第112話 魔力(1)
オレは学園に残っているセリアに帰るのは二ヶ月後になるということを伝えた。
セリアに伝えれば学園にも伝えてくれるだろう。彼女も最初は驚いていたが、これといって止められることもなかった。
「さて……今日と明日は魔力制御の修行をしようか。それからは身体を鍛えて……“黄金の魔力”はその後だね」
……師匠の言い方からするに“黄金の魔力”を習得するのはそれなりの難易度になるのだろうな。あるいは未熟な状態で習得しようとすると危険なのか……まぁ教えてくれるというのだから焦る必要はない。
師匠から聞いたことによるとこの空間は時間の流れが少し違うらしい。環境も割と簡単に弄ることができるようだし、特訓するのにこれ以上のものはない。
「ならオレの魔力制御を見せればいいんですね? さっきも言いましたが、そこそこできると思いますよ?」
「ふふっ……口ならいくらでも言えるさ。とりあえず見せてみなさい」
「分かりました……!」
せっかくならオレも師匠の度肝を抜いてやろう……。単純な身体強化でもいいが、ここは白天を撃ってみせるか。叢雲剣よりはそっちの方が分かりやすいしな……
「『白天』!」
「……ッ!?」
人差し指と同じ程度の太さの光線が真っ直ぐに飛んでいった。
うん……なかなかいいんじゃないか? 師匠も驚いてるみたいだ。これで少しは認めてるもらえるんじゃないかな?
「……なるほど、固有属性か。集まる魔素を喰い尽くすことで暴走しないようにしてるのか」
「え……。あぁ、そうですけど……」
思ってた驚き方と違うな。もっとこう……技そのものに驚くと思ってたけれど、師匠は技を成功させたことに驚いているようだった。
肩透かしを食らったというかなんというか……。そんなことを考えていると師匠は人差し指を伸ばして何かの準備をしていた。
「しかし惜しいな。その技は本来、集まる魔素を回転と一緒に無限に圧縮することで規格外のエネルギーを出力する技……。そのエネルギーを支配下においてこそ真価を発揮するものだ」
「ッ!?なッ……えッ!?」
オレのものよりも大きく熱く、そして高エネルギーの光線がオレの頬を掠めた。いや、実際には掠めていなかったが、当たっていたと錯覚するほどの熱を間近に感じた。
目の前の現象に理解が追いつかなかった。師匠はどうして魔素を操れる……?
「“白天”を……どうして……?」
「かつての英雄の技を使うことはそれほどおかしなことなのか?」
「……調子に乗ってました。スミマセン」
「良い良い。その方が面白みがあるというものさ。若者はヤンチャでなくてはならんよ」
師匠は笑いながらそう言ってくれた。もう大人しく師匠の言うことには従っていようか。たぶん何をしても期待通りに驚かせることはできないだろう。
その後オレは領域内に座らされ、師匠が肩からオレの魔力を強制的に動かした。抵抗しようとは思わなかったけれど、抵抗することもできなかっただろう。
おかしな話だが、師匠はオレ以上にオレの魔力を操ることができた。
「……不思議な感覚です。操り人形にされてるような……」
「魔力の流れを君の身体に叩き込むんだ。少しズルのようだけど、この方が効率がいいからね。君には神経の隅々まで魔力を操れるようになってもらう」
「……魔力制御の修行は二日間なんですよね?」
「二日もあれば充分さ。二日間はひたすらに私が君の魔力を操作し、それ以降は実戦を通して身につけてもらうからね」
身体を鍛えるっていうのはトレーニングばかりではなく師匠との模擬戦のことも含めるのか。そういうことならコレは確かに二日間でいいのかもな。




