エピローグ1
「無断外泊だなんて心配したわよ。せめて書き置きくらいしなさい」
クリス先生に頭を叩かれたボクとレナ。
たくさんの花火が打ち上がった建国祭。夜になっても覚めやらない熱気に当てられて、活気づく街の空気に呑まれて遊び過ぎてしまった。ブレナード家の邸宅で一晩お世話になって、そのまま登校したってわけ。
「祭の話は以前から聞いていたし、エレノアと一緒だったってのはメイから聞いていたからね。今回だけは大目に見てあげる」
その前日から泊まりがけで魔獣討伐をしていたなんて言ったら大目玉になってしまうだろうから、素直にゲンコツを受け入れておいた。
「それにしても…………『何か』あったみたいね。帰ったらじっくり教えてもらうわ」
朝のホームルームに遅れるからと、クリス先生はXクラスを飛び出していく。
しかしもうひとりの部外者は急ぐ素振りすら見せなかった。
「貴男の掌、温かいわ。肩を寄せただけでも鼓動を感じます」
「エリー…………お前もクラスに戻れよ」
「私は生徒会長、どうにでもなるわ。しかしその前に私はひとりの生徒であり、そしてひとりの……」
「わーっ、わかった、悪かった、でも授業は真面目に受けよう、な?」
「ようやく帝王学を教え込めると思っていたのだけれど。貴男が仰るなら従います」
カイザーの腕に絡み付いて寄り添っていたエレノア会長は、表情こそ変えなかったけど名残惜しそうにXクラスを出て行った。
明らかに異様な光景なのに、意外にもクラスの誰ひとりとして茶化したり驚いたりしなかった。
カイザーにはエレノア会長との関係を秘密にするよう釘を刺されているから、みんな知らないはずなのに。
「特別な関係だろうってことは気づいてたよ」
ジュディスがボクに耳打ちした。
「顔だけよくてもアレだもの。そもそも最初から私の眼中にあるわけないでしょ」
ジュディアは聞きもしないのに虚勢を張った。
「みんなどうしたんだい? いつもと変わらない光景じゃないか」
ミーシャは途中入学で日が浅いとはいえ、察しが悪すぎる鈍感ぶり。
「いいなぁ。あんなに堂々と密着して見せつけるんだもん。アツアツで、いいなぁ」
レナが言っちゃった。身も蓋もないこと言っちゃった!
「うるせぇおめぇら! 授業だ授業、とっとと勉強しろや!!」
カイザーがキレた。自ら勉強しろなんて言っちゃうあたり、いつもと違うと証明した。
「オメーの方がうっせーんだよ!! ついに情報解禁、脳みそ花畑の浮かれポンチかおめでてーな。昨夜はお楽しみでしたかぁーアァン!? カーッ、たまんねーなオイ!!」
メイ先生は布団から這い出てブチ切れた。叫ぶだけ叫ぶと自習と告げて寝床に戻る。
ここにいるメンバーには秘密も秘密じゃなくなっちゃうんだろうけど……。
大丈夫かな、このクラス。




