第一波のあと
東山で鳴ったGOは、すぐに消えた。
表示は名前じゃない。
三桁の数字だけ。
番号表示は、たいてい外国人だ。
キャンセル。
理由は分からない。
だが、空気は分かる。
夕方の東山には、もう匂いがなかった。
観光の熱は落ち、
夜の灯りには、まだ早い。
中途半端な時間。
俺は粘らなかった。
ハンドルを切り、ポライオへ向かう。
辰郎の店でコーヒーを飲む。
砂糖は入れない。
今日の客の顔が、頭の中に並ぶ。
名古屋から来た家族。
本多の森ホールで「おかあさんといっしょ」の収録があったらしい。
祖母と母と子ども二人。
イベント帰りの、少し疲れた笑顔。
駅へ送った客が、七組。
三連休の初日。
それでも、帰る人が多い。
観光は回った。
写真も撮った。
市場も歩いた。
今は――夕飯だ。
焼肉。
その言葉が、ふっと浮かぶ。
理屈じゃない。
だが、理屈はあとからついてくる。
夕飯時だ。
家族は、歩かない。
兼六園周辺は空き始めていた。
人の流れは、駅へ向かっている。
駅は車で溢れている。
観光第一波は、終わった。
ならば、次は郊外。
寺町、有松、野々市、八号線。
目的地じゃない。
あの外側から、発が出る。
家族が動き出す時間がある。
GOが鳴るなら、そこだ。
直感。
だが、それは勘じゃない。
昼の空気。
客の会話。
駅の混み方。
渋滞の質。
全部が静かに積み上がり、
影のように形になる。
直感とは、経験の影だ。
俺は流す。
止まらない。
鳴る帯に入る。
鳴るかどうかは分からない。
取るまで、どこへ行くかも分からない。
だが、鳴る位置にはいる。
それでいい。
夜は、まだ長い。
今日は、まだ終わらない。




