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第一話

「悪いな、レオン。」


酒場のテーブル越しに、パーティーリーダーの男が頭をかきながら申し訳なさそうにこぼす。


「やっぱり無理だ。」


レオンはジョッキを置いた。


「……またそれ?」


リーダーは困った顔をする。


「いや、お前が悪いわけじゃないんだ。」


その言い方は、もう何度も聞いている。


「でもさ、」


リーダーは言いにくそうに言った。


「お前の魔法、弱すぎるんだよ。」


周りの仲間たちも、気まずそうに視線を逸らしていた。

レオンは肩をすくめた。


「知ってる。」


本人が一番分かっている。

レオンの魔法は弱い。

一応、魔法使いではある。

だが――

火は火花ほどしか出せない、

氷は出せない、

雷なんて当然無理。

レオンが使える魔法はたった一つ、


「強化」


それだけだ。

ただ、戦闘で決定的な差を生むほどではない。だから、


「今回の遺跡攻略、やっぱ四人で行くわ。」


リーダーが言った。


「お前抜きで。」


レオンは立ち上がった。


「つまり…俺はクビ?」


「ああ……悪い。」


レオンは笑った。


「いいよ。」


もう慣れている。


本当に。


三日後。


「ごめんレオン。」


また別のパーティー。


「やっぱ火力足りないんだ。」


レオンは頷いた。


「だろうな」


「強化魔法しか使えない魔法使いって、正直きついんだよ。」


「だろうな」


まったく同じ会話だった。


さらにその翌日。


「……すまん。」

「悪い。」

「ごめん。」


三人同時だった。

レオンは思わず笑った。


「まとめて言うなよ。」


「いやだって。」

「だって。」

「だって。」


レオンは手を振った。


「分かった分かった、クビだろ。」


三人は同時にうなずいた。

レオンは荷物を持った。


「短い付き合いだったな。」


酒場の外へ出る。

昼の町は賑やかだった。

だが、レオンの財布は軽い。

かなり軽い。

中を見るが、銅貨が数枚しかなかった。

宿屋に一泊泊まれるかどうかだ。


「……」


レオンは空を見上げた。


「詰んでないか俺。」


夕方。

レオンは冒険者ギルドの依頼掲示板の前に立っていた。


「うーん。」


高難度の依頼は無理。

なぜならパーティーがいないから。

ソロでできる依頼は、ほとんど残っていなかった。


「これとか。」


『荷物運び 銅貨五枚』

安すぎる。


「これ。」


『掃除依頼 銅貨三枚』

生活できない。

レオンはため息をついた。

その時、一枚の紙が目に入った。

『簡単な調査依頼

森で発生する謎の光の現象を確認するだけ

報酬:銀貨三枚』

レオンは目を細めた。

銀貨三枚。

今のレオンにはかなり大きい。

「調査だけか。」

戦闘じゃなく、確認するだけ、

レオンは紙を取った。


「これでいいか。」


そして夜。

レオンは森の入り口に立っていた。

月明かりだけが地面を照らしている。

レオンは依頼書を見直した。

『夜の森で発生する光の現象』


「……。」


もう一度読む。


「夜って書いてあったか?」


書いてあった、

小さく、とても小さく。


「……やられた。」


つまり、面倒な依頼を押し付けられた。

よくある話だ。

レオンは苦笑した。


「まあいい。」


どうせ金がないし、帰れない


「調査するだけならな。」


レオンは森へ入った。

夜の森は、昼とは別の場所のようだった。

木々が月明かりを遮り、地面はほとんど見えない。

風が枝を揺らすたび、影が揺れる。

レオンはランタンを少し高く掲げた。

橙色の光が足元を照らす。


「……暗すぎるだろ。」


昼間なら何度も通ったことのある森だ。

だが夜は、まるで別世界だった。

遠くでフクロウが鳴く。

草が揺れる音、木の枝がこすれる音。

どれも魔物の気配に聞こえる。

