眠る街
0時30分。
幸町。
街灯の光はまだ強いが、
足音はもう少ない。
東京なら、
ここからが本番だ。
だが――
ここは金沢だ。
少しだけ、片町に寄せる。
寄せるが、踏み込まない。
街が起きているか、
それとも布団に入ったか。
確かめるための距離。
0時43分。
広小路バス停前。
スクランブルには、
タクシーが溜まっている。
エンジン音だけが、
夜を引き伸ばしている。
人はいる。
だが、理由がない。
帰りたい顔も、
タクシーを探す目も、
迷っている足も、
もうほとんど見えない。
――1時まで。
そう決めて、
ハンドルから手を離す。
粘れば鳴るかもしれない。
だが鳴っても、短い。
そして、流れは変わらない。
0時50分。
スクランブルは、
完全に“待つ側”の景色になった。
逆転のロング。
週中には、まず来ない。
今日は、
取りに行く日じゃない。
削るだけの日だ。
18本。
十分だ。
この街で、
この曜日で、
この時間帯なら、
もう勝っている。
俺はウインカーを出す。
御供田へ。
給油して、今日は終わりだ。
そう思った、その時。
GOが鳴った。
戸水のスタバから、神宮寺まで。
距離は短いと思った。
だが、
まあまあある。
ラッキーだ。
メーターは静かに伸びていく。
信号と流れが噛み合い、
気づけば三千円ほどになっていた。
ありがたい、と思う。
それでいい。
街はもう眠っている。
だが、完全には眠りきっていない。
眠りに落ちる直前、
最後に一度だけ、
寝返りを打ったような呼び出し。
俺は静かにハンドルを切る。
街に勝ったわけじゃない。
街に従っただけだ。
それでいい夜も、
確かにある。




