欲にも火を
月曜は、公休日だった。
本来なら寝ている日だ。
だが俺はハンドルを握っていた。
理由は単純だ。
金だ。
俺のラインは四万四千。
その一日がそこに届かないと、気持ちが悪い。
街は静かだった。
波は立たない。
だが、切れない。
袋町から駅。
増泉から駅。
外国人ばかりだ。
言葉は通じなくても、金は通じる。
電子音が今日の鼓動だった。
ヒラメキは薄い。
だが数字は動いている。
止まっているタクシーを横目に、俺は動く。
面で削る。
東山。
香林坊。
武蔵。
流れの谷で、八百円を拾う。
中央卸売市場のぽん太で寿司を食った。
あら汁の湯気が、昼の静けさを割る。
生だ。
だが、あれはいい。
管理された生だ。
二万を越えた頃、
グループラインが鳴った。
行きつけの店、サボテン食堂。
「熊の刺身用の肉も少し手に入りました♪」
軽い。
俺は返す。
熊肉は線虫が身に潜んでるって読んだ事がある。
ちゃんと調べてる?
豚や鶏も基本、生では食べない。
ジビエはもっと危ない。
事実だけ置く。
しばらくして、
わかった、と返ってきた。
夜。
二万四千八百円でメーターを閉じる。
四万四千には遠い。
だが、崩れてはいない。
仕事を終えて店に顔を出す。
熊肉は焼いて出てきた。
メスだという。
以前食ったオスより、
どこか柔らかい。
少しミルクっぽい。
火は通っている。
熊を食うのは、
少しロマンがある。
生で食うのも、
きっとロマンなんだろう。
だが、それは違う。
寿司は生でいい。
熊は焼け。
欲にも火はいる。
生のままじゃ危ない。
焦がしすぎても駄目だ。
月曜は静かだった。
だが俺は、公休日に出て、
ちゃんと金を動かし、
ちゃんと止め、
ちゃんと食った。
今日は、悪くない。




