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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第一章 序列戦
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第10話 疲労困憊(1)

 オレは鞘にしまった剣を杖にしながら、なんとか訓練場に辿り着いた。授業の始まる2分前だ。あと少し遅れていたらマズかったな。


「では今日も各々修練をしてください。何かあれば私を呼ぶように。いいですね?」


 オレは木陰に座り、早速魔力を練り始めた。昨日は酷かった。


 セリアに魔力を整えてもらったところまでは良かったが、その後近くの広場で手合わせをしたのがいけなかったのだろう。セリアのしごきは思った以上に長くキツイもので、何時間もの間ただひたすらに投げ飛ばされ続けた。オレは剣と能力スキルを使い、セリアは丸腰で身体強化の魔法しか使っていなかったというのに、まるで歯が立たなかった。


 セリアの動きを盗もうにも速すぎて目にも追えなかったし……セリアは言葉の通り身体に叩き込むつもりなのだろう。こんなことを毎日続けていては死んでしまうぞ。


「ミルアルト君、顔色が優れないようですが大丈夫ですか? 授業で体調を崩すのは褒められたものではありませんが……」


「ああ、いや、大丈夫ですよ。ウチの守護者がなかなかスパルタで……昨日も特訓してたんですけど、身体中痛くて眠りが浅かっただけです。あの人が見てくれているので体調不良にはなりませんよ」


「なるほど……そういうことなら私からは何も言えませんね。頑張ってください。君ならどんな苦行も乗り越えられますよ」


 先生はそう言ってオレを励ましてくれた。心配してくれているし、同じくらい期待もしてくれているらしい。そんな人の期待にはぜひとも応えたいものだ。


(“苦行”だってさ。やっぱり眠れなくなるような特訓は普通はしないんだよ)


(普通にやってて強くなれるわけがないでしょ?そもそもあんなに長引いたのはミラがまだやるって言ったからでしょ)


(……)


 オレはセリアの言葉にぐうの音も出なかった。確かにやる気に満ちていたのはセリアよりもオレの方だ。だけど長引かせたのはセリアの方だろうに……。


 いっそ一撃で沈めてくれれば楽だったんだ。…………いや、やっぱりそれは嫌だな。


(それで、序列戦に向けてミラが何を鍛えるべきか考えたんだけど……)


(? 魔力制御じゃないのか?)


(それは基礎よ。それだけでも色々効率はよくなるだろうけど、戦闘においては出力が大きくなるだけよ。少なくとも短期間では大して変わらないわ)


 それもそうか。元々魔力の性質をコントロールするための特訓であって、強くなるためのものではない。


 結果として強さに繋がることはあれど、それはすぐに実るものではない。序列戦に挑むにはそれだけでは足りないというわけだ。


(じゃあ何を?)


(ミラは能力保持者スキルホルダーだからね。魔法は効率的じゃないわ。私の魔力を貸してあげれば炎魔法はほとんど無制限に使えるでしょうけど、それはミラも気に入らないでしょ?)


(そうだな。セリアの力をオレの力と言えるほどオレは強くねぇから。そんなので勝てても嬉しくはないな)


(だからミラに習得してもらうのは身体強化の魔法と“魔力の圧縮”、その上で剣術を磨くわ)


 身体強化は魔力の運用が肝になる。だからそれは魔力制御の特訓で上達できるものと考えて……。


(圧縮って何? 剣術はセリアが教えてくれるのか?)


(魔力の圧縮っていうのは、言葉の通り魔力を押し固める技術よ。そうすると魔力の密度が大きく変わるから、能力スキルや身体強化の出力に大きく影響を及ぼすわ。その上圧縮すればするほどその効果は出てくるし、場合によっては他のエネルギーに変換しなくても物質に直接影響を及ぼせるわね)


(……見えない壁を作れたりするってこと?)


(そういうこと。今のミラの魔力量だと手のひらサイズが限界だと思うけど、それでも戦術の幅が広がるわね。それに防御力っていうのは単純に攻撃力にも転じるから、圧縮がどれだけできるかで戦闘能力は大きく変わるわ)


 それは面白いな。見えない壁……剣に纏えばリーチも伸ばせるというわけか。オレの能力スキル……魔力特性と組み合わせれば魔法では防げない見えない鉄球みたいなものもできるかもしれない。切羽詰まった場面では戦局を変えられるほどの力になるかもしれない。


(それで剣術だけど……これが一番重要で大変ね。グランデュース家の能力スキルは剣に纏えばその効果を最大限に引き出すわけだけど、結局一番大事になるのはその扱い方だからね)


(それが剣術か。大変ってのはまた何でさ?)


(剣術っていうのはね、型も必要だけどやっぱり実戦でどれだけ上手く攻めれるかが大事なのよ。だから自分自身でそのスタイルを確立していくわけで、特にグランデュース家には決まった剣術が継承されてないってこと。要は兎にも角にも実戦で自分のスタイルを作り出すってことね)


(へ、へぇー………。つまり……ちょっと嫌な予感がするな)


(だから毎日私とお稽古するわよ。死ぬことはないから安心しなさい)


 昨日の特訓を毎日やるのか……身が保たねぇよ……。でも甘えたことは言ってられないし、どうやら覚悟を決めなければならないらしい。オレは密かに腹を括った。

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