死にたい人。
掲載日:2025/11/14
「ねえ、死にたくないですか?」
突然に、そんな声が後ろから聞こえた。
「っ……!」
目を見開きながら固まると、前を向いたままの私の肩になにか冷たいものがあたる。
そしてすぐに、首に冷気があたる。それはまるで、極寒の中にいるようだった
「あなた、すごく死にたそうですもんねえ」
「っ、だ、誰……?」
身体が硬直したように動かないまま、震える口を必死に動かしてそういう。呼吸が、嘘みたいに乱れている。
「おかしなことを訊くのですね、人間は」
肩に触れているものの重力が増していく。今にも肩が外れそうなのに、痛みがない。意味が分からなく、だが逃げることもできず、突っ立つ。
そして、耳元までも凍りつくような声で。
「あなたを喰らいに来た、ただの人ですよ」
一瞬見えたそれは、死神のようで。
散る鮮血とともに、私は希望の光に抱かれて眠った。
***
「…………」
目の前目で鮮やかに散る赤い血を見ながら、それは鎌を下ろす。ただ無言に、ただ空虚に。
それは口角を妖しげに上げた。
「さて、行きますか」
踵を返し、それは人を探し続ける。
本当に、死にたい人を。