レオンは依頼書をもう一度取り出した。

『夜の森で発生する光の現象を確認するだけ』


「確認するだけ、ね。」


簡単そうに書いてある。

だが、夜の森に入る依頼が簡単なわけがない。

依頼掲示板の端にあった紙だ。

誰も取らないから残っていたはず。

つまり、嫌な依頼だったということだ。


「まあいい。」


レオンは歩き出す。


「銀貨三枚は大きいしな。」


月明かりの下、森の奥へ進む。


しばらく歩いた。

だが、光の現象とやらは見つからない。

あるのは、静かな森だけだ。


「……本当にあるのか?」


レオンは立ち止まった。

その時だった。

ガサッ

茂みが揺れる。

レオンはすぐ剣を抜いた。


「……出たか。」


低い唸り声。

暗闇の中で、二つの光が浮かぶ。

目だ。

そしてその姿がゆっくり現れた。

灰色の毛並み、大きな牙。

森の中型魔物の牙狼(ファングウルフ)だ。

レオンは小さく息を吐く。


「一匹なら問題ない。」


牙狼が唸る。

地面を蹴って突進してくる。

レオンは横に避ける。

ザシュッ!

爪が地面を裂いた。

レオンは剣を振る。

ガキン!

しかし牙狼の爪で弾かれた。


「ちっ」


速いッ…!

思ったより力が強い、

牙狼はすぐ距離を取り、再び唸る。

レオンは剣を構え直した。


「来いよ。」


牙狼が飛びかかるのにあわせてレオンは剣を振ると、今度は当たった。

ザシュッ!

牙狼の肩を浅く切り、

牙狼は顔をしかめて後ろに跳ぶ。

唸り声が低くなる。

レオンは少し息を整えた。


「……一匹なら。」


勝てる。が、

その時だった。

ガサガサ…

背後の茂みが揺れた。

レオンは振り向くと、もう一匹、さらにもう一匹と牙狼が姿を現した。


「……おいおい。」


レオンはすっかり囲まれてしまった。

牙狼三匹、さすがに笑えない。


「これはまずいな…」


一匹なら勝てる。

二匹ならギリギリ。

三匹は――

きつい。

牙狼が低く唸り、円を描くようにレオンを囲む。

逃げ場はない。


「はぁ……」


レオンは剣を握り直した。


「やるしかないか。」


次の瞬間、一匹が突進してきた

レオンは横に転がり、すぐに立ち上がる。

間髪いれずにもう一匹が飛びかかる。

レオンは剣を振る。

ガキン!

爪と剣がぶつかり、衝撃が腕に走る。


「ぐっ……!」


力が強い。

三匹目が後ろから来てる。

レオンはどうにか押しかえし、後ろからの攻撃をかわして慌てて距離を取った。

牙狼たちは再び円を作る。

レオンは息を整えながら、


「まずいな……。」


と、つぶやいた。

三匹同時はさすがにきつい。


「ほんと役立たずだな。」


唇をかみながら震える足を踏ん張る。

牙狼が再び突進してきた。しかも今度は二匹同時に

一匹目を斬ったところに、もう一匹の爪が迫る。

レオンは咄嗟に後ろへ跳んだ。

が、バランスを崩し、後ろに尻餅をつくように転んでしまった。


「くそっ!」


衝撃で剣を離してしまったレオンは、とっさに近くの地面に転がっている枝を掴んだ。

ただの枝。

武器にもならない。

だが、武器を落としたレオンは藁にすがる思いで枝を構えた。

その瞬間、枝が光った。


「……!?」


体の奥からマナが流れ出て、それが枝へと流れ込んでいく。

レオンは叫ぶ。


「強化!!」


枝が強く光る。

牙狼が飛びかかってくるのにむかってレオンは反射で枝を振った。

ブンッ!

空気が震える。

次の瞬間。

ズドンッ!!

牙狼の体が吹き飛んだ。

地面に叩きつけられ、動かない。

レオンは目を見開いた。


「……え?」


枝だ。

ただの枝なのに。

残りの牙狼が唸る。

もう一匹が飛びかかった。

レオンは無我夢中で枝を振る。

ドンッ!!

牙狼が木に叩きつけられる。

残り一匹。

レオンはゆっくり立ち上がり、枝を握る。

枝の光がより一層つよくなる。


「うおおお!」


踏み込み、振りあげる。

ゴッ!

