第103話 子は望まずに生まれ来る(3)
「ッ!?」
「なんだ!?」
爆発は巨大な魔力が放出されることで発生したらしい。が、あの規模の爆発を起こせるのはそうそういない。
初めはベルドットさんかとも思ったが、あの人はこんなことはしないだろうし魔力の感じもどこか違う。この魔力は……
「オレは様子を見てくるが、君はここで待ってろ。屋敷にいるよりはたぶん安全だ」
この山は街から少し離れている上、人がいないため魔力を感知してここまで来ることもないだろう。屋敷は目立つから何が起こるかも分からないが。
「あら、私のことを侮られても困りますことよ? 魔眼を失ったとてやろうと思えば大抵のお方よりも強いのですよ?」
「その……犬?」
「狼にございます」
緑色魔力を纏った小さな狼がどこからか現れた。たぶん星香の守護者だろう。風属性なら今の星香でも扱いやすいだろうけど……
「しかし平気か?」
「死んだら所詮その程度ということですわ」
「……まぁいい」
連れて行くのは気が引けるが、普段から無茶をしているオレは強く言うこともできない。そもそもここは星香の街だ。オレばかりが前に出ても納得できないのだろう。
「キャッ! な、何をなさいますの!?」
「君は体力を温存しとけ! オレはこの程度何ともないからな!」
「し、しかし、重くはございませんか?」
「女の子ってのはみんな軽いもんさ。行くぞ!」
オレは星香を抱えて小高い山を飛び降りた。彼女の身体じゃこの衝撃だけで疲労してしまうかもしれない。
だからオレが抱えた。……後でセクハラだなんだと訴えられなければいいが、今はナシだ。
「だっはっはっ!!良〜い気分だ! 力を思う存分に解放できるってのはすげ〜良い気分だ! ……ん? ああ、お前はアレだな? 王がご執心だというグランデュースの小僧だな?」
爆心地に到着すると、そこには若い男とベルドットさん、それからルーシュの三人がいた。つまり犯人はあの男だ。オレは星香を降ろしてから刀を抜いた。
「何だ? お前は。No.は?」
「お? 俺に心当たりがあんのかい? 良い勘してるじゃねーか」
「ミルアルト君、ルーシュさん、星香さん。君達は足止めに徹しなさい。あの男がエプシロンだ」
「ッ! アイツが……!!」
「そう! この俺が“翠の剣”を与えられし五番目の騎士! 番外・エプシロンだ!」
アイツがエプシロンか。なるほど、そう言われれば納得だ。ベルドットさんに匹敵する魔力。アルファほどではないがNo.8よりは確実に強いだろうという重圧。
オレがあの男に対して抱いている恐怖は幻術の影響かあるいは心の底から恐れているからか……。うん、たぶん前者だな。
「アイツの力は?」
「俺の能力は『やり直し』! 発動は任意で前提として中間地点を設定する必要がある。やり直しができる回数は最大で三回、それ以降は新たな中間地点が必要だが、再設定するにはやり直しから最低三時間のインターバルを必要とする。……こんくらいかな?」
「……あの男の言ってることは正しいと見ていいだろう。私の体験したものと合致する。だが……つまり私の言いたいことは分かるね? 私達は舐められている」
……セーブだとかロードだとか……ゲームみたいなことを言いやがって。その辺には疎いんだがつまり……
いや、そんなことあるのか? だがアイツの言うことを要約するなら……
「回帰術ってことか? いくら能力とはいえそれはあり得んだろ……」
「いや、あの男のは違うね。正しくは“時の保存”といったところかな」
「ビンゴ! 流石は人類最強だな! 本当はお前と決着をつけようと思ってたんだが……悪いな。興が移った」
「……!?」
突然としてエプシロンの魔力が異変を起こし始めた。そして目の前で起こっている異常な現象を見ればその理由が分かった。




