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秘密の基地と秘密の鍛錬1

「どこかいい場所、ねーもんかなー」


 マジェニア学園の校舎をくまなく探してみても、理想的な場所なんてどこにもない。

 都合よく簡単に秘密基地なんて作れるわけがないんだ。


「屋上は教室があるからダメだろ。グラウンドなんて校舎から丸見えになるしな。雨露しのげる場所といえば…………トイレか?」


「中に入ってますよって自分からバラしてるだけだよ」


 ボクはラド。マジェニア学園に通う十一歳の男の子。

 担任のメイ先生がサークルを作るなんて言い出したものだから、活動拠点を見つけるために校内を探索していた。


「連れションって言っとけばいいんだよ、んなモン」


「男子と女子じゃおかしいよね!?」


 ドアを開けたらボクとメイ先生が密会していたなんて現場を押さえられたら、きっと人生が終わってしまう。


「うーん。空き教室とか倉庫があればいいのになぁ」


「おっ、倉庫だったらアソコがあるぜ!」


 校舎一階の階段下。デッドスペースになる場所は倉庫になっていて、普段は使われている気配がない。カギがかかったドアノブには埃が積もっていた。


「この程度の解錠なんて朝飯前だぜ。オメーも覚えとけ、コレをこうやって…………」


 カチャン。

 ものの数秒でたやすくカギを開けてしまった。腕前は素晴らしいけど、教師としてはどうなんだろう…………なんてのは思わなくなってきた。


「中は狭いが、まーいいだろ。ちょっと散らかってるけどな」


 採光と換気のための小さな窓には格子が付いていた。木棚には体育祭などの行事で使われる資材が乱雑に詰め込まれている。


「出入りだけ気をつければバラさられることもねーだろ。ま、座れよ」


 埃まみれのパイプ椅子を引っ張り出しただけで身動きが取れないくらいの狭さ。真正面に座るメイ先生とはヒザが当たる距離だし、これはちょっと気まずい。


「にしし。こういうのってワクワクするよな。ジュースとお菓子で快適にしよーぜ」


「教室にあったよね。ボク、取ってくるよ…………って、あれ?」


 内側からドアノブを回してもロックがかかっていて開けられない。解錠が中途半端だったのか、閉じ込められてしまった。


「オイオイ冗談…………ってマジかよーっ!!」


 カギ穴はなく、押しても引いても重い鉄のドアはびくともしない。外側から開けてもらう意外に脱出ができなくなってしまった。


「やっちまったか!? 窓をぶっ壊したところで身体は通らねぇし、壁はコンクリでガチガチだもんな」


「誰か通るのを待って助けを呼ぼうよ」


「それが一番現実的だろーがよー…………お前はそれでいいのか?」


「ふぇ? どういうこと?」


 狭く薄暗い個室で女教師と男子生徒の密会。

 美人教師に欲情した生徒は、無理矢理連れ込んで不埒な真似を…………?


「ないない、絶対ない」


「てめー、真顔で否定すんじゃねー!!」


 ドンドンドンと無心でドアを叩いていると騒ぎに気付いた生徒が駆けつけてくれた。状況を理解して教師を呼んでくれたので、なんとか事なきを得た。


「…………あんたたち何やってんの」


 幸か不幸か、カギを開けてくれたのはクリス先生。

 メイ先生とは学生時代からの同級生でライバルで、お互いいがみ合う関係だ。そしてクリス先生はボクの保護者として一緒に暮らしている。

 だからもっと仲良くしてもらいたいんだけどな。


「カギが開いてたから、珍しくて…………その、見学、見学をしてたんだ」


「昔から壊れてるのよ。ドアを閉めた衝撃で施錠されちゃってね。それよりこんな狭い場所で…………変なことしてないでしょうね」


「へっ、変なことなんてしてないよ! ね、メイ先生」


 衣服に乱れがあるわけじゃない。女教師と男子生徒の逢瀬を勘ぐっているわけでもない。つまり、イタズラしていたと訝しんでいるワケだ。


「アタシぃ~、オコチャマだからよくわからな~い。クリスせんせぇ~い、変なことってナニ? ナニなのか? カーッ、たまんねーなオイ!?」


「バカじゃないあんたバカじゃないの!? ウチの子に変なことしたら本気で承知しないわよバカ!!」


 ナニが何だかわからないけど、メイ先生の脳天にゲンコツを食らわせたクリス先生は頬を赤らめながら走り去っていった。

 容姿も背丈も十一歳のボクと変わらないメイ先生はメイ先生で、お子様扱いされるとブチギレるのに自分から言い出すのはいいの?


「ぐ……うぅ……ここはダメだな。他を当たるぞ」


 心身ともに深い傷を負うくらいなら、最初から止めておけばいいのに。

 気を取り直して校舎を出てみるとグラウンドの隅に小屋を見つけた。物置を兼ねたポンプ室になっていて、地下への階段がある。


「地下水路ってワクワクしねーか? 複雑に入り組んだパイプが目隠しになるよな。いい感じに人目につかない場所をご無礼しよーぜ!」


 メイ先生のテンションが上がるスイッチがよくわからない。

 まるでボクくらいの男子のようなはしゃぎっぷりで、少なくとも教師の発言じゃないと思うんだ。


「いい感じの広い狭さだな。ここにすっぜ」


 広い狭さって意味がわからないけど素直に従っておこう。こじらせると面倒だし。


「改めて今後の活動方針について話でもすっか」


 思いつきで立ち上げたサークルで、話し合いをするほどのことってなんだろう。


「そもそもサークル名って決まってるの?」


「おう、既に決まってんぜ。MCSってな。メイ様の、キューティな、サーバントだ!!」


「サーバント…………って。ボク、召使い!?」


「イヤならスレイブでもいいんだぜ」


「奴隷はもっとイヤだなぁ」


 もうわけわかんない。なすがまま流されるしかないんだろうな。


「でだ。すでに抱えてるクエストがあんだわ。手伝ってくれ」


「急だね。わかったよ、メイ先生は恩師なんだから」


「そうか。オメーはキューティでホントいいヤツだな。アタシもキューティだけどな。いいか、これからは集合する時に…………そうだな、教室に緑のハンカチを掲げておく。ここに集合する合図だ、忘れんなよ」


 キューティってずる賢いっていう意味もあるんだけど、まさかね。


「同じ教室で一緒にいて授業してるのに、わざわざ必要なの?」


「ちょっとしたところから合図やら暗号に慣れていくもんだ。この業界じゃ基礎中の基礎だから覚えとけ。週明けから本格的に始動すっからな」


 この業界ってなんなの? やっぱりわけわかんない。

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