題ない、というか、そういうのは好物だが。


「ねぇ、もう話はいいでしょ! ミラ、今日は私に付き合ってよ!」


「ちょっ……わっ! 分かったから……!」


 袖を引っ張られ、ジンリュー達の背中はどんどん小さくなっていった。なんか……強いな。連れて行く力が……握力がなんか違う……。


「いやしかし……どうだった? ユリハ様の修行は」


「ユリハ様さ、バケモンだよ、アレ。マジで。体力が底なしって言うのかな? いや、実際魔力が底なしではあるんだけどもね」


「ははっ……まぁ、流石伝説のお方だね」


 ルーシュの肌に浮かんだ鳥肌を見れば、その恐ろしさ……もといスゴさは分かった。獄境に行ったときに一度会っているが、やっぱりあの人も強いんだな。


「そうそう、ミラの方はどうだったの? 最初よりも1ヶ月、予定伸ばしたじゃん? ベルベットさんの師匠ってどんな人?」


「どんな人、か……。オレもそれは……」


 老人……それもスゴい強い……いや、めっちゃ強い老人……かなぁ。強いなんて次元じゃないしなぁ。……あ、そうだ。


「忘れてた。なぁ、セリア。オレ師匠から剣を預かってんだよ。よかったら貰ってくれねぇか?」


「ん? いいよ。私はオーディラン持ってるけど」


「なんかそれより馴染むんじゃないかって」


 そう言いながらセリア直伝の空間収納アイテムボックスにしまっていた例の宝剣を取り出した。改めて見てもかなり良い武器だ。そして相変わらず熱さを感じる……。


「あっ、やっぱりコレか。ふふ……やっぱり使い慣れた剣の方がいいな」


「……使い慣れたって……何言ってんの?」


「コレ、私の生前使ってた剣」


「はっはっ! そりゃまた面白い冗談だな」


 何を言っているのか。この剣は師匠のかつての仲間が使ってた剣で、炎の魔力が馴染んでいるようで……宝剣、つまり誰か異常なまでの手練が使ってたはずの……? いや、待て待て……。


「いやぁ、あのとき無くしちゃったと思ったんだけどなぁ。私が死んでから見つけてくれたんだ」


「な、なぁ……師匠ってさ……」


 思えば合点のいく要素はある。法帝に数えられない存在でありながら、その力を遥かに凌駕している。魔力を一切感じず、神聖力という誰も知らないエネルギーを扱う。そして……コンさんという天界の存在とも交流がある……。


「アリス師匠ってもしかして……」


「あれ? 聞いてないの? エストだよ、ネフィル=エスト。私の旦那で、それでいて神話の英雄……大魔王でしょ?」

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