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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第八章 天空都市
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第119話 新たな法帝(1)

 1,500回、それはこの2ヶ月で師匠と勝負した回数だ。端数は分からないが……1日に30回以上、我ながら狂っているとは思うよ。オレってそんなに根性があったかな、なんて。


 そしてオレの剣が彼に届いた回数。……あぁ、言わなくても分かるだろう。ただの1度でも届いてくれたのなら、こうも数えちゃいないさ。こんなんじゃ、オレがどれだけ強くなったのかさえ分かりゃしない。


「“叢雲剣むらくものつるぎ”……!」


 白天を纏った剣。師匠の……本物の白天を見てからというもの、その精度は確かに向上している……はずだ。空気の焼ける音も、削れる音も聞こえる。が……。


「アンタ……マジに化け物かよ……!」


「余裕だな、もうちょっと押していこうか」


「ぐッ……」


 重い……。流れは感じない……つまり、相変わらず強化魔法も何も使っていないただの蹴り。それでもオレの強化した身体……神聖力を使っていてもまるで歯が立たない。


「はっ……はっ……『天翔てんとの』……」


 これが最後だ。魔力も何も、この一振りに全てを乗せるしかない。


 バカだとは思うが、これがオレの全力だ。全力の一撃ならば……あるいは。


「『暴風ぼうふう』!」


「ほう……!」


 オレの八雲が、師匠の刀と交差した。分解しろ……分解しろ……! 師匠の力を削って……そこに届け……ッ!


 全体重を、まさに全力を乗せている。なのにちっとも押せやしない……いや、少しだ。今まさに、少しだけ押している。


「うぉおお!」


「ふっ……強くなったな」


「ッ……!?」


 ずっと遠いところに……10メートル以上は離れたところに師匠の姿があった。吹き……飛ばされたのか? 何が……何をされた?


 燃え盛る師匠の身体……それと刀。それだけではない。空中に浮かぶ無数の炎の刃。なんだ、アレは……。まさかアレが……。


「ははっ、参ったな……それが、アンタの能力スキルっすか?」


「ん? まぁ……そうだね。能力スキルの一部だ」


 ってことは、師匠の本気をほんの少しだけ、引き出すことができたのかな。そう思うとオレはだいぶ成長できたんだと、そう言ってもいいだろう。だって初めは……そうだよ。師匠の前に立つことすらできなかったんだから。……っと。


「今日の修行は終わりですか?」


「もちろんだ。君はそろそろ学園に戻らなければならんだろう? いつまでもここにいてられんだろ」


 楽園の外側、澱んだ空は久しぶりに見る気がする。いや、昨日も一昨日も見ちゃいるのだが、この一戦がいやに長く感じたから。


「ミラ、君に渡しておくものがある」


「ん? わっ……!」


 師匠が放り投げたのは……細剣? 特別な力は感じない……いや。どこか炎の熱を感じるな。魔力の伝導性も極めて高い……一般に宝剣と呼べるほどの代物だ。


「へぇ……これ、師匠の剣ですか? この炎の熱、師匠の炎と似てますよね?」


「いや、私のかつての仲間のものだ」


「えっ! そ、そんな大切なもの、貰えませんよ!」


「いや、君が貰いなさい。セリア……君の守護者にでも構わない。八雲よりもよっぽど良いものだし、オーディランよりも扱いやすいはずだ」


 半ば強引に手渡されたその剣を、もはや返すことはできなかった。八雲を手放すつもりもないが、なるほど、オーディラン……名剣か。確かセリアの使ってる剣がそれだったな。


 ……ん? なんでそれを知ってるのか……というのはまぁ無視をしよう。師匠のことだもんな。うん。それくらいは知っててもおかしくない。


 ただ圧倒的におかしい点がある。師匠の炎と、似たような力が馴染んだ宝剣。それは仲間の剣であって、そんな大切なものをオレに……オレとセリアに託す。で、その炎なんだが……。


「し、師匠ってもしかして……」


 いや、あり得ない。あり得る話ではない。けれど、あまりにも合点が多い。10,000年だぞ……? もし、もしもそうだったとしたら……。


「変なことを言ってないで、早く出発しなさい。疲労はもう取れてるだろ」


「っ!? なッ……あ、い……行ってきます!」


 突きつけられた時計のせいで、オレの疑問は吹き飛んだ。マズい、マズい。ただでさえ学園を長期欠席しているというのに、登校日に遅れたとなれば何を言われるか……。先生はともかく、ルーシュやジンリューがうるさくなりかねない。


「師匠! ありがとうございました!」


「あぁ、気をつけろよ。君の道はきっと……険しいだろうからな」


 深々と下げた頭を上げ、オレは山を駆け降りた。ははっ……軽い軽い。修行の成果を感じるのは、案外こんなときなんだろうな。


 聖都に着いたらルーシュに会って……セリアとも久しぶりに会うな。……あ、そうだそうだ。せっかくこれだけしごかれたんだ。序列一位を狙いに行こうか。

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