俺にだっていつかは
涼の様子を見ていたお巡りさんは、子供たちに目線を合わせた。
「子供達、このお姉さんは悪い奴じゃない」
「もっとちゃんと調べて!」
たっくんはお巡りさんに怒りをぶつける。そこまで俺の事を思ってくれるのは嬉しいけど、お巡りさんを困らせちゃダメだよ。
「調べなくても話せば分かるよ。まずこの小田巻生徒はそこまで悪い奴じゃない。それは以前君らのお母さんが被害を受けた際に証明されている」
なるほど、俺はお母さん方に目もくれずちびっこ達と遊んでたからな。
お巡りさんは説明を続ける。
「態度も堂々としてるし。毒もこんな女の子が簡単に買えるとは思えない。兄の方だったら持っててもおかしくないと思うけどね。それに、悪い奴だったらまず警察見た瞬間に逃げてるよ」
あぁ、よく良牙は逃げてたね。
ふーくんは不安そうな顔をしている。
「ほ、本当に毒無い?」
「少なくともおまわりさんは、この公園に捨てられてた高級弁当の方が体に悪いと思うな」
「良牙君がこの間食べようとしておまわりさんに怒られてたやつかぁ……それもそうだね」
涼は情けなさと恥ずかしさで俯いている。慰めに頭でも撫でて良いだろうか。
子どもたちも納得したようだ。
「おまわりさんがそう言うなら」
「お星さまのゼリー作ってくれるし」
「少なくとも良牙君よりは悪い人じゃなさそうだね」
総評、皆良牙につける評価は最悪。
お巡りさんは俺に一つ、質問をする。
「そう言えばもう一人の小田巻生徒は来てないのか。兄の方の」
「良牙? アイツ彼女の所に居るんで」
「彼女いたのか」
「おかしい世の中ですね」
俺とお巡りさんの会話を聞いて、子供達も騒ぐ騒ぐ。
「良牙と付き合うってどんな神経だよ」
「多分顔に騙されているんだよ。可哀想」
「それか良牙君の方が騙されてるんじゃないかな」
言いたい放題だ。それほど良牙の日頃の行いが悪いって事だけど。
お巡りさんは子供達に注意する。
「いくら相手が頭が悪く態度も悪く女性にベタベタ引っ付いている男だとしても、そんな事言っちゃいけないぞ」
お巡りさんも中々言いたい事言ってると思うんだ。事実だからね、仕方ないけどね。
でもさぁ。
「良牙に彼女出来る位だし、きっと俺にも将来出来るよね」
子供達プラスお巡りさんが俺から目を反らす。どうして。
「うん、啓は悪い奴じゃないから。多分大丈夫だよ」
「おぉ、やったぁ」
大丈夫って言われて素直に嬉しい。
子供達は交番に戻って行ったお巡りさんに手を振っている。
俺は申し訳ない気持ちいっぱいで涼の顔を見て。
「ごめん、もうお腹いっぱい。ご馳走様」
涼はまだおむすびとおかずが入った重箱を片付ける。本当は残すの好きじゃないんだけど、俺普通の男子高校生と比べたら普段からそんなに量食べないからな。これでも今日は食べた方。
「十分食べてくれたよ。重箱に入れる関係で作った数増えちゃったし、残るのは想定内。残りはあたしが夕飯に食べるから、気にしないで」
「嫌だ俺も食べる」
「ゼリーどうする?」
「後で食べる」
涼は子供達の顔を見た。
「皆はゼリー食べる? あ、まだお昼食べたばっかりだから要らないかな。一応一人二個ずつって考えてたんだけど」
そうか、五個だと重箱に隙間が出来ちゃうからか。それに涼は高校生の友達だと思ってたみたいだし、高校生なら二個食べられるだろうとでも思ってたんだろう。
「まぁ毒が入ってないんなら食ってやる」
涼を悪い奴だとは思わなくとも、素直には受け取らないたっくん。
「食べるぅ、ありがとう」
反して素直なみーちゃん。これは星に釣られたっていうのもあるんだろうな。
涼は二人にゼリーを一つずつ渡す涼。スプーンまで用意しちゃってまぁ。
「えと、ふーくんだっけ。後で食べる?」
にっこり笑顔の涼の顔を見ないふーくん。こんな可愛いの見ないなんて勿体ないよ。
「……ママが外でおかし食べちゃダメって言うから」
もうゼリーを食べ始めたたっくんとみーちゃんは、呆れた様子でいる。
「あー、ふうたの母ちゃんっていちいちうるさいよな。普段仕事だーとか言ってふうたと全然遊んでやらねぇくせに。怒ってばっかで文句だけは言うの」
「うんうん。幼稚園の遠足の写真に、ふーくんが少ししか写ってないーって先生に怒ってたりしてたねぇ」
あぁ、良牙が手を出してた時も一番怒ってたっけ。あれは良牙の自業自得でもあるけど。
他にもたっくんとみーちゃんのお母さんが話してたのを色々聞いたことがあるな。子育てはきっと大変なんだろうけど、だからって自分の都合の言い様には出来ないよなぁ。
ふーくんが珍しく怒る。
「そんな事ないもん、もっと遊んで欲しいなって思う事はあったりするけど……ママはいっつもお仕事頑張ってくれてるもん!」
周りから好かれてない人でも、自分の家族からは好かれてるってよくあるよね。
俺も似たようなもんだ。小田巻高校って言っただけで周りからはバカだの乱暴だなんだの言われたりする事もあるけど、家族には好かれてる。それだけは自信もって言おう。
俺はたっくんとふーくんの頭を撫でた。
「喧嘩しなーい。食べる人は大人しく食べるよ」
涼はふーくんに笑顔を向ける。
「じゃあ持って帰ってお母さんと食べて。それなら怒られないでしょ」
「……うん!」
良かった良かった。
それを見ていたみーちゃんは、涼の膝を軽くつつく。
「みちかも一個持って帰って良ーい?」
「良いよ。みーちゃんもお母さんにあげるの?」
「うん。それでね、ママも作ってって言うの。お星さまのゼリー」
トラブルの元にならんだろうか。案外作るの大変だろうし。多分涼も同じ事思ってる。
「それほど気に入って食べて貰えるのは嬉しいけど、みーちゃんのお母さん、他にやる事あって忙しいかもしれないから。みーちゃんのお母さんが作るの無理って言ったらあたしが作るから、いつでも言ってね」
「分かった! じゃあママに聞いてみるね」
「うん。あぁでも、あたし春休み終わったら家帰っちゃうから。そしたら啓か兄貴に言ってね。伝えてもらおう」
ゼリーを二個食べたたっくん。一個お持ち帰りのみーちゃん。両方持って帰るふーくん。
皆喜んでくれたみたいで良かったな。涼も嬉しそうだ。




