少年 狼 殺し屋
書きやすい・・・。ふと思う作者。(笑)
【森】の外が騒がしい。
複数の人間の声が聞こえる。
「ディガース」
目線を落とす。その先には黒い狼が一頭居る。
『あちら側は、帝国の方だな。最近よくこの森にちょっかいを出してくる連中だ』
ディガースと呼ばれる狼は、めんどくさそうに言う。
「ここからそう遠くないな・・・」
少年は呟く。
『行くのか?あんな奴等では、この森に傷は与えられないぞ?』
面倒なのか、ディガースが尋ねる。
「いや、人間の中にかなり力を持った奴が居る様な気がするんだ」
少年は眉間に皴を寄せながら言う。
センが言うならそうなのだろう。だが、センがここまで言うのだ。かなりの使い手か?
ディガースは悩んだ。まだ、この子を表に出したくはなかったからだ。
けれども、少年の表情を見て、ディガースは何も言う事ができなかった。
『しょうがない・・・。行くぞ!』
そう言い、ディガースは走り出した。
その後を、少年は追う。
凄いスピードで森の中を駆けて行く。
狼なら可能かもしれないが、それでも凄いスピードである。
けれども、それ以上に驚きなのは、その狼の速さに人間の少年が、遅れを取らず付いて行っている事だ。
この姿を見ると、本当にこの少年は人間なのかを疑う。
『あそこだな』
走り出してから、数分。何十キロある道のりを数分で駆け抜いた。それはもはや異常としか言えない。
ディガースは森の中から、外を見る。
そこには、何十名の兵士が居る。
ディガースの目から見ても、この中に使い手が居る様には見えなかった。どれもこれも三流、二流に見えたが、センは指を指した。
「あそこの赤い鎧を着た一人・・・」
赤い鎧・・・アレか。確かに見た目はやりそうに見える。いや、センが言うのだから、かなりの使い手だろう。
「それに・・・・あそこに居る女・・・」
そう言い、センが次に指した人間は、全身黒の女であった。
『アレがか?』
驚いた。こんな鎧だらけの中、普通の服を着た、女が居るなんて。だが、その女は異常な気を纏っていた。
『なるほど・・・じゃ~他はカスか?』
ディガースが尋ねる。センはコクリと頷く。
『あの二人さえなんとかすれば良いのか・・・』
すると、黒い女がこの森に、一人で入って来た。
『何だ?』
「解らない。でも、他の奴は動かない」
確かに、他の兵士達は黒い女を見ているだけで、一緒に入ろうとはしない。
「先に・・・今入って来た女を・・・」
センが言う。その意見には賛成だ。
『ヨシ。行くぞ』
ディガースとセンは、森の奥に入って行った。
『こんなにも呆気ないとは・・・セン。お前のカンも落ちたな』
ディガースが呆れた様に言う。
「貴様・・・何だ!」
センに押し倒され、喉元にナイフを突き付けられていると言うのに、黒い女は未だに自分の立場を解っていなかった。
「何故、人間がゴーストウルフと共に居る!」
女の問いに、センは眉一つ動かす事はなかった。
「喋れないのか?」
女がセンに尋ねる。
すると、眉一つ動かさなかったセンが、首を横に振った。
「そうか・・・。やられたよ。ゴーストウルフにだけ気が行っていた。まさか他に、しかも人間が居るとは・・・・不覚だ」
そう言い、女は手で自分の目を覆った。
「泣くのか?」
センが尋ねた。
ディガースはヤバいと思った。
『セン!情を移すな!!そいつは敵だ!』
ディガースが言うと、センはディガースの方を見て、首を横に振った。
すると、センは女の上からどき、立ち上がった。
『おい!』
ディガースは怒鳴った。
センが人の涙に弱いのは今に始まった事ではない。やはり、俺がすぐに殺せば良かった・・・。ディガースは悔いた。
「何の真似だ?」
女が尋ねた。すると、センは答えた。
これが、初めて『黒き鎌使い』がセンの声を聞いた瞬間である。
「どうせ、逃げる気だったんだろ?」
第一声は、センの声の綺麗さに驚いたのと、自分の心を読まれた事の、ダブルショックだった。
「お前・・・何者だ?」
『黒き鎌使い』が尋ねる。
「お前じゃない。俺は・・・センだ」
機嫌が悪そうにセンが言う。その言葉と不機嫌そうな顔に、『黒き鎌使い』は間が抜けた様な気がした。
「ハハッ・・・・そうか、そうか。それは悪かった。セン」
名前を言うと、センは微笑んだ。
その微笑みは、さらに『黒き鎌使い』にショックを与えた。
あまりにも可愛過ぎた・・・。もう、この時点で『黒き鎌使い』の戦意は失せていた。
「お前の名は?」
センが問う。
『黒き鎌使い』はいきなり名を聞かれ、一瞬言おうか言わないか悩んだが、行っても実害は無いと思い、答えた
「メア=ナイトメアだ」
