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敵 仲間 騎士

戦わないなぁ~



 森の中と言う事は解るが、どこかは解らない。

元々、森の詳しい地図などはこの世に存在しない。この森に入った人間は皆行方不明とか、死体となるからだ。


 ゴーストウルフじゃない狼達の後を追ってはいるが、ひしひしと殺気を感じる。

 多分狼達の殺気だろう。一応は共闘したが、仲間となった訳ではない。私は今でも十分この森にとっては部外者なのだろう。


 まぁ、この殺気もそれ程悪いモノじゃない。どれも強く、確実に私の命を狙っている。


 実に面白い。



 戦闘狂は走りながら、唇を舐めた。










『何だ・・・人間の気配がするぞ?』

一頭のゴーストウルフが辺りを見渡しながら言った。

 その側に居る、白い狼が答える。


[ホントだね~この匂い・・・・美味しそうだよ・・・]

 

 ゴーストウルフは基本黒だ。そして声は篭っている。


 だが、この白い狼の声は逆に、トンネルの中で喋っている様に反響して聴こえる。


『だが、その気配の周りに同胞が居る』

 黒い狼は眼を細めながら言う。


[ホント・・・・それに、ディガースと王の匂いも・・・これは面白い事になっているわね・・・]

 白い狼の頬が吊りあがる。動物でありながら、表情だけで笑っていると判る。

 その姿は異様であった。


 ニ頭の狼は互いを見た後、森の奥深くに走って消えた・・・。










 何時まで走るのだろうか?


 流石の『黒き鎌使い』も少し音をあげていた。


 ここ何時間は走っている。それなのに、周りの景色は変わらない。


 はぁ、もう良いよ・・・疲れた。


 少しどころじゃなく、完全に音をあげている。


 すると、森の中に笛の様な音が響いた。

すると、メアの前を走る狼達がいきなり止まった。


 何だ?ここがゴールか?


