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エピローグ3

 メイ先生に従うまま、やってきたのはグラウンドの片隅。

 子供たちの社交場と言われているこの場所では、今日も自由気ままにドッジボールを楽しむ生徒たちで賑わっていた。


「ごめん遅れちゃった! でもやっぱり謝らないから!!」


 しばらくすると息を切らしたトリートが駆け寄ってきた。


「トリート。オメーのことを思っているからこそ、エレノアと話をした方がいいって言ってあったよな。アタシぐれーになると直感でわかるんだ、ヤツも今、オメーを探している」


「ホント!? どうしてわかるの!!」


「アタシがオメーら姉妹をどれだけ可愛がって気にかけてくれてやってると思ってんだよ。家族以上にお見通しだぜ。そこのフェンスに頭をつけて百まで数えてみろ」


「バカにしないで! やってみる!!」


 いーち、にー、さーん、しー…………絶対騙されているはずなのに素直に従うのが不思議。ボクたちはこっそり近くの木陰に隠れた。


「はちじゅうはち、はちじゅうきゅー……」


「……………………トリート、泣いているの?」


「えっ……お姉ちゃん!!」


 予想より十秒早かったってメイ先生は悔しがっているけど、誰かと競っているわけでもないし手際と計画性には毎回舌を巻いてしまう。


「お姉ちゃん、あの……ごめんなさい!」


 飛びついたトリートを優しく抱きしめるエレノア会長。


「いいの。今まで心に留めておいた秘密がトリートを苦しめてしまったわ。悪いのは私よ。これからはいっぱい、お話ししましょう」


「うん! お姉ちゃん大好き!!」


 大嫌いと叫んで飛び出していった以来の再開。

 しかし仲が悪くなったわけじゃない。互いに姉妹の絆を確かめ合って抱き合うふたりを見ているとボクまで涙腺が緩みそうになった。うらやましくもあり、安堵もする。


「あれ? あの人、マジェニア学園の生徒会長だよ!」


「知ってる知ってる! ブレナード家の人だよね!!」


「ブレナードって、あのブレナード!?」


「アクアトリノの騎士団だぜ!」


「わーっ、すごい!!」


 ドッジボールに夢中だった子供たちがボールを投げ捨てて、エレノア会長を取り囲む。ここにいる子供たちの多くはウィキスタ術科学校で騎士道を学ぶナイトギルドの候補生たちだ。


「私だってブレナード! ふざけないで!!」


 それでも姉の人気と羨望の眼差しはブレることはない。怒鳴り散らして割り込んでも無視されてしまう妹。


「トリート。あなたは今まで以上に精進しなさい。それよりも、ここにいる皆さんやソードギルドの仲間たちに言うべきことがあるでしょう?」


 ここに集まっているのはトリートの振る舞いに嫌気がさしてサボっているソードギルドの子供たち。


「う……あの…………私、急いで強くなりたくて、みんなに迷惑をかけちゃった。だから、その……ごめんなさい!!」


 どれだけギルド内を引っ掻き回して迷惑をかけたとしても、素直になって謝ればすぐに仲直りできるのが子供同士のいいところ。元より剣の才能があるのはみんなも認めていて一目置かれていたし、バカ正直な天真爛漫さが嫌いになれないのはボクも同じだ。


「トリートは……トリート・ブレナードは私の妹なの。皆さん、仲良くしてくださいね」


「はーい!!」


「強いと思ってたけど、すげー家柄じゃんか!」


「俺にも教えてくれよ!」


「今からみんなでギルド行こうぜ!!」


 駆けて行く子供たちをエレノア会長は優しげな表情で見送ると、ボクたちが隠れていた木陰に歩み寄ってきた。

 最初からわかっていたみたいだ。


「メイ先生。昔からずっと、本当にお世話になりました。感謝しても足りないくらいに」


「アタシはオメーもトリートも、カイザーだってずっと、ずーっと気にかけてたからな。手をかけて、手を尽くして、それが報われてアタシも嬉しいぜ……本当に、本当によかったなコノヤロー」


「ありがとうございます。このご恩もまた、必ず」


「おうよ」


 わざとらしく目頭を押さえているけど泣きまねだってわかる。そもそもご恩もまたって表現が…………邪推するのはやめておこう。

 今はこうして、いい結末を迎えられたんだから。


「それとラド。ギルド活動が終える前に講堂に来てもらえるかしら。今日のミーティング、貴方にも聞いて欲しいのよ」


「ん? うん」


 ウィザードギルドの活動に戻っていくエレノア会長の背中を眺めながら、どうしてボクが必要なのか考えてみた。まさか説教されるわけじゃないだろうし、ギルドへの勧誘でもないだろう。


「ヤツもいろいろ吹っ切れたんだろなー。オメーは部外者つっても今回の件は無関係じゃねーし、思うところがあるんだろーよ」


「わかったよ。それにしてもメイ先生ってさ、昔からたくさん世話を焼いてたんだね。エレノア会長だって、トリートだって」


「あたりめーよ。アタシは親切で優しい人間だからな」


「でもやっぱり……………………本音は?」


「ヤツはアクアトリノの名士だろーよ。恩を売りゃもう、アレがコレよ」


 まごうことなき清々しい下心。

 だけどやっぱり素質は世話焼きで親切なんだ。だって家出をしたカイザーに目をかけた時は出自すら知らなかっただろうし、ボクの時だってそうだった。

 だからメイ先生は、いい人なんだ。

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