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愛犬が願いを叶えてくれるそうです  作者: 二木弓いうる


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怖い擬音で脅してみる

『オレで気を紛らわすのよくないと思う!』


 気づいたら油に怒られていた。


「仕方ないじゃん。油だって可愛い雌が目の前で寝てたら襲いたくなるだろ!」

『そうかもしれないけど!』


 いつも通り、油と共に花畑にいる。もうこの景色にも慣れてしまった。


「ところで今日決めなきゃだったりするのか。三つ目のお願い」

『ううん別に』

「じゃあ今夜は保留。考えられてもないし」


 というかもしかしてだけど、決めなければずっと油に会えるんじゃない?


『別に良いけど、オレ忙しいの。なるべく早く決めて』


 俺より仕事を優先された。よく考えたら今の油のご主人は神様みたいなもんって事だもんな。仕方ないよな。ちょっと悲しいけど。

 あれ? ちょっと待って。


「なぁ油、もしかしてお前を生き返らせるっていう願いもあり?」

『……うーん、ありではある。けど、ご主人、本当にそれでいいの?』

「もしその願いも叶えられる範疇なら、俺はそれが一番嬉しいな」

『そっか。そう思ってくれるのは嬉しい。すごく嬉しい。それに神様は何でもオッケーって言ってるし、叶えられる範疇ではあると思う。でも正直な所を言うなら、それはズルい気がする。例えばだけど、オレが生き返った後ばーちゃんが死んだとするじゃん』

「何でそんな悲しい事言うの」

『例えばだってば。そうなった時、ばーちゃんを生き返らせる事は出来ないよって話。オレだってもう一回生き返ったり、全く別の犬に生まれ変わってご主人に飼われたとしても。ご主人よりはまた先に死ぬかもしれない』

「そうか……それもそうだな。悪い事を言った」

『ううん。ご主人の気持ちは嬉しいからね。大丈夫、ご主人が死んだらオレちゃんと迎えに行くから。でもしばらくはこっち来ないでね』

「うん」


 今のところは健康だし、死ぬ気配は微塵も無い。事故や災害にさえ合わなければだけど。


『ところで、二つ目のお願いはどうだった?』

「あぁ、ばーちゃん喜んでたよ」

『それは良かった』

「俺も今度小遣い貰える事になったからね。万々歳ですよ」

『ご主人の宝くじを当てる事も出来たってのに、小遣いレベルでも喜べるんだからご主人はすごいなぁ』

「ただの小心者だよ」

『そんな事ないと思うんだけどなぁ』

「そうだ油、聞きたかったんだけど。油って名前嫌だったりした?」

『今更何を。別に気にしてないよ。そもそもつけられた時は油が何を意味するものか分かってなかったし』

「本当はマカロンとかフルーツタルトとかが良かったとか」

『ちょっと可愛すぎるなぁ』

「だよなぁ」

『正直他の犬と比べたら変わってる名前なんだろうけど。俺はご主人が考えてくれたこの名前が好きだよ』

「油……」

『それに世の中もっと嫌な名前あると思うの。雑巾とか、ゴキブリとか、そういう名前じゃなかっただけ全然いい』

「犬にそんな名前つける人がいるのであれば、むしろ理由を聞きたい位だよ」




 翌朝。肌寒さを感じ目を覚ました。

 あ、雨の音がする。寒い訳だ。

 目だけを動かすと、涼が俺と良牙の服が入った棚の引き出しを開けていたのが見えた。何してんだろ。


「これで良いや」


 涼は一枚のジャージを取り出して、着始める。来てる洋服じゃ肌寒かったから、借りようって所か。

 でも待って、その服俺の服だよ。


「しゃむしゃむ」


 可愛い鳴き声が聞こえた。寒い寒いと言いたかったのだろうか。

 ちょっとサイズが合ってないね。袖がてれーんってなってる。それはそれで可愛いんだけど。やっぱり朝ごはん作るのには不便そうではある。

 あ、やっぱり袖をめくってる。

 俺の服を着た涼は冷蔵庫の中を見て、ベーコンを取り出した。シンクの前に立ち、ベーコンを切り始める。涼が何を作るのか考えるのがここ数日の楽しみ。やっぱり女の子の料理作ってる姿は見ていて楽しい。

 むしろもっと近くで見たい。

 体を起こし、涼の隣に立つ。


「涼」

「ん、起きた? おはよう」

「おはよ」

「……あのさ、昨日っていうか、今までごめん」


 おぉ、ようやく反省したようだ。


「うん。次無防備な所見せたら、ガッて掴んでグニュッてしてズブッてするから。今だったら頭の中にとどめておくから。現実にしないように気を付けてね」

「よく分からないけど怖い擬音……分かった。でもお願い、やっぱりまだ勿体ないって思うのもあるし、もうちょっと料理食べて欲しいから。兄貴が帰ってくるまでのあと三日間で良いので、三日間だけ居させて下さいっ」


 うーん……本当の紳士だったら、そう言われても帰すのが普通なのかもしれない。けどそこまで俺は紳士になれない。


「本当の本当にガードしてね」

「うん、頑張るっ」

「分かった。ところで何で俺の服着てんの?」

「えっ、これ啓の? 確かに紺色だけど、ピンクのライン入ってるから兄貴のかと思ってたや」


 俺が普段着る洋服って、黒とか紺とか地味なやつばっかりだもんね。全くこだわりもないし。

 逆に良牙が着る洋服は、蛍光緑とか虹色とか派手なの。センスが悪い訳じゃないけど、遠目で見ても目立つやつばっかりだ。


「ちょっと待って、今ベーコン切ったら脱ぐから」


 女の子が脱ぐって言うの、ちょっとヤラしい。


「寒いから着てて良いよ。それより手伝おうか」

「そう? ありがと。でもゆっくりしてていいよ」

「ならそうさせてもらうけど……そう言えば涼、オムライスは俺デミグラスソース作れないから。ケチャップで良い?」

「えっ」

「デミグラスじゃなきゃダメか」

「ううん、そうじゃなくて」


 まず俺がオムライス作るって事が本当だったのかって顔してる。

 実はそこら辺、心配しなくても大丈夫だったりする。無茶言うなって言われるかもだけど。

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