雪の朝(後半戦) ――15時24分、再点火――
15時24分。
街の空気が、はっきり変わった。
それまでの流れが悪かったわけじゃない。
切れてもいない。
ただ、どこか「抑えられたまま」だった。
本多町。
市役所までの短い距離。
軽い一本だ。
だが、この時間に鳴るという事実が、
街のスイッチを入れた。
――来るな。
感覚は、いつも唐突だ。
理屈より先に、身体が理解する。
石引から内灘。
距離が伸び、メーターが跳ねる。
中心に戻る途中で、また声がかかる。
西へ、海側へ、そして再び街へ。
大野、西都。
松村から大野。
流れは外へ向かい、
そして戻ってくる。
この時間帯の街は、嘘をつかない。
帰る理由がはっきりしている人だけが、
迷わずタクシーを選ぶ。
無量寺、藤江。
高畠から、ハイアットホテル。
一度、中心を噛ませると、
次は必ず郊外が来る。
日が落ち、
街の輪郭が、少しだけ柔らかくなる。
駅に戻る。
プールは短い。
回転が速い。
軽い距離でも、迷わず戻る。
片町。
香林坊。
また駅。
入れ食いは、長くは続かない。
だから、追わない。
終わりが見えた瞬間に、切る。
再び、外縁へ。
菊川。
柿木畠。
駅へ戻り、また片町。
最後に来たのは、
香林坊から弓取町。
一日の締めとして、十分な距離だった。
時計は、深夜を回っている。
GOは、まだ鳴る。
だが、今日はここまでだ。
0時48分。
GOを切らず、そのまま帰社する。
街は、まだどこかで動いている。
だが――
今日の時合は、取り切った。
雪の朝は、
いつの間にか、
確かな一日になっていた。
――完。




