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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第七章 英雄の街
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第118話 客人訪問(4)

アリス・・・ベルベットとミラの師匠。圧倒的な実力を持つが、正体は不明。全てにおいて規格外。ルシファーに恐れられる


ケイラ・・・アリスの友人。ミラはなぜか名を呼べない


エプシロン・・・プリセリドにて、アリスに手も足も出ずに敗北


黄金の魔力・・・正確には神聖力という、魂のエネルギー。ルシファーと戦う際に必要と言われているが……

「君の言う“黄金の魔力”、正しくは神聖力という。まぁ、名称などどうだっていいのだがね、魔力とは全く異なるエネルギーだから」


「神聖力……」


 楽園の中、師匠の手から溢れ出したのは光り輝くあのエネルギーだった。魔力じゃないエネルギーが存在するのか、という疑問を残しつつ、ただその不思議な力に見惚れるしかできない。


「ほれ、まず少し体験してみろ」


「……ッ!?」


 師匠から放たれた雨雫程度の微力の神聖力、それがオレに触れた途端、不思議な爆破とともに吹き飛ばされた。いや……魔力か? 今……何が起こった? オレの身体を動かすほどの力はなかったはずだ。なのに確かに、吹き飛ばされた。


「魔力とは、世界のエネルギーだ。物理世界に、もう一つ、仮想世界を生み出すためのエネルギー。しかし神聖力はそうではない。それは魂の持つエネルギー、生命を生命たらしめる力だ」


「魂?」


「あぁ。それは魔力や魔素とは反発する反応を示す。互いに殴り合い、単体では発せないほどの膨大な力となる」


 ……なるほど、よく分からんがなんとなく分かった。ただ疑問として残るものもある。


「しかし、それならこれまでの魔力制御の修行は一体……」


「調和が取れれば、暴発することはない。魔力と神聖力を反応しないバランスで混ぜ合わせれば、反発するエネルギーよりもさらに何倍ものエネルギーになる」


「へぇ……」


 さっきの感じからするに、魔力と神聖力の反発する力は、単体で運用するときの5倍はあったと思う。となると、神聖力を操れればそれだけで10倍以上のエネルギーにはなるわけだ。


「いいですね! 面白い! ではその、神聖力はどのようにすれば……」


「まずは私が引き出してあげよう。そこに座りなさい」


「はいっ!」


 草むらの上に腰を下ろし、背中から師匠の熱を感じた。心臓の奥の……もっと深いところが焼けるように熱い。それを師匠が全身に回しているのか、小さな粒子が血管を流れているようにも思える。……てか痛いな。


「……ま、待って、師匠! なんか……めちゃめちゃ痛いんですけど!!」


「魔力を抑えろ。魂の器から無理やり引き出しているんだ。痛むのも当然だよ」


「死……死なないですよね!?」


「安心しろ。たとえ死んでも私がいれば生き返れる」


「え……?」


 それからオレが体験した地獄というものは、わざわざ説明せずとも理解できるだろう。何度身体が壊れるような痛みに襲われたか、何度意識を失ったか。本来ある神聖力を絞り出されたときには、外界は何日も経っていたらしい。


「はぁ……はぁ……。オレ……生きてますか?」


「あぁ、5回ほど生き返った」


「……マジすか」


 ということは、意識を失ったのはそれだけ死んだということか。軽々しくそんなことを言うけれど、師匠はオレの痛みを理解しているのか……。


「これは教訓とでも思いなさい。神聖力は確かに強力だが、それだけに危険なエネルギーでもある。正常に扱えなければそれは魂を削ること。もっとも、調和を取れても完璧に扱えなければ寿命を擦り減らすばかりだがね」


「……師匠も何度か死にかけたんですか?」


「私は少々特別だが……まぁそうだね。ずいぶんと寿命は削ったと思うよ。こう見えてね」


 どう見ても爺さんの身体で“寿命を削った”か。本来ならどれほど長生きする種族なのか……考えるだけムダだろうな。


「はぁ……はぁ……。師匠、オレ、あなたに師事するのはもうちょっと考えた方が良かったんじゃないかって……思います」


「ふふ……あぁ、そうだろうね。まぁ安心したまえ。私の目の前にいるうちは君は死なないし、ここを離れたときはずっと強くなってるだろうから」


「ははっ、間違いない」


 ベルドットさん、つまり人類最強の男だってこの経験を積んだんだ。そう簡単な話でもなかろうが、間違いなく、そのレベルに達するには充分なものを経験している。


「これから2ヶ月弱か。鍛えるのは君の身体能力と魔力制御をベースに、ついでにこの神聖力だな。まずその期間、私の見ていないところでは絶対に神聖力を使ってはならない。そして、それ以降も、滅多なことでは使ってはならない。理由は分かるね?」


「えぇ、乱用しては命が危ないから……奥の手でしょう? ただ慣れなければその“万が一”のときも危ないのでは……」


「慣れはこの2ヶ月で何とかする。そもそも、人の一生でものにできるような力じゃないのさ。ただそうだね……“命の危機に晒された際”に“10分だけ”運用するという条約でも結ぶといい。そうすれば多少は扱えるはずだ」


「は、はぁ……」


 それほどまでか、と思いつつ、引き出すだけでこれだけの負担になるのだからそれも当然か。オレの魂の器を削らないためにも、恐らくそれが最善策なのだろう。


「ふぅ……じゃ! それまでみっちりお願いします!」


「休憩はいらないのか?」


「もったいないですよ。せっかくここは楽園なんだから」


「……良い意気だ。ならばこれからは毎日30時間ほど使おうか」


 物理的にも長く感じる毎日が、ここから加速していった。この2ヶ月で死んだ回数は、もはや数えることすらなかった。

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