55
0時を回った瞬間も、街は何も変わらなかった。
信号は赤になり、
スクランブルには人が立っている。
スマホの日付だけが、2月22日を示していた。
55。
実感はない。
ハンドルを握ったまま、誕生日は通過した。
三連休初日。
人は多い。
タクシーも多い。
スクランブルには、50台はいたと思う。
地獄絵図やな、と呟く。
並ばなかった。
50分の1を、
わざわざ51分の1にする理由はない。
動いた。
それだけや。
昼は刻んだ。
夕方は駅へ流した。
夜前に三本続いた。
テルメ金沢、3,700円。
酔い過ぎた客は断った。
寝られる時は寝た。
焦らなかった。
本音は、30本いかんかもしれん、と思っていた。
それでも、口では35本と言った。
口に出した数字は、消えない。
街は、静かに吐き出しを始める。
二軒目の顔が、帰る顔に変わる。
お姉ちゃんが夜泣きうどんに入っていく。
店が終わったな、と思う。
爆発はない。
金沢や。
じわじわ減っていく。
だから、止まらない。
流す。
動いている車に、手が挙がる。
キララ前。
前のタクシーは日報を書いていたらしい。
目が合ったのは、俺やった。
鳴和台、2,400円。
メーターが、ひとつの線を越える。
3時を回る。
駅は静かだった。
当たり前や。
もう一度だけ片町を舐める。
未練じゃない。確認や。
3時40分。
GOが鳴った。
小坂町から片町、3,000円。
出来すぎや。
メーターを止める。
日報を書く。
売上は、53,100円。
本数は、30。
日付は、2月22日。
エンジンを切る。
街は、もう静かだった。




