表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第七章 英雄の街
109/125

第108話 時代に取り残された老いぼれ(2)

 何を信頼すればいいのか。オレはそんなことに頭を悩ませながら街を練り歩いていた。


 この街は冒険者が多いだけでなく、どこを歩いても大英雄・アリウスや大魔王・ネフィル=エスト、それからセリアの名が見えた。


 そもそもプリセリドが英雄の街と呼ばれているのはなぜなのか。それは単純に彼らが皆この街の出身だからだ。神話の時代を象徴する英雄が三人もこの小さな街から輩出されているのは奇妙な運命のようなものだが、事実がそうなのだから仕方がない。


「……ッ!?!なんで……!!」


 街の外れ、ずっと遠くに感じたことのある化け物のような魔力が出現した。


 忘れるわけもない。会ったのが最近だというのもそうだが、アレほど強烈な魔力を忘れるわけがない。間違いなくあの魔力はエプシロンだ。


 なぜここに来た……? いや、今はそんなことは後だ。アイツが本気で暴れたらこの街が消し飛んでしまう。


「……俺はただ散歩してただけなんだがなぁ……。お前に会うとは奇遇だな……」


「ハァ……ハァ……。……散歩ってんなら……何もせずにいてくれよ……?」


「まぁ無駄な破壊をするつもりもねぇがよ、目の前の料理を食うなってのも酷な話じゃねぇか」


 オレはエプシロンの元まで走ってきた。なんとか穏便に済まないだろうかと淡い期待を抱いていたが、そうもいかないらしい。


 どうにかプラスに考えるなら街に被害が出ないだろうということくらいか……。オレは震える手で八雲を抜いた。


「……一つ約束してくれ。オレが死んでも街には手を出さないでくれ。……あわよくばお前に噛み付くだろう少女のこともどうか見逃してやってくれ。お前は化け物みたいに強いんだ。……生意気で小さな子供ガキの遺言くらい聞いてくれよ……?」


「……アリベル=ルーシュのことか。俺や王の命がおびやかされない限りはその願いを聞いてやろう。代わりに俺を楽しませろよ……!!」


 エプシロンの重く巨大な魔力がオレの全身を包み込んだ。まるで底のない深海に沈められたような気分だった。オレの心臓は波打ち、より一層の恐怖に包まれた。


 今まで通り戦いに対する異常な恐怖心も華陽でアルファに遭ったせいでさらに膨れ上がっていたが、今回ばかりはそれも関係ないほどの実力差があるだろう。


「……ッ!?……セリア!?」


 せめて対抗しようと天現融合を発動しようとしたが、なぜかそれができなかった。守護者との距離がどれだけ離れていようとも魂の繋がりがあるから発動できないなんてことはない。


 なぜだ……? 心当たりがあるとするならやはりアルファの件だろうが……恐怖心のせいで技術までイカれちまったのか?


 ……それも分からないことではない。戦うことが恐ろしいのだから戦うための技が粗末になってもおかしくはない。


「クソッ……! “叢雲剣むらくものつるぎ”」


「それか……! 相変わらず良いエネルギーだ!」


 魔素を巻き込み全てを破壊する白天ハクテンのエネルギーだが、セリアの炎を纏えなければ攻撃力は半減どころではない。“叢雲剣”だけなら持久力は上がるだろうが、今必要なのはそれじゃない。


「すっとろいぞ、グランデュース! 魂を燃やせ! 神話の一族の力はこんなもんじゃないだろう!!」


「ぐぁッ……!」


 エプシロンの鋭く重い蹴りがオレの腹を貫いた。膝をつきながら着地したが、立ち直る前に顔を殴られた。


 鼻と口、額と、あらゆるところから血が吹き出した。圧倒的な実力差にオレはただサンドバッグとなり、オレの抵抗は抵抗にすらならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