第106話 アルファ(3)
終業式は午前中に終了し、その後は荷物をまとめてセリアを残してルーシュと一緒に家に帰った。
到着したのはその日の夕方だったが、どうしても疲れていたせいですぐにもベッドに飛び込みたい気分だった。
「お帰り! ミラ! ルーちゃん!」
「母さん……嬉しいけど苦しいよ」
並んでドアの前に立っていたオレ達に、母さんは飛び込むように抱きついてきた。……母さん達に心配をかけるようなことにはならなそうだな。
母さんの顔も父さんの顔も、見ると不思議と安心した。ここがオレの居場所なんだと思えた。
「二人とも、学園はどう?」
やや豪華な夕食を食べながら、母さんがふいに尋ねてきた。そうだな……何か話せるようなことがあっただろうか……。いや、ありすぎて少し困るな。
「ミラったらね、ユリハ様と会ったんだよ。おばさん」
「ユリハ様って……あのユリハ様!? すごいじゃない!」
「まぁほら、セリアがいたから」
その他には竜帝やベルドットさん、その他の十法帝にも会ったこと、あとは序列戦で六位になったことなどを話した。母さん達は最初こそ驚いてはいたが、徐々に面白がるようになっていった。
「あなた達は夏休みはどこか行くの?」
「オレはプリセリドに行ってくる。ルーシュもユリハ様が許可してくれたから獄境に行くって」
「何しに行くの?」
「まぁ簡単に言うならもっと強くなりたいから師匠を探しに……」
「気をつけるんだぞ。辛くなったらいつでも帰ってきていいからな」
「うん。ありがとう」
夕食の皿を片付けてからオレは自分の部屋に行った。海に入るかのようにベッドの中に沈みゆき、すぐに夢の中に落ちていった。
翌日も変わらずに汗をかきながら目を覚ました。シャワーを浴びてから着替え、朝ごはんを食べてから家を出た。
ルーシュと会うのも一ヶ月後か。それまでにずっと強くなっておこう。
プリセリドはなかなか発展した街でありなが、英雄の街ということで昔ながらの雰囲気も残していた。ベルドットさんには行けば分かると言われたんだが……しかしこれといって特徴的な魔力は感じない。
オレはまずはギルドの食堂に向かった。流石はプリセリドといったところだろうか、この街は冒険者の数が多いらしい。オレは中年の冒険者の相席に座った。そして銀貨を数枚渡してから自分の分のドリンクを頼んだ。
「オッサン、この街で一番強いのは誰だ?」
「おいおいにーちゃん、そりゃつまり、この俺は街で一番強くはねぇと言いてぇのか?」
「だってオレの方が強そうだもん」
「クック……生意気な小僧だ。オレァ好きだぜ。そういう奴ァよ……」
オッサンは笑いながら銀貨を受け取った。なかなかの腕のようだからBランクはあるだろうが……良い感じにウケたようだな。これならちゃんと話ができそうだ。
「お前のランクは?」
「今はCだ」
「サボってんのか。しかし“誰が強いか”……ねぇ。なんとも言えんが……そうだな。たぶんあの人だな」
「“あの人”……?」
「ああ、あの人はな……」
オレはオッサンがしてくれた説明通りにその場所へ向かった。なんでも街外れに小さな料理屋をやっているとのことだが……
そこにはどこか見覚えがあるようなボロボロの建物があった。看板も何もないが……本当にここか? ……だがオッサンが言っていたのは確かにここだ。
鍵もかかってないし誰かの家というわけでもなさそうだが……
「……お邪魔します……」
オレは恐る恐る扉を開いた。そして建物の中には話に聞いた通りの容姿をした老人がいた。
長い白髪の老人で左耳には紺色に輝く耳飾りを、そして腰には一振りの刀を差していた。170強の身長に筋骨隆々な体格のせいでなかなかの圧を感じるが、魔力はほとんど感じない。
いや、それどころかオレの魔力感知には一切引っかからない。そして老人はオレに気づいたのか一言、“いらっしゃい”と言った。
どうやらオッサンの言っていた料理屋というのはここで合っているらしい。
第六章完結です!
言うなれば次章は前編最終章ですね!
グランデュース=ミルアルト・・・依然、魔力は五星級止まり。謎のストレスにより白髪に
神社家・・・華陽の貴爵家
神社星香・・・神社家の当主。金色の水晶『黄金の魔眼』の力により未来を占うことができたが、寿命が短くなった。魔眼はミラに継承
アーサー=ベルベット・・・十法帝の一人、人類最強の男。エプシロンに手傷を負わされる
エプシロン・・・能力『やり直し』を持つ。歴史の破壊者、番外・五番目の騎士
アルファ・・・仮面の男。番外・一番目の騎士
ベータ・・・二番目の騎士
ガンマ・・・三番目の騎士
デルタ・・・四番目の騎士
ベルベットの師匠・・・プリセリドに住む老人。料理人を営んでいる




