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護衛


昨日注意されたばかりなので、さすがに一人で行動しづらい。

しかしお手洗いはいいだろう。


オーウェンが部屋を出た後、一人で手洗いに向かう。

そのついでに少し遠回りをして、一人の時間を長くする。


そういえばルーナたちは王子に名前を呼ばれていたな、褒められていたし。

なんだか羨ましい。私も王子に名前を呼ばれたい。


などと考え事をしながら、いつも通らない廊下を歩いていた時だった。


「うわっ」

曲がり角から人が現れる。

ぶつかりそうになった相手が声を発する。

お腹から出たようなしっかりした発声で、こちらも驚き、慌てる。


後ろに下がろうとしたら、ドレスの裾を踏み、滑りそうになる。

「危ない!」

相手がさっと手を差し伸べ、体を支えてくれる。


「ご、ごめんなさい。ありがとうございます」

ぺこぺこと頭を下げる。

「いや