牙狼はいい音を立てて宙に浮き

ドォン!!

地面に叩きつけられ静かになった。


ーレオンはしばらく動かなかった。

心臓の音だけが響く。

やがて呟く。


「……勝った?」


信じられない。

今までの自分なら全然死ねた。

レオンはまだ光っている枝を見る。


「これ……俺の魔法か?」


その時だった。

上から声。


「ひゃああああ!?」


「!?」


ドサッ!!

少女が落ちてきた。

レオンは思わず後ろに下がる。

少女はむくっと起き上がり、頭に葉っぱをつけたまま、レオンを指差し、


「今の魔法なんですか!?」


「……は?」


レオンは思わず聞き返した。

長い金髪に、緑のマント、

耳は長く尖っている。間違いなくエルフ。

おまけに頭に葉っぱが三枚刺さっていた。

しかも枝も一本。

レオンは思わず言った。


「……大丈夫か?」


少女は葉っぱを払う。


「だ、大丈夫です!」


少女は勢いよく答えてから、はっとした顔をして、


「いや大丈夫じゃないです!」


「どっちだよ。」


少女はレオンの手に持っている枝を指さした。


「今のです!!」


「え?」


「その魔法です!!」


レオンは手元を見た。

枝。

ただの枝。

光はもう消えていた。


「……強化だけど。」


少女の目が見開かれた。


「強化!?それが!?」


レオンは周囲を見る。

牙狼三匹、全部倒れている。


「……まあ、たまたま?」


少女は牙狼を見て、さらに驚いた。


「三匹!?倒したんですか!?」


「まあ。」


少女はレオンをまじまじと見た。

頭から足先まで。

そのあともう一度枝をみて、もう一度牙狼を見る。

そして言った。


「すごい人じゃないですか!」


「いや別に…」


レオンは枝を捨てた。

少女は慌てた。


「捨てないでください!?」


「いや枝だぞ。」


「さっき魔物吹き飛ばしてましたよ!?」


「俺もびっくりしてる。」


少女は腕を組んで唸る。


「うーん……」


そして突然聞いた。


「あなた、名前は?」


「レオン。」


「レオンさん。」


少女はビシッと指を突きつけた。


「さっきのもう一回やってください!」


「無茶言うな!」


「どうやったんですか!?」


「知らない。」


「知らない!?」


レオンは肩をすくめた。


「強化魔法しか使えないんだよ」


少女は首をかしげた。


「強化魔法?」


「身体能力をちょっと強くするだけ」


「それで牙狼三匹倒したんですか?」


「だから俺も意味わかってない。」


少女はまた唸る。


「うーん……」


そして唐突に言った。


「ちょっと貸してください。」


「何を?」


「枝です!」


「もう捨てた。」


「ああー!」


少女は枝を拾いに走った。

レオンはその様子を見ながら思った。

(……なんだこの子)

