第121話 争奪戦(1)
「法帝の……座……?」
十法帝の座を譲ると……そう言ったのか? ……いやいや、それは何かの間違いだろ。ジンリューは七星級、法帝は八星級で……最強の10人のことだ。校長は法帝だが……。
「マジ?」
「それはどっちだ? その地位を賭けることについてか……あるいは……」
「あぁあ、やっぱりそういうことか」
師匠のとこにゃ新聞も届いちゃいなかったからな。……いや、師匠は読んでたな。オレはそれを気にするだけの体力がなかっただけで……。
そういえば、先代校長、暴帝のバンドールがそろそろ引退するとか……そんなことを言っていたっけな。ない話じゃない。いやしかし……。
「史上最年少の八星級って、いくつだっけ」
「記録では、14歳だったかな」
「なんだ、じゃあ珍しくもないんだな」
なかなか認め難いが、前例はあるだけマシなのか……。にしたって、ジンリューだって19だろ。……そう聞くと割とアリな気もするな。
(法帝って枠組みなら7歳でなった人もいたわよ。私の時代の、リンシャって人が)
(……もういいよ、何でも)
悲しいな、オレは16なのに五星級で……いや、結構スゴい方なんだけどね。でもそれなりに努力してきたとは思うし、複雑だ。なんとも。でもこれが成長限界となると、まぁ凡人の域を出ないわけだ。
「ふふ、どうする? 臆したならやめるか?」
「はっ! 馬鹿言うんじゃねぇよ。やろう。オレがその座を奪ってやるよ」
「よし、では行くか。闘技場に……久しいな」
高鳴るな。師匠にはまるで歯が立たなかったが……さて、法帝となるとどうだろうか。剣が届かないことはないだろう。そもそも師匠に対してはエプシロンでさえ歯が立たなかったわけで……改めて何なんだよ、あの人。
「ねぇ、大丈夫なの? ミラ。ジンリュー、めっちゃ強いし、今の私でも敵わなそうだけど……勝算は?」
「どーだろ。正直、自分の強さもイマイチ分かってないんだけど……勝つよ。戦うからには」
「そっか」
ルーシュの励ましもなにもない言葉、それはただの信頼だ。それに今のオレにはとっておきが……あぁ、いや、アレは使っちゃダメなんだった。少なくとも死にかけなきゃ使えない以上、結界の張られた闘技台じゃそんな状況にもならない。
参ったなぁ。神聖力さえ使えたら、正直負ける気がしないんだが……。
「始めるか、ミルアルト」
「いっち、に、さん、し……。よし! あぁ、始めよう……が、ギャラリーが多いな」
観客席を埋め尽くすほどの生徒と……教師が一部か。見知った顔も当然いるわけだが……もしここに歴史の破壊者の内通者がいたらと思うと不安だけど、その辺は仕方ないか。
「生徒会が揃って闘技場に向かったら、そりゃあ注目は集まるだろ。そんでもってミライア達が宣伝してたからな」
「視線を集めるのは趣味じゃないんだけど……いっか」
ジンリューの能力は透明な泡……それが空間に作用するんだったか。削り、破壊し、圧縮する……それと未来予知か。いや、それは戦闘には使えんと言ってたか? まぁどちらにせよ、まったくもって問題ない。
「行くぞ、八雲」
久々の闘いだ。オレの刀もずいぶんと上機嫌、コンディションはバッチリだ。それでいて、相手に不足なし。護符は燃やした。闘技台の結界内なら危険もない。
「確認だ。この試合に勝てば君は晴れて序列一位、法帝の座も獲得する。まぁ、後者に関してはもろもろ面倒なところもあろうが……」
「あぁ、それでいい。ただ今は楽しもう」
(セリア、貸してくれ)
(えぇ、全部行くわよ)
セリアの炎の魔力が熱い。天現融合も久しぶりか? 師匠との修行にはセリアも連れて行かなかったし……。この2ヶ月で、完全に融合できるようになった。良い進歩だ。
「くっくっ……いきなりか! ならば俺も……!」
「くっ……!」
凄まじい魔力……アレがジンリューの天現融合か……。……違うな。あの魔力は彼本来のもの。つまり融合はあくまで出力の補助か!
「『殲滅剣』!」
……? 刀を振る腕が重いような……そうか! 師匠に鍛えられてオレの力は飛躍的に向上した。つまり天現融合で得られるものも少ない……!
「『限泡波』!」
「なんだ……このっ……」
質量か! 粒子のごとく小さな泡も、集合すれば荒れた大波のようになる。オレの魔力がジンリューの魔力を掻き消したとしても、視界は簡単に遮られる。魔力は追えるが……燃やせばどうなるか……。
「『炎剣』……!」
「ハズレだ」
八雲にセリアの炎を纏わせたその瞬間、無限に等しい泡沫は連鎖爆発を起こした。熱いし痛い……空間そのものが破裂しているのか。爆破の権能を付与してたんだな……!
「ダメ押しだ!」
「っ……大人しく喰らうかよ!」
ジンリューが放ったやや大きめな球体。たぶん、空間を圧縮したものだ。触れればアレは大爆破を起こす……。
「『天翔暴風』!」
「ぐっ……!」
空間を超える剣の道。空間を操ろうとも、それごと斬ってしまえば何ら問題はない。八雲の刃は泡を焼き斬り、止まることなくジンリューの身体を斬った。オレの魔力……反属性はなかなか有効だな。
「はぁ……はぁ……。相性がいいか? 全てを斬り伏せる……グランデュースの剣術は……」
「はっ……はっ……参ったな。想像以上に……強いじゃないか……」
傷は深そうだな。皮膚の向こう……骨や内臓にもダメージはありそうだ。オレの内臓も爆破されている、ということを除けば良い線だな。……少なくとも、今のオレは法帝にも見劣りしない。