 止まった狼達は一斉にメアに視線を向ける。

それは完全に殺意だった。


 一瞬メアは生唾を飲んだ。


 これ程かと。複数とは言え、これ程の殺気はこれまであまり経験無い事だった。


 貴重な体験はメアの好奇心を煽るだけだが、メアは戦いたい気持ちを抑え込んでいた。

今ここでこの狼達に刃を向けると、きっと、あの狼とセンも敵になる。それはあまりにも不利。多分一瞬で肉塊にされるだろう。それだけは回避しないといけない。


 その為、ここは我慢だ・・・。



 すると、後ろから誰かが来る気配がした。一瞬攻撃態勢を取ったが、それが知っている気配だと気付き、警戒を解く。



木々の間から現れたのはセンとディガース。だが、雰囲気は完全に只事ではなかった。


 その異様とも言える雰囲気に、メアは少し恐怖していた。


 凄過ぎるな・・・。これがこの少年か・・・。


 恐怖した事が無いとか、そんな事は言わない。普通に恐怖する。



 メアは自分の事を最強とは思ってはいない。自分より強い奴には普通に恐怖する。だが、それと同時に歓喜する。

 まだ、自分より強い者を殺せると、メアはそうやって生き延びてきた。どんな強者にも屈せず、そして葬って来た。

 殺し屋をしているのも、強い奴に会う確率を上げる為。


 『黒き鎌使い』メア=ナイトメアは戦いでしか自分の価値を見出せない。

その為彼女は戦う。



 だが、今メアの心を襲うのは恐怖だけだった。

 いつもなら湧きあがる歓喜は、これでもかと言うぐらい静まっている。


 そう、『黒き鎌使い』と恐れられる存在のメアが、少年に恐怖している。


 額から尋常じゃない汗が流れている。

 逃げたい。初めての感情。だが、逃げられない。


 少年・・・センはジッと、メアの事を見ている。それは殺意の眼。


 メアは今、自分の認識が甘かったと気付く。


 確かにセンは強い。だが、舐めていた。それはセンが見せた笑顔のせいである。


 あの笑顔のせいで少なからず戦意、敵意が無くなってしまっていた。

この共闘は仲間になると言う意味ではないのに、完全に油断してしまった。


 メアは死を覚悟していた。センが放つ殺気は、周りに居る狼のそれを凌駕している。


 勝てない。死。それがメアの脳内を駆け巡る。


 メアは目を瞑った。


「その覚悟は死に対してか?それとも戦う覚悟か?」


 センが問うてきた。まるでメアの心を読んだ様に。

 だがメアは、それ程驚きはしなかった。


「いや・・・死かな・・・」


 何だろうか・・・。恐怖はある。だが、この少年にならと言う気持ちもある。

実に不思議な気分だ。


「問う」


 センが冷たく問う。

 それにメアは頷くだけ。


「貴様は、我々の敵か否か?」


 貴様・・・。名を呼ばないと言う事は、今の状況ではやはり私は敵か・・・。

 少しショックであった。何故ショックかは解らないが。


 少し間が開く。メアはどう答えようか迷っていた。

何を言っても首を刎ねられそうで・・・。


 メア心で自分に活を入れた。

どうなっても死ぬなら、素直に。


「敵では・・・ない・・・」


 真っ直ぐな瞳。殺意も無く、濁りも無い。綺麗で、美しい黒い瞳。


 センは一度目を瞑り、そして開いた。


 そして、センは満面の笑みを浮かべた。


「ようこそ。メア=ナイトメア。この森へ」


 その笑顔と言葉を聞いて、メアは腰を抜かした。


 まさかこの私が腰を抜かすとは。

 メアは、はっはっはっ・・・と笑った。


 メアは心の中で笑った。

今日一日でどれ程の初体験が有ったか。これは貴重なのだろうか。


 だが、今のメアにはただただ安堵するだけであった。


 すると、ディガースがメアの前へ出る。そして嫌みの様に呟く。


『貴様の様な戦闘狂が、あの様な瞳を持っているとは・・・驚きだ』


 ディガースはそう言い、センを見た。

 センはまだ満面の笑みである。


 先程まで、凄まじい殺気を放っていた人物とは思えない程の、無垢な笑顔だった。


「私は助かった様だな・・・」


 思わずメアは呟いてしまった。


 それを聞き、ディガースは笑った。


『ハッハッハッ!!貴様も普通の人間と同じだな!!』


 馬鹿にされているが、メアは反論する事ができなかった。


 それよりも、メアはセンの顔から目が離せずにいた。


 素直に、センに好意を持っている自分が居る事に、メアは気付いていた。


 圧倒的な力。圧倒的な恐怖。

 この少年は人を惹き付ける何かを持っている。そう感じた。


「では、メア。この森の中心に案内しよう」


 そう言い、センはメアに手を差し伸べた。


 メアは少し顔が赤くなった。不意にも。


 森の中心?今はそんな事はどうでも良い。

メアはセンの手を握った。










   帝国・帝都 ゾーンアレス城






 広い空間。それ以外にこの部屋に対しての感想が浮かばない。


 帝国中心部である帝都。その真ん中に位置する場所に、皇帝の住むゾーンアレス城がある。


「紅蓮騎士団隊長レディア=デニギロと在ろう者が・・・まさか負傷し帰って来るとは」


 負傷と言うか、私には殆ど外傷は無い。あるとしたら・・・。


 だだっ広い部屋。壺やら、絵画などが何点かあるが、それ以外に何もない。

 その部屋の真ん中に、赤い鎧を身に纏った女が立っている。


 帝国特有の金色の目。そして金色の綺麗な髪。


 こんな鎧など着てなければ、美しい女性である。

 だが、真っ赤な鎧がこの女を禍々しい程変化させている。


 レディアは上を見上げた。


 高い位置から私を見下ろしながら、白髪の老人が眉間に皴を寄せながら言う。

 老人など言ったらダメか・・・。軍事部のお偉いさんだ。つまりは上司。


 今回の作戦は見事なまでの失敗。簡単だと言われていたのに、森攻略も出来ず、『黒き鎌使い』まで始末出来ず。

 この上司としても、自分の面目が潰れたと言う事だ。


「まさか貴様とも在ろう者がこんな簡単な作戦に失敗するとは・・・」


 何とでも言え。何十年も戦場にも出ず、その高い所から見下ろす事しか出来ない愚者め。


 私は男が嫌いだ。それと同じで踏ん反り返る者も嫌いだ。自分の権力を行使する事しか出来ない、逆らえば直ぐ死刑などほざく。


 この帝国には貴族が居ない。いや、居たのだけれど現皇帝が今の座を奪う為、革命を起こした。その時、この国に居座っていたゴミとも言える貴族を排除したのだ。


 まぁ、全ての貴族と言う訳ではない。現皇帝に賛同した者は、貴族の名を捨て、今もなおこの国に居る。


 この私の前に居る男も元貴族だ。まぁ、貴族の名を捨てたにしても、結局は何も変わって無いが・・・。


「レディア=デニギロ。貴様はどうする?これから。私もそれ程鬼ではない。一度の失敗で貴様の首を刎ねようとは思わん。で・・・どうする?」


 回りくどい言い方だ。


 私は右手の拳を地面に付け、そして頭を下げる。形だけだが・・・。


「紅蓮騎士団隊長レディア=デニギロ。もう一度この私にチャンスを」


「ふふ・・・良かろう。貴様にもう一度チャンスをやろう・・・」


 何が良かろう、だ。貴様がそう言えと言っていたのではないか・・・。


「はっ。隊長の名に懸け、騎士の仕事を努めたいと思います」


「下がって良い」


「はっ!」


 レディアは立ち上がり、そして軍事部のお偉いさんに背を向け、部屋から出て行った。


 本当を言うと、レディアは別にこの作戦をもう一度やりたいとは思っていない。

思っている事は一つ・・・あの少年だ。私の【終風】を受け、死ななかった唯一の男。


 私のプライドはこれでもかと言うくらいズタズタだった。


「待っていろ・・・少年よ」


 レディアは長い廊下を歩きながら、名も知らない少年に次を誓った。



えぇーまずは説明。黒いゴーストウルフは『』です。白いゴーストウルフは[]です。 特に意味はないです。はい。 次に城の名前ですねぇ~ゾーンアレス城。ゾーンというのは響きだけでつけた。アレスって言うのはギリシャ神話の戦いの神です。別にこの物語りにギリシャ神話関係ないのですが、まぁ、なんとなくです。 そして終風ですね。これはレディアが持っていた短剣の名前です。この短剣は追々説明します。 そして作者の中での一番の問題。メアのキャラ。戦闘狂というキャラは後付けです。何か弱そうな感じになってしまっている。もっと強いのに。まぁ~周りが化け物ということで。 強さ的にはメアが本気出せば小さな小国を簡単に血の海に出来ます。 それにしてもメアのキャラが定まらない。どうしよう。もっとぶっ飛んだキャラにしようと思ってたのに・・・普通だ。 てか・・・主人公センなのに全然セン目線で書いてない。ぶっちゃけ書けない。 今セン目線で書いてしまうと大部分暴露してしまうので。暫くはディガースとメア目線が続きますかな・・・。 まぁ、でも一応主人公はセンです。 長くなりましたが、次もお願いします

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