枝を拾った少女は、真剣な顔でそれを構えた。


「こうですか?」


ブン。

ただの枝だった。

少女はまた振る。

ブン。

何も起きない。

三回振る。

四回振る。

五回振る。

何も起きない。

少女は枝を見つめて、


「……おかしい。」


と呟いた。

レオンは言った。


「普通そうだろ。」


少女は真剣な顔で言った。


「さっきは確かに光ってました!」


「俺も見た。」


「ですよね!」


「でもやり方は分からない。」


少女は頭を抱えて悩みだした。


「そういえばなんで木から落ちてきたんだ?」


レオンが聞くと、少女は固まった。


「……」


「……」


少しの沈黙のあと、少女は視線を逸らしながら、


「……調査です」


「嘘だろ。」


「調査です!」


「寝てただろ。」


少女は顔を赤くした。


「ね、寝てません!」


レオンは木を見上げた。

太い枝。

寝やすそうだった。


「寝てたな。」


「寝てません!」


「落ちてきた時寝ぼけてたぞ。」


「それは……!」


少女はしばらくもごもごしたあと、小さく言った。


「……ちょっと。」


「うん。」


「居眠り。」


レオンは笑った。


「調査じゃないじゃん。」


少女はむくれて、


「ちゃんと調査してたんです!途中まで!」


「途中まで!?」


レオンは肩をすくめた。


「まあいい。」


少女は胸を張って、元気に自己紹介を始めた。


「私はフィアです!」


「フィア?」


「エルフのフィアです!調査してたんです!…寝てたけど。」


レオンは笑った。


「ちょっとだけです~!」


その時だった。

遠くから声が聞こえた。


「――誰かいるの!?」


森の奥から女性の声が聞こえる。

フィアが反応する。


「あ」


「知り合い?」


レオンが聞く。

フィアは頷いた。


「多分!」


そして手を振った。


「リシェルー!!」


森の奥からランタンの光が近づいてくる。

数秒後。

銀髪の少女が現れた。

ローブ姿に自分より大きな盾を背負っている。

こちらに気づくと、


「フィア!」


静かな声に安どの息が混じっていた。

フィアは笑顔で手を振る。


「やっほー!」


リシェルはあきれたように言った。


「あなた…また木の上で寝てたでしょ。」


フィアが固まったのをみて、レオンは吹き出した。

フィアは慌てて否定する。


「ち、違うの!調査してただけ!」


リシェルは無表情だった。


フィアはレオンを指さした。


「この人!このレオンさんのせい!」


「俺!?」


「すごい魔法撃ったんです!」


リシェルの視線がレオンに向いた。


「魔法?」


フィアは勢いよく言った。


「枝で牙狼吹き飛ばしたんです!」


リシェルは倒れている牙狼をみて、

それからレオンを見て、


「……枝で?」


「俺も意味分からない。」


レオンは答えた。

リシェルは少しだけ目を細めた。


「それ、どんな魔法を使いました?」


レオンは答えた。


「強化」


リシェルは一瞬固まって、そして小さく呟いた。

「……ありえない。」


フィアが言った。


「ですよね!?」


リシェルはレオンを見つめた。

そして静かに言った。


「もう一度やってみてください。」


レオンは枝を拾った。


「できるか分からないぞ。」


「構いません。」


森が静まり返る。

レオンは枝を握り、さっきの感覚を思い出す。

体の奥から流れたマナをー


「強化」


枝が光った。

フィアが


「出た!!」


と喜ぶのを横目に、レオンは軽く枝を振る。

ブンッ!

