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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第七章 英雄の街
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第111話 綺麗事じゃ世界は回らん(2)

「これは少し疲れるし……苦い記憶を思い出すから嫌なんだがね……」

「『神域召開レジェンド・ディメンション』」

「『神々の園(エデン)』」


「す……すげぇ……!」


 師匠が唱えると、不思議な空間……世界? が展開された。……いや、違うな。


 これは一般的な結界とは一線を画すものだ。結界を張ったのではなく、仮想の領域を召喚したんだ。


 どこまでも続く大地に見渡す限りに草花が生い茂っている。澄んだ川が流れているし、暖かく心地良い風が吹いていた。


 どう表現したらいいか……そう。ここは楽園と呼ぶに相応しい領域だった。


「……時にミラ君、君のその妖刀、八雲だね?」


「え? あぁ、はい。そうですよ。よく分かりましたね?」


「少し貸してみなさい」


「まぁ……いいですけど……。コイツはオレを主人として認めてるので……」


 オレは渋々と八雲を師匠に貸した。妖刀は主と認めた者以外に振られることを良しとしない。下手なことをすればむしろ刃を向けることになる。


 師匠ならば呪いに負けることもないだろうが……


「……おい、従え」


「ッ……!?」


 師匠はやや高圧的な言葉を八雲に向けたかと思うと、次の瞬間大地が二分されていた。大した力も込めず、ただの軽い一振りでオレの全てを込めた一撃を遥かに超えた破壊力だった。


 そして何より、八雲は師匠に大人しく従っていた。……まさか主人として認めたのか……?


「安心しなさい。八雲コイツの主人は君だよ」


「はい……」


 度肝を抜かれるというのはこういう気分か。師匠に常識は通じないと思った方がいいな。いつもやる気に満ちている八雲も師匠にだけはどこか怯えているようにも感じるし……


「師匠は八雲を知ってたんですか?」


「昔少しね。それは元々修練用として打たれた刀だ。あまり頼りすぎるんじゃないぞ。そもそもグランデュースの能力スキルは刀よりも剣に向いているしな」


「……修練用って言っても……元々は鈴旗玄雷が使っていたのでは?」


「アイツが使っていたのは花酒の方だ。八雲は贈り物だからと律儀に持ち歩いていただけで……いや、昔の話はいいか」


 師匠はどうやら最低でも200年は生きていると見ていいな。鈴旗玄雷と知り合いそうな雰囲気だし……。まぁ今は探らなくてもいいか。とりあえず師匠には従順にいけばいい。


「ベルドットさんは“黄金の魔力”を使えるようですが……それは師匠が教えたんですよね? もしそうならオレにも教えていただきたい」


「“黄金の魔力”……? なんだそれは?」


「エプシロンを殺すとき使ってませんでしたか? 魔力じゃないエネルギーを……」


「ん? ああ、アレか。そうか、他所ではそのように呼ばれているのか……。まぁ教えてもいいが……」


 師匠は渋っていた。何か問題があるのだろうか?その内容にもよるだろうが、オレとしても譲り難い。もしかしたら星香の寿命を伸ばす手掛かりにもなるかもしれない。


「華陽の神社家の人から聞いたんです。“黄金の魔力”がこの先の戦いに必要となると。加えて特殊な力のせいで寿命が縮んでいるようなのですが、もしかしたらその力が彼女の助けになり得るんじゃないかとも思うので……」


「……水晶の家か。君に魔眼を継承した子のことだね? まさかそんなことになっているとは……」


「……なんで知ってるんですか?」


「君を見れば分かる。だがそうだね。神社家のことは私が解決しておこう。“黄金の魔力”も教えるよ。だが今ではない。最初は基礎からだ」


 突っ込むのはやめておこう。師匠はもしかしたら神社家に関わりがあるのかもしれないし、ないのかもしれない。


 この人のことだ。こんなことをいちいち気にしていたらいつまで経っても疑問が終わることはない。


「基礎というと……魔力制御とかですか? そこそこできてる方だと思ってますが……」


「……まぁ後で見せてもらうが、それだけじゃないだろう? 昇華もしなければならないし、それに追いつくように肉体を仕上げなければならない。……君はどれくらいここにいるつもりだ?」


「夏休みが一ヶ月ほどなのでとりあえずはそのくらいを想定していますが……」


「一ヶ月? ……二ヶ月だ。学校はもう一ヶ月休みなさい」


「そう……ですよね。一応できるだけ学園の方には行こうと思ってましたが……」


「学園に行くよりも私に習った方が意義があるぞ? もちろん若者は行けるなら学校に行く方がいいだろうし、学舎で学習することに意味があるとも思ってる。だがさっきも言ったろう? 綺麗事ばかりじゃ世界は回らないんだよ」


 師匠は悪そうな笑みを浮かべてそう言った。確かに学園に行くよりも世界最強と思しき人に鍛えてもらう方がずっと強くなれるだろう。


 しかしたったの二ヶ月と言われたのは意外だった。半年から一年、あるいはそれ以上も覚悟していたが、やはり師匠は優しいお方のようだ。


 オレは師匠に従ってここで二ヶ月修行することにした。

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