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惜しい夜

夕方、東山の店の明かりが一つずつ落ち始めた頃だった。

この街は、だいたい17時で終わる。

店が閉まれば、人は動く。

観光客は、

ホテルに戻るか、駅へ向かう。

俺はそれを知っている。

だから東山へ入る。

茶屋街の中を一度ゆっくり流す。

中で手が上がることもある。

走っている途中でアプリが鳴ることもある。

浅野川大橋のたもとで、

観光客が手を挙げることもある。

そして、その日もちゃんと来た。

手が上がる。

アプリが鳴る。

短い距離ばかりだが、止まらない。

800円。

1200円。

1600円。

こんな距離が続く。

ロングは来ない。

来ないのが普通だ。

だから刻む。

駅を舐め、

片町を流し、

裏道を回る。

金曜の夜は、

タクシーが増える。

だから、

簡単な夜じゃない。

それでも、客は途切れない。

何本か走る。

ポライオに寄る。

コーヒーを頼む。

店内では飲まない。

運転席で飲む。

持ってきてもらう前に、

GOが鳴る。

コーヒーは飲めなかった。

まあ、いつものことだ。

夜が深くなるにつれて、

街は静かになっていく。

それでも、ぽつぽつと手が上がる。

本町。

西念。

涌波。

最後はまた片町へ戻る。

鳴らない。

手も上がらない。

待機のタクシーが並んでいる。

時計を見る。

3時32分。

今日はここまでだ。

メーターを切る。

売上を確認する。

35本。

62,700円。

目標は 66,000円。

差は、

3,300円。

ほんの一回。

あと一人。

それだけで届いた数字だった。

ハンドルに手を置いたまま、

少しだけ思う。

もう一本、来てくれればよかった。

あと3300円だった。

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