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止まると死ぬ。
ひがし茶屋街には、タクシーの待機場所がない。
だから車は溜まらない。
止まれない場所では、
動いている車が拾う。
俺にはそれが合っている。
マグロみたいなものだ。
泳ぐのをやめると死ぬ。
街には、別の種類のドライバーもいる。
待つタイプだ。
金沢駅タクシー乗り場。
近江町市場タクシー乗り場。
香林坊東急ホテル前タクシー乗り場。
片町タクシー乗り場。
順番を待つ。
それも仕事だ。
否定するつもりはない。
ただ、俺には合わない。
待っていると、落ち着かない。
今日は東山が強かった。
六本。
珍しい日だった。
昼の観光客。
Uber。
手が上がる。
東山は、動いている車に客が付く場所だ。
17時20分。
車線を一つ、間違えていた。
手が上がる。
だが、対応できない。
後ろのタクシーが止まり、
客はそちらに乗った。
……残念だ。
こういうことは、たまにある。
それでも俺は回る。
駅。
武蔵。
東山。
兼六坂を上がる。
出羽町で右折。
そこから、広坂へ落ちる。
そしてまた東山へ戻る。
金沢を回る、
小さな円だ。
右折する。
その先に、
客がいることがある。
だから俺は走る。
止まらない。
マグロだからだ。
泳ぐのをやめたら終わる。
止まると、死ぬ。




