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二十六分に一本

三寒四温、という言葉がある。

まだ肌寒い日もあるが、

確実に春に近づいているのを感じる季節だ。

今日は、その空気を街で感じた。

距離は短い。

それは確かだ。

だが、一月や二月に比べると、

客の財布が少し緩んでいる気がした。

短い距離でも、

あっさりタクシーに乗ってくれる。

もちろん理由はそれだけじゃない。

今日は日曜日だ。

タクシードライバーの出勤も少ない。

供給が薄い分、

街の需要の分配が増える。

その結果として、

本数が伸びた。

だが、今日一番印象に残ったのは

別の時間だった。

十五時半を過ぎた頃。

雨脚が急に強くなった。

その時、客を乗せて走っていた。

Uberのアプリはオフにしていない。

画面が、鳴り続けている。

発信者名を見る。

発地はほとんど

東山。

近江町市場。

そして名前は、

外国人ばかりだった。

東山は十七時閉店の店が多い。

観光客が帰り始める時間だ。

そこへ雨。

歩くつもりだった人間が、

一斉にタクシーを呼ぶ。

その瞬間、街は

タクシーの供給不足になる。

Uberが暴れた。

だが、その渦の中にいながら

それを取ることは出来なかった。

賃走中。

迎車中。

画面の上で

配車が鳴り続ける。

取れない。

取れない。

取れない。

こんな経験は初めてだった。

正直、

勿体ない。

その気持ちは、

しばらく胸の中に残った。

それでも街は、

ちゃんと拾わせてくれた。

朝から細かい距離を

一つずつ積み上げる。

短い距離。

また短い距離。

そしてまた短い距離。

三十一本。

四万七千百円。

出庫

八時四分。

入庫

二十三時一分。

休憩

一時間十五分。

実稼働

十三時間四十二分。

一時間あたり

約二・三本。

二十六分に一本のペースだ。

今日は、かなり拾えている。

ロングは無い。

だが、

空車の時間は少なかった。

雨。

観光。

供給の薄さ。

それが重なった一日だった。

そして最後。

営業所に入ろうとした瞬間、

GOが鳴る。

神宮寺。

今日、

最後の一本。

本来なら、

今日は公休日だった。

それでもハンドルを握った。

月の目標に、

少しでも近づくために。

春はまだ遠い。

だが、

街の空気は確実に

春に近づいている。

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