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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第八章 天空都市
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第122話 争奪戦(2)

「くッ……!」


「そら、もっと張り切れ!」


 泡の猛攻を身体をよじりながら躱した。斬ろうとしてもなかなか刃を振れない。オレの魔力でジンリューの攻撃を一部掻き消そうとも、やはり圧倒的な質量には対抗しづらい。


 まともに打ち合えば押されるのはオレ、ならば鋭さで勝負するしかないか……。


「『枯山水かれさんすい』!」


ッ……!」


 セリアの炎を全て刀身に……内側に押さえ込んだ。破裂しそうな魔力も熱量も、刀を振る力を底上げする。


「はっ……はっ……!」


「はぁ……!」

「『泡沫転生リグロ』!」


「っ……なに……!? 亀裂……!?」


 泡に触れたところから、ステージに亀裂が広がった。いや、それだけじゃない。空間、炎、ましてやオレの魔力にまで……。身体強化を、天現融合を保つことさえ難しい。


「くッ……これは……」


「昇華、ってのを知ってるか?」


 大きく跳ね上がり、距離を取った。昇華、つまり能力スキルの本質に至ったと……考えれば分かったか。法帝の最低条件だと、セリアが言っていた。


 異様に硬い泡の波、石粒の嵐の中にいるような……くそっ。刀を振っても止められねぇ。届くなんてこともねぇ。


「はっ……悲しいな。オレはまだその境地じゃねぇっとのに……」


「あ、そうか。……なら法帝の座を譲るのは難しいかな」


 痛っ……? そうか、オレの身体も例外じゃない。腕にも顔にも亀裂が入っている。……時間がないか? 参ったな。


「ふぅー……」


 刀を低く構え、魔力を高速で循環させる。セリアの炎はそんじょそこらの炎魔法よりも火力が高い。ゆえに、術者であっても制御を誤れば火傷を負う。この結界は自傷は補えない……わけだが。


「ははっ、おいおい。マジか……?」


「……マジだよ」


 熱い……痛い。が、これでいい。どうせ昇華したジンリューの前では天現融合もすぐに解除されてしまう。ならば、全ての力を今ここで……!


「『天翔てんとの』……」


 反属性の魔力を白天の要領で圧縮すれば、他者の魔力など介入する余地はない。それを刃にすれば……当然……。


「『灰燼かいじん』!」


「なるっ……ほどっ! これは……!」


 ジンリューの苦悶の表情も、今は気にする余裕がない。ただこの熱い刃を、魔力の刃を、振り下ろすだけ。オレ能力スキル殲滅の騎士(ディザス・ナイト)』、魔力も魔法も斬る力……。そのおかげで止めることなど誰にもできない。


「うぉおオオ!」


「くっ……ぐぁ……!」


 泡の触れたものを無に帰す『空間支配』の力……それによって身体が削られていく痛みを感じた。けれどそんなもので止まるオレでもない。刀を振れば目の前にあるのはただの土煙……さて……。


「ははっ……死んどけよ……人として……」


「いやいや……危なかったよ。俺の泡がお前の攻撃を逸らしてなかったらと思うと……」


 結界内にジンリューの姿がある、今の一撃で沈められなかったのか。ふぅ……いかんな、力が、セリアの魂が離れていくのが分かる。


 ただ向こうも軽傷ではない。肩から腰にかけて袈裟斬りにされたその深い傷が……そう、あと一回だ。


「ふ……っ!」


「まだそんなっ……!」


 残りわずか、この魔力を放出すれば……これが結界の内側でなかったら死に直結し得るほどの……。これで勝てなければ潔く負けを認めざるをえない。


「がはっ……!」


「何をする気……」


 身体を削られ、破壊されていく。それすらも意に介さず、再び指先に白天を生成した。そこにさらにセリアの炎属性の魔力も加え、ただこの一撃のために……


「くっ……『火剣矢かぐや』!」


「ッ……!!」


 グランデュースの……刃の魔力を懐から叩き込んだ。一直線に、確かに胸を貫き、身体を焼いた……はずだ。もはやオレの身体は視界さえも失われているが、魔眼で見たジンリューの魔力を確かに貫いていた。


「はっ……はっ……。……あれ?」


 結界の外側か……? 火傷の熱だけはまだ残っているが……そうか、死んじまったのか。となると、まぁオレの負けか……。


「はっ……ははっ! いや、まさか……」


「ん? ……ん?」


 ……結界を(はじ)き出されたのはオレだけじゃないようだ。オレの『火剣矢かぐや』は、どうやら有効打に……致命傷になったようだ。


 2人とも場外に、勝敗はどうなったのか……オレの死にかけの魔眼が捉えたのはほとんど同時だったが……さて。


 上体を起こして呼吸を整えた。試合が終わっても息が上がっているのはやはり自傷の……火傷のせいか。筋肉痛がするような……しないような……。


「はぁ……はぁ……おい! ルーシュ! 今の試合、どっちが勝ちだ!?」


「うーん……私個人としてはミラって言いたいところだけど……」


 流石に肩入れはしちゃくれないか。いや、この場でそんなことをしてほしいとも思ってはいないんだけども。


「ギリギリ、ジンリューの勝ちかな。最後の一撃、アレを出し切って倒れたミラと、受けた上で倒れたジンリューだったから」


「そうか……どうだ? 異論は?」


「はぁ……はぁ……いや、ねぇよ。オレも負けたと思ったからな」


 やけに沸き立つ観客席も、今は少し無視しようか。顔が痛い、焼けたから当然か。……楽しかったな。法帝に……八星級に勝つにはもう少し必要か。

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