メアが自分の名を言うと、またセンは笑った。
「そうか・・・メアか」
この笑顔は卑怯だろ・・・メアは心に思った。
『おい!お二人さん。何を悠長に自己紹介しているんだ?』
ディガースが呆れた様な声で尋ねた。
「ごめん」
センはディガースに謝った。
ディガースはメアを見つめていた。それに耐えられず、メアは聞いた。
「何だ?」
『いや、センが自分の名を言ったと言う事は、貴様を殺さないと言う事だ。だから俺的には、さっさと消えて欲しい訳だが?』
ディガースが言った。その言葉に、メアの眉間に皴が寄る。
メアがディガースに何かを言おうとした時、センが喋った。
「コイツは、ディガース」
ディガースを見ながらメアに言った。
『なっ!?俺の名を教えるな!!こんな人間に!!』
ディガースが怒鳴った。だが、センは笑っている。
ディガースも、この顔には勝てない様だ。一度鼻を鳴らし、赤い明かりに目線を変えた。
『アレは・・・貴様の仲間の仕業だろ?』
ディガースがメアに尋ねる。
「いや、私は金で雇われているだけだ。仲間何て思ってないよ。まぁ~それはあちら様もそうだったがな」
メアが不敵に笑う。
「成程・・・」
センが言う。それにディガースが尋ねる。
『何が成程なんだ?』
センはメアを見て答えた。
「目的は多分二つだろ。この森を焼き払う事と、メアを殺す事」
センの答えは限りなく答えに近かった。
「成程・・・。だから私には詳しい依頼内容がなかったのか・・・。それに、あんな莫大な金だ。あの時点で気付くべきだったな」
メアは腕を組み、頷きながら納得する。
すると、ディガースが鼻で笑いながら言う。
『フンッ!金に目が眩んだのか?これだから人間は』
一瞬メアが不機嫌な顔をしたが、それは直ぐに戻った。
この時メアが考えている事は、どう自分を騙した者達を殺すかであった。
そこで、メアに一つの提案が浮かんだ。
メアはセンに近づき、言った。
「なぁ、セン。協力してくれないか?」
あまり人を頼るのは好きではなかった。大抵の事は自分で出来るし、なにより男が嫌いだからである。けれども、この少年。センには他の男同様の拒絶反応は示さなかった。
拒絶よりも、どちらかと言うと好意すら抱いている。
「協力?」
センが首を傾げる。
「そうだ!協力だ」
すると、ディガースが怒鳴った。
『ダメだ!!こんな女に協力して何の得がある!?』
ディガースの言う事は最もであった。出会ったばかり、しかも敵に協力するのはあまりにも危険で、愚かだからである。
「待ってくれ、ディガース」
センがディガースに言った。
そして、メアに尋ねた。
「確認だ。メア・・・いや、敵として聞く」
センの目の色が変わる。殺す事を何とも思わない者の目。
「何だ?」
メアは脅威した。こんな少年が、私以上の目をするなんて・・・。
「貴様は、あいつ等と仲間ではないのだな?」
「違う」
暫く見つめ合う。すると、センが大きく息を吐いた。
「ヨシッ!協力しよう。メア」
目の色が普通の少年の目に変わった。これだけでも良かったと思う。
「ありがとう。セン」
センはまた、笑顔を見せる。その笑顔を見て、思わずメアも笑ってしまった。自然に、ごく自然に。その事が、メアにとっては赤面する程の驚きであった。
思わず、メアは両手で顔を覆った。
「どうした?」
センが尋ねているが、答える事ができなかった。
『壊れたんじゃないか』
ディガースが言う。
「五月蠅い。狼」
ディガースの言葉で、赤さが引いた。
「で?協力って何だ?」
センがメアに尋ねる。
すると、メアが不敵な笑みを浮かべる。
「簡単な事よ・・・あの連中を潰す」
至極簡単で、至極難しい事でもあった。
だが、センとディガースも不敵に笑みを浮かべた。どうやら賛成の様だ。
二人と一頭は、赤い光を見つめた。
少し雑になってきたか?ふと思う。
確認してないから多分ですが、誤字脱字があると思います。
えぇー今回は、前回の話のセンとディガース視点と言う感じで話が進んで、途中で前回の話の続きに戻ります。
何故こんな感じにしたのかと言うと、あのまま話が進むと、永遠メア視点のまま話が進むと思ったからです。
なので無理やりでもセン視点で書きたかった。一応センが主人公だから。
それにしても・・・全然異世界出てこない・・・・。ヤバイな。
ちゃんと書きますが、そこまで進むのにあとどれ位の話数が要るのか?
悩みの種が一つ増えました。
てか、更新?遅いとか言ってたくせに結構早い感じで更新?した。
ホント、嘘吐きだな・・・・。
ここまで読んでくれた方。ありがとうございます。
次もよろしくお願いします。
それでは・・・