表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛犬が願いを叶えてくれるそうです  作者: 二木弓いうる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/33

愛犬が願いを叶えてくれるそうです

その日の夜。俺はまた油に会った。あの時油が見てたか見てなかったか分からないので、とりあえず結果だけ報告。


「涼に勢いだけで告白したんだけどさ。結果的としては、今はまだ啓の事を恋人として好きにはなれないけど、これから少しずつ意識するようにする、だってさ」

『良かったじゃん』

「まぁね。それでだ油、考えたんだけど」

『ん?』

「最後の願いを叶えてもらおうと思う」


 油は一瞬、驚いた顔をしていた。でもすぐに笑って舌を出す。


『唐突だけど、ようやくだね。で、何にするの?』

「今度の日曜日の天気、晴れにしてくれ」

『……そんなんでいいの? 何でも叶うんだよ?』

「そうなんだけどさ、あんまり盛大な願い事叶えてもらっても、後々大変になりそうじゃん。またお金持っても悪い奴らに付きまとわれたり、ハーレムになっても好きな子が振り向いてくれないんじゃ意味ないし」

『そういうものかなぁ』

「そういうもんなんだよ。少なくとも俺にとっては」

『そっか。じゃあそれで神様にお願いしとくね』

「うん。あぁ、あとお願いとは別で神様に伝えといてほしいんだけど」

『何?』


 油は首を傾けた。大変可愛らしい仕草だ。


「別に俺、油の事そんなすごい犬に育てた気ないんだよね」

『失礼な。オレは良犬だよ』

「うん知ってる。でも俺が育てたからじゃなくて、俺の言う事聞いた油が賢っただけだと思うんだよね。俺特別な事何もしてないんだよね」

『そんな事ないよ。ご主人は捨てられてたオレの事拾ってくれて、面倒見て、一緒にいてくれたでしょ? 今の世の中、それが出来ない人間なんていっぱいいるからね。そりゃ家の事情で飼えないとか、アレルギーだとかで飼えない人がいるのも分かってる。でも中には動物をいじめたり、買ったけど捨てる人間だっている。ご主人はすごいんだよ』

「そうかなぁ」

『そうだよ。だからさ、もっと自信持って。ねぇご主人、どうしてご主人の所に行ったのが涼ちゃんだったか分かる?』

「え? 良牙の妹で、設定的に俺の所に向かわせるには丁度いい性格してたからじゃないのか? 正直、すごい雑な設定だなって思ったけど」

『違うよ。涼ちゃんならご主人の事をちゃんと分かってくれると思ったからだよ。ご主人はすぐ自分が悪いって、卑屈になるじゃん。確かにバカで卑屈だけど、それ以上に良い所いっぱいあるから。涼ちゃんならそれを分かってくれた上で、言葉にしてくれると思った。だからオレ、ちょっと神様に伝える言葉勝手に変えちゃったんだ。巨乳でご主人の事考えてくれる女の子と同棲、ってね』

「油……」


 なんて主人想いの犬なんだろう。俺のせいでひどい願い事を伝えさせたような気もするけど。



『ご主人の事を考えなくても良かったんなら、適当な家出少女をご主人の部屋の前に連れて行く事だって出来たんだ。神様パワーは何でも出来るからね』

「そうか、ありがとう油。でもお前、俺の事バカだと認識してたのか」

『うーん、ちょっとだけ。でもオレそんなご主人の事も大好きだよ』

「飴と鞭を同時に出してくるなよ」

『ごめんって。でも本当に、ご主人の事大好きだからさ。きっともう見えなくなるだろうし、意思の疎通も出来なくなるだろうけど。オレはいつでもご主人の傍にいるから。仕事してる時以外』

「最後の一言いらない」

『気にしないで。じゃあ、これで』


 油が再び俺の元へ来てくれたのは、三つの願いを叶えてくれるため。

 三つの願いを伝え終わった今、多分、いや間違いなく。

 こうやって話す事は、もう二度と出来ないだろう。


「楽しかったよ、油」

『オレも楽しかった。ご主人、今までありがとう』





 目を開いた瞬間、目尻に水が伝ったのが分かった。これも見られていたらと思うと、悲しさと恥ずかしさがこみあげてくる。

 腕で目元を拭って、二段ベッドの下段から降りる。

 そのまま上段を覗いた。またアイツいないな、涼に怒られても知らないぞ。

 俺は携帯を開いて、今度の日曜日の天気を調べる。ネットの天気予報では曇りのち雨。

 今までの俺だったら、この時点で諦めていたかもしれない。

 ネットを閉じて、時間を確認した。午前十時。俺にしては早いけど、世間的にはそこまで早くもないだろうから電話しても迷惑じゃないだろう。

 勇気を出して、電話をかけた。


「もしもし涼? 突然だけど、日曜空いてる? 間違いなく晴れるからさ、ちょいとデートでもしませんか?」


 季節的にはそろそろ紫陽花が咲き始める頃だけど。

 日曜日は間違いなく晴れるからさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