空気が震えた。

リシェルの目が大きく開いた。


「……それ。」


そして彼女は小さく呟いた。


「ただの強化じゃない。」


フィアが聞く。


「じゃあ何…?」


リシェルは枝を見つめながら言った。


「それは――神代魔術」


「「はい?」」


森の夜が、さらに静かになった。

レオンの手の中で、枝がまだ微かに光っている。

リシェルはその光をじっと見つめていた。

二人はが首をかしげる。


「神代魔術?」


リシェルはゆっくり周囲の地面を眺めた。

牙狼が倒れている場所、そして枝。

さらに、森の木々までゆっくりと。

何かを確認するように、ゆっくり歩き回る。


「フィア。」


「はい?」


「さっきレオンが魔法を使った場所、覚えてる?」


フィアはすぐ指差した。


「ここです!」


リシェルはその地面にしゃがみ込む。

手をかざした。

そして目を閉じる。

数秒後。

彼女の目がゆっくり開いた。


「……やっぱり。」


フィアが身を乗り出す。


「なにかわかったんですか!?」


リシェルはレオンを見る。


「もう一度魔法を使ってください、ここで。」


レオンは肩をすくめた。


「やるけど。」


枝を拾い、


「強化」


枝が光る。

その瞬間。

リシェルの目が見開いた。


「やっぱり……!」


彼女はフィアの方を振り返り、


「フィア!この周囲のマナの流れ見える?」


と、きいた。

フィアは目を細め、空気を読むように手を広げる。


「えっと……なんかちょっと元気になってる?」


リシェルは頷いた。


「そう、レオンが魔法を使った瞬間、周囲のマナが活性化してる。」


レオンは眉をひそめた。

リシェルは説明を続けた。


「普通の魔法は体内のマナを魔法陣で動かして発動する。つまり魔力は自分の中だけで完結する。」


そして枝を指さした。


「でもあなたの魔法は違う。周囲のマナを刺激している。」


レオンは首をかしげた。


「刺激?」


リシェルは言った。


「木、空気、地面、全部あなたの魔法で強化されてる。」


フィアが言った。


「だから枝で牙狼が吹き飛んだんだ!」


レオンは枝を見た。

リシェルは静かに、


「これは強化魔法じゃない」


「――エンチャント」


フィアが目を丸くする。


「エンチャント?」


レオンも聞き返した。


「そんな魔法聞いたことないぞ。」


リシェルは小さく頷いた。


「当然、今の時代には存在しない。」


リシェルはつづけて言った。


「古代の文献にだけ出てくる、神代魔術の技術です。環境のマナを活性化させ、物質に力を宿す魔法ですよ。」


フィアが口を開ける。


「え~!めちゃくちゃすごくない!?」


レオンは苦笑した。


「実感ないな。」


リシェルは真顔で言った。


「こちらはあります。かなり。」


フィアが身をのりだして、


「それって最強じゃないですか?」


リシェルは少し考えた。


「使い方次第だけど……可能性はかなり大きい。」


レオンは頭をかいた。


「そんな大げさな。」


その時だった。

グゥゥゥゥ……

フィアの腹が鳴った。

沈黙。

フィアは顔を真っ赤にして、


「ち、違うんです!」


レオンは笑いながら、


「腹減ったのか。」


フィアは慌てて


「ちょっとだけです!」


と、返した。


リシェルは空を見上げ、


「もう夜も遅いです。森を歩くのは危険かと。」


レオンも頷いた。


「牙狼もいるしな。」


フィアは元気に言った。


「じゃあ野宿ですね!火を起こしましょう!」


数分後。

焚き火ができた。

三人は火を囲んで座って、

フィアは荷物をゴソゴソと漁っている。


「えーっと干し肉、パン、あと~…」


次々と食料をひっぱりだしていく。


「最後に蜂蜜!」


「豪華だな。」


フィアは胸を張る。


「エルフの保存食です!」


リシェルは静かに本を読んでいる。

その横でフィアはパンを割った。


「レオンさん、はいどうぞ!」


レオンは受け取り、


「ありがと。」


フィアの持ってきた蜂蜜をかけて食べた。


「おいしい……」


焚き火の光が揺れる。

しばらく静かな時間が流れた。

やがてフィアが立ち上がる。


「ちょっと川行ってきます!」


レオンが聞く。


「水?」


「ううん、水浴びてきます!」


そして普通に言った。


「汗かいちゃったので!」


レオンは固まった。

リシェルは本を閉じて、


「私も行く」

と言った。

フィアは頷いて、


「じゃあ一緒に!」


二人は森の奥へ歩いていった。

レオンは焚き火の前で座る。

(……)

数分後。

森の奥から声。


「きゃっ!」


「フィア静かに」


「冷たいです!」


水音。

レオンは空を見上げた。

(聞こえるな……)

風が吹く音。

葉が揺れる音。

水音。

二人の声。


「リシェル!流してあげる!少ししゃがんで!」


「くすぐったいです!」


レオンは顔を覆った。


「……」

焚き火のパチパチ音に集中することにした。


数分後、

二人が戻ってきた。

フィアは髪を少し濡らしていた。

リシェルも髪をほどいている。

フィアはレオンを見る。


「レオンさん…、覗いてませんよね?」


レオンは即答した。


「見てない。」


フィアはじーっと見た。


「本当ですか?」


「本当。」


リシェルが静かに言った。


「嘘はついてない。」


フィアは頷いた。


「ならいいです!」


そして焚き火の前に座る。

リシェルはレオンを見る。


「レオンさん。」


「はい。」


「明日、もう少しあなたの魔法を調べたいです。」


フィアが言う。


「私も見たい!」


レオンは焚き火を見る。

枝で牙狼を倒した。

まだ信じられない。

でも。

少しだけ思った。


(もしかして俺の魔法……そんなに弱くない?)


焚き火の火が揺れる。

三人の影が森の地面に伸びた。

この夜が、冒険の始まりだった。


「ああ、まかせておけ!」

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