第四話
戦場に響き渡る警告音。それは、生者へ死を宣告する非情なカウントダウンだった。
魔導素の残滓が灰のように降り積もる銀世界のなか、その忌まわしい不協和音は一つ、また一つと増殖し、逃げ場のない絶望となって戦場を支配していく。
「魔導核の暴走を確認した機体は、即座に緊急脱出せよ!繰り返す――」
通信機から士官の悲鳴のような命令が飛ぶ。だが、帝国の黒い魔導甲冑は、自爆の危機にある機体にさえ容赦なく斬りかかってくる。脱出の隙すら与えられず、暴走する機体で死に物狂いの防戦を強いられる隊員が続出した。
「戦闘狂どもめ……!セラ、暴走した味方の掩護を優先しろ!脱出の時間を稼ぐんだ!」
ユリウスが近接型の魔導甲冑を駆り、黒い連撃を盾で受け流しながら叫ぶ。その背後を守る班員たちも、必死に敵の速さに食らいついていた。
「了解!とっととそこを退きなさいよ……ッ!」
セラの放った魔導素の弾丸が、暴走機を追い詰めていた敵機の核を正確に射抜く。
動きを止めた敵の隙を突き、脱出ポッドが次々と射出されていく。脱け殻となった機体は、直後に真っ赤な光を放って爆発四散し、戦場に巨大な火柱をいくつも立てた。
「ユリウス、あんたの方は大丈夫なの!?」
セラは高台へと機体を滑らせ、スコープ越しに乱戦の渦中を探る。
「俺の班は問題ねぇ!だが、このままじゃジリ貧だぞ!」
「わかってるわよ……!」
一息つく間もなく、セラは視線を地平線の彼方へと向けた。そこには、設置型の魔導盾を構え、悠々と死の雨を降らせる黒い狙撃機――リュカの姿があった。
「あいつを……あの死神を早く黙らせないと……!」
焦りがセラの指先を狂わせる。あの距離を貫けるのは、この場に自分しかいない。
狙撃の合間に生じる一瞬の隙。そこに標準を合わせようとするたび、随伴の敵機が執拗に邪魔に入る。
「いい加減にしてよ……ッ!どきなさい!!」
昂る感情のままに魔導銃を乱射するが、敵の包囲網は厚い。必死に隙を探し、再び銃を構えようとしたその時――。
セラは自機の近くで、これまでで最も大きく、最も不吉な警告音が鳴り響いた。
「なっ……!?」
咄嗟に視線を向けた先。
そこには、胸部の魔導核を禍々しい赤色に明滅させ、今にも弾け飛ばんばかりに震える一台の白い機体があった。
「アリア……!?」
それは、あの新人の機体だった。




