今更ながら油の名前を考える
お弁当箱? あぁ、入れる箱が無いのか。
「お弁当はお弁当箱に入ってこそでしょ。小田巻って高校なのに珍しく給食だもんね。タッパーも無いかな」
「タッパーは無いけど、ばーちゃんがお正月用にってくれたお重ならあるよ」
ベランダから台所へ戻り、流しの下に設置されている戸棚を開ける。黒と金色の三段重箱を取り出す。サイズ的にかなり大きい。
涼も妥協している。
「お重で良いか。ちょっと量多くなりそうだけど」
「全力でお腹を空かせようじゃないか」
何なら今から腹筋でも始めよう。そんなんでお腹すぐ空くか分からないけど、きっと何もしないよりはマシ。
涼は既に作っていたおかずをお重に詰め始めた。その姿は、まさにお母さん。
涼、このままだと俺は新婚と錯覚して良牙が帰って来ない事を望みそうだよ。もはや良牙には期待してないから自力で帰さないとと思っているよ。
洗濯を終え、涼もお弁当を作り終えた。現在十一時
「ちょっと早いけど、もう公園行っちゃおうか」
「そうだね。ってか着く頃にはちょうどいいかもよ」
「それもそうか」
お重に入れられた大きなお弁当を持つ。
今日も恐る恐る寮を出て、人通りの多くなった頃に会話スタート。
「公園って大きいの?」
「うん、広いよ。米俵公園っていう名前付けられる位だからね、そこそこ大きい」
ブランコに滑り台、砂場もあるぞ。
今の時期は公園を囲っている桜の木が良い感じになってるんじゃないかな。
「あたし公園行くのって久々だなぁ。啓はよく行くの?」
確かに高校生で公園行くのってデート位しかなさそうだもんね。あとは健康のためだとか犬の散歩に行く位かな。
「うん、よく友達と遊ぶね」
「これから会う人達とよく遊んだりするんだ」
「そうそう。皆良い子だよ」
幼稚園児だから公園で遊ぶのがメインなんだよね。
「でも公園で何して遊ぶの?」
「勇者ごっこだね」
「啓が?」
「そうだね。たまに良牙も来るけど、基本は俺が遊んであげるね」
「へぇ、凄いね。高校生で勇者ごっこするの、珍しいと思う」
「そりゃ相手が相手だし……あ、俺三人の年齢言ってないな。ごめん涼、これから会う友達、全員四歳」
「よっ、四歳!」
「一応言っておくと、俺ちゃんと大きい友達もいるからね」
「そっか。てっきり同い年かと」
「よく勇者やるたっくんと、魔法少女やるみーちゃんが喧嘩するんだよ。漫画だと男の子二人と女の子一人なんてこのまま行ったら三角関係になりそうだけどね、そうならなさそうなのが現実だよね」
幼稚園児の三角関係を心配するより、自分の将来を考えた方が良いのが本当の現実だけどな。
涼がからかうように笑う。
「分かんないよ。あ、その中に啓が入るかもしれないし」
「流石に入らない。みーちゃんは妹みたいなものだから。そしてみーちゃんは俺を弟のようなものだと思っている。おままごとで毎回赤ちゃん役に指名してくる」
「あはは、そんな感じなんだ。あたしも仲良くなりたいなぁ」
「なれるよ。三人とも良い子だから。よく俺を心配してくれる」
「それは優しいね」
うん、主に良牙が原因で。幼稚園児に心配されるほどの人間であるって事だ。
「うん。あっ、あとふーくんが居るんだけど。ふーくんは日によってポジションが変わるよ。勇者の隣で賢者になったり、魔法少女の隣でマスコットになったりする」
「じゃあ啓は何役するの」
「店主のオヤジ」
「……楽しい?」
「うん。あとはペットとかかな」
きっとこの後やるから。それを見てあざ笑えば良いよ。
「そうなんだ。あ、ペットといえば。さっき携帯貸してくれた時見たけど、待ち受けの犬って啓のペット?」
「あぁ、そうそう。実家で飼ってた犬。もう死んじゃったんだけどさ」
「そっか。可愛かったから見たかったなぁ。残念」
「そう言ってくれてきっと喜んでるよ」
見えてないけど、もしかしたら今も油は近くにいるかもしれないし。
「いいよねぇ、犬。うちは兄貴いるからダメなんだ」
「良牙犬嫌いだっけ?」
「ううん。ほら、昔うちを虫屋敷にしたって言ったでしょ。その他にもザリガニ屋敷にしたり、蛇屋敷にしたせいで我が家ペット禁止にされた」
「ろくな事しないなアイツ」
「あたしも犬飼いたかったんだけどね。絶対お手を覚えさせるんだ。啓も……えーと、犬の名前何?」
「油」
「……油?」
「まぁ普通の反応だよね」
「何でそんな名前を」
「太らせたかったんだよね。今思うと他にも太りそうなものいっぱいあるんだけどさ」
「そうだよ。マカロンとか、フルーツタルトとか」
「可愛いけど雄だからなぁ」
「可愛いから大丈夫だよ」
「そうかなぁ」
今思えば普通の名前じゃない事は俺も自覚してるけど。油も実は嫌だったりしたのかな。せっかくの機会だし。次会ったら聞いてみようかな。




