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愛のハナシと愛のカタチ5

「えへへ。どうかなラドくん、どう? 似合ってる?」


「浴衣は初めてだが、なるほど涼しげで良いものだ。殿方に喜ばれるのも理解できる」


「急いだ甲斐があったわ。この日を楽しみにしていたのよ」


 そうだ、今日この日はアクアトリノ王国の建国祭だった。

 街は明るく照らされて、通りには大勢の人たちで溢れかえっている。


「ブレナード家のお嬢さんではありませんか。今日は御学友もご一緒ですか。これ、みなさんで召し上がってね」


「エリーちゃんキレイになったわねぇ、一段と艶やかじゃない。差し入れ、持って行って」


「騎士団あっての建国祭、おめでたいことこの上なしってな。ほれ、食った食った!」


 エレノア会長は地元では有名人のようだ。さすが名門、さすが名士のご令嬢といったところ。声をかけてくれる人たちから両手いっぱいの食べ物をわけてもらえるので、ありがたくいただこう。

 たこ焼きにいか焼き、魚の串焼きに焼き鳥、焼きそば。


「焼きモノばっかだけどな」


 朝食以来の食事にありつけるんだから文句なんてあるわけがない。どれも舌鼓を鳴らすには十分な美味しさだ。


「みなさんありがとうございます。今日はフィアンセとデートなんです」


「あらまあ左様ですか! もうそのようなお年頃なんですね、オホホホホ」


 建国祭と合わせて二重におめでたいと、街のみんなが喜んで祝福してくれた。それに比例してカイザーから生気が抜けていく。少しずつ外堀が埋まっていく瞬間を目の当たりにしているんだ。


「は……はは…………ど、どうも……は、ははは…………」


 こんなに弱気で覇気のないカイザーなんて見たことがない。いつもだったら語気を荒げて否定して、問答無用で大暴れしちゃいそうなのに。


「ふふ。ここまでの熱気に当てられてしまうと、少々うらやましく思えてくるな」


「シア隊長、意中の人がいたり!?」


「残念ながら。私は剣と魔法を極めんとする修行の身、私にもどこかに剣の腕が立つ御仁がいればいいのだが」


「主人は渡しませんよ」


「えっと、ラドくんだって!」


 女子が三人集まると姦しいとはよく言ったもので、ボクとカイザーだけじゃ到底太刀打ちなんてできるはずがない。

 ただでさえ、婚約者から主人にランクアップした抜け殻が転がっているんだから。


「カイザー、ラムネ飲む?」


「お、おう…………じゃあこいつ食っとけ、ホタテの……、貝殻は…………ブラ」


「意識をしっかり持ってよ、ねぇ」


 街は灯りに溢れているけどすっかり暗くなっている。想いにふけようと空を見上げた瞬間、一面が明るく輝いた。

 花火だ!

 沖に出た漁船からたくさんの花火が打ち上げられている。今までだって花火は見たことはあるんだけど、こんなに間近で眺めるのは初めてだから言葉が上手く出てこない。


「こんなに、鮮やかで…………、胸がいっぱいで、その…………キレイだよね…………え?」


「ふふ、ありがと。なんてね」


 カイザーに話しかけたつもりだったのに、いつの間にかレナに入れ替わっていた。当の本人はエレノア会長に引きずり込まれて腕を絡めている。いや、絡まれている。


「いいなぁ、あんなに堂々と魅せつけられるの、いいなぁ」


 ボクだってうらやましくて恨めしいとは思うけど、カイザーの未来をボクに置き換えて勝手に妄想したら怖くなってきた。

 騎士として強くならなきゃいけないから、辛く厳しく苦しい鍛錬を積み重ねなきゃいけない。

 家督を継ぐなら人望だって必要だし、何をすればいい? 勉強?

 大人になった将来なんて考えたこともなかったけど、そんな遠い未来の心配よりも先に不安に思うことがある。



 明日から、どんな顔をしてみんなと接するんだろう?

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