その正しさは、金にならない
2月3日 21:20
21時20分。
家は静かで、暖房の音だけが一定のリズムを刻んでいる。
仕事の鞄は壁際に置いたまま、俺はテーブルに肘をつき、スマホを開いた。
翌朝の新幹線の時刻表を見るためだ。
06:02、かがやき。
06:16、はくたか。
07:03、かがやき。
07:19、はくたか。
——早いな。
数字を追っていると、胸の奥で何かが引っかかる。
速さの問題じゃない。
この“早さ”は、誰のための早さだ。
新幹線は走っている。
街も、もう目を覚まし始めている。
だが——
先方の会社は、まだ始まっていない。
思い返す。
2月2日、月曜日の朝。
早く動いたわりに、思ったほど伸びなかった。
おかしいとは感じたが、その時は、理由まで掘らなかった。
そして、その日の早朝。
5時19分出庫。
5時台、0本。
外は暗く、寒さだけが正直で、需要は一度もこちらを見なかった。
——当たり前だ。
早く着きすぎた人間は、急がない。
会社が開いていない時間に着いてしまえば、駅で待てばいい。
コーヒーを飲めばいい。
スマホを見ていればいい。
タクシーに乗る理由が、どこにもない。
俺は、移動に合わせて動いていた。
だが、客は——
始業に合わせて動く。
新幹線のダイヤは正しい。
だが、その正しさは、必ずしも金にはならない。
金になるのは、
**「乗る前と、降りたあとに急がなければならない時間」**だけだ。
7時台。
8時前後。
9時始業。
答えは、もう出ていた。
俺は、翌朝の出庫時間を7時30分に決める。
そして、5時45分にアラームをセットした。
それだけでいい。
今日は、ここまでだ。




