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第四話

 ヘルマン・グレイスナー小隊が編成されてから、半年が過ぎようとしていた。

 その間、小隊は帝国軍の『ノクティス・フレーム』との接触を徹底的に避け、各地の戦場を転々としながら、本部の命じるままに「戦果せんか」を拾い集める日々を繰り返していた。

「本日も実にご苦労であった!我が部隊の快進撃かいしんげき、私も実に鼻が高いのである!」

 一度として戦場に立ったことのない指揮官が、脂ぎった頭皮をで回しながら、休憩室に集まったメンバーへ向けて傲慢ごうまんにのたまった。

「うっさいのよ、このハゲ!あんた、安全な後方で茶をすすってるだけじゃない!!」

 リサが立ち上がり、剥き出しの苛立ちをぶつける。

 ヘルマンは魔導甲冑マナ・アーマーれすらしない。実戦はおろか訓練にすら顔を出さない彼を、隊員たちが軽蔑けいべつの目で見ているのは、今や隠しようのない事実だった。

「落ち着いて、リサ。……彼はこれでも、私たちの隊長よ」

 ソフィアがなだめるが、その声にも諦めが混じっている。ヘルマンが何かをわめき散らしても、もはや誰もその言葉を記憶に留めることはなかった。

「アリアさん、顔色が優れませんね。明日には本部へ帰還きかんできます。今日はもう休んだ方がいいですよ」

 アーヴァインが椅子から立ち上がり、アリアに歩み寄る。その微笑みは完璧に優しかったが、その瞳は検体けんたい見定みさだめる学者のように冷徹だった。

 うつむいたままのアリアは、返事を返す気力すら残っていないのか、小さくうなずくだけだ。

「……軍の諜報ちょうほう部隊のお陰で、ガルドの魔導戦装マナ・コンバット・ギアとの戦闘は回避できている。だがその裏で、多くの兵士が奴の情報を引き出すための『コスト』として命を散らしているのが現状だ」

 ダリルが重々しく口を開く。王国上層部は、今の不安定なアリアをノクティスにぶつけるわけにはいかないと判断していた。

「アリアだけでなく、全員だ。明日の帰還に備えて早めに休め。いいな?」

 ダリルが去ると、残された者たちも重い足取りで自室へと戻っていく。

「カイルさん。彼女を部屋まで送ってあげてください」

 アーヴァインが静かに促し、カイルが頷くのを見届けてから、彼も自室へと戻っていった。

「アリア、俺たちも部屋に戻ろう」

「……う、うん。いつも、ごめんね……カイル」

 立ち上がろうとしたアリアがふらつき、それをカイルが受け止める。

 カイルは「気にするな」とつとめて明るく言い、彼女の細い体を支えた。戦場に出るたび、彼女の体温は奪われ、生気はれ果てていく。

 宿舎へ向かう薄暗い廊下で、アリアがかすれた声で呟いた。

「ねえ、カイル……。私は……わたしだよね……?」

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