仇討ちと手配魔獣8
ドラゴシャークは十年周期で大量発生するという。
山間部でもこの地帯、限られた場所でしか棲息していないものの、一度発生すると周囲の生き物を根絶やしにするんだそうだ。
「奴らが引き返していくぞ。暫く猶予があるってこった」
「どういうこと?」
「今のところエサが残ってるんだろう、実の母親ってのがな。それを食い尽くした時は…………あたり一面、あのサイズの軍隊アリが蔓延る地獄絵図になるぜ」
「それって、国が滅ぶレベルでヤバくない!?」
「実際滅んでんだよ。ここもな」
自然豊かな土地なのに人が住んでいない理由が見えてきた。住めないんだ。
「作戦会議を始めるぞ。レナを叩き起こしとけ、どうせ今回も『アレ』頼りなんだろ?」
とてもじゃないけど一匹ずつ倒す方法なんて通用しない。だからメイ先生はレナにも声をかけたんだ。でも、どうすればいいだろう。
というかこんな危険なクエストを任せるメイ先生って無茶振りすぎない?
「何か弱点はないだろうか。火に弱いとかあり得そうだが」
「水が苦手ということは判明している。川を越えられねぇから、下流にある今の街まで被害が広がることはねぇ」
今の街なんて表現をするところにカイザーの憤りを感じた。シャークなんて名前のくせに泳げないのも皮肉な話。
「みんなおはよー。今日は変わった組み合わせだね。水だったら目の前に大きな湖があるよー?」
「まだ脳みそ寝てんのかよ。苦手なモンに飛び込むバカはいねぇだろ」
「貴男! せっかくの意見にその言い方はないでしょう」
「う、うっせぇな。言葉のアヤだ」
改めてカイザーとエレノア会長のやりとりを目の当たりにしても、主従関係とか脅迫、洗脳なんてものがあるとは思えない。
もちろんボクは最初から信じていたんだけど、レティシアの目にはどう映っているんだろう。
「ふむ……。それは良い案かもしれぬぞ」
レティシアの考えはこうだ。
集落は崖に挟まれているので、入口を塞いでしまえば身動きが取れなくなる。あとは餓死するのを待つのもよし、少しずつ仕留めるのもよし。
「あのよぉ……その方法で根絶やしにするまで何日かけるつもりだよ」
「少なくとも被害の拡大は防げると思うのだが」
「そんなことなら、もっと手っ取り早いやり方があんだろうが」
カイザーの考えはこうだ。
湖から水を引いて巣穴に流し込む。交戦するリスクを追うことなく、水攻めで逃げ道を塞がれたドラゴシャークを確実に根絶やしにできる。
「ねぇカイザー。シンプルに…………それだけ?」
「巣穴っつったら地下になんだろうが。水は低いところに流れるんだ、わかるか?」
「貴男、湖はここより低い位置にあるのよ?」
「目の前にいくらでもあるんだ。水の魔法が得意のエリーならどうにかなるだろ……」
「ならないわ。巣穴を水没させるほどの能力なんて持ち合わせていないもの。せいぜいバケツリレー程度ね」
「あのぅ…………みなさーん。あたしだったらできる、かも?」
「レナ、君は水の魔法を使えるわけでは……いや、私もとやかく言えぬが」
「そうね、そうだわ。私たちにはレナがいるじゃない」
エレノア会長の考えはこうだ。
レナお得意のメテオの魔法で巣穴ごと押しつぶす。
「臭いモノにフタをするだけではないか」
「今までの意見で…………一番最低だぞお前…………」
「会長さん、違うよぉ」
「……………………そう」
レナの考えはこうだ。
湖にメテオを落として大波を発生させる。集落ごと水に浸かってしまうが短時間で大量の水を巣穴に流し込める。
「なんだろう、一番現実的に思えてきたぜ」
「集落の水はいずれ引くでしょうから問題なさそうね」
「待ってくれ。メテオとは、レナ、どういうことなのだ?」
「そうか、シアはレナの秘密を知らなかったんだな。楽しみにしとけ」
「う? うむ…………」
「私の考えは浅はかだったわ。この方法で根絶できそうね」
「レナ、お前イケるか?」
「えっへん。まかせて」
「貴男、女の子にお前なんて言っては駄目」
「今はそんな……お、おう」
今さらすぎてカイザーの口の悪さなんて慣れているしメイ先生だって似た者同士。他人から説教された時は怒号で反論するタイプなのに、エレノア会長には頭が上がらない?
これが、愛の力なんだ。
「お前、何をニヤついてやがる。ざけんなシメんぞコラ」
「貴男?」
「ちっ、うっせぇな」
やっぱり。
手籠めにされてるなんてウソだ。主従関係だというならむしろカイザーの方が尻に敷かれている感じ。トリートの言い分とは程遠いことに安心したし、今後は大いに利用させてもらおう。
「ラド、お前覚えとけよ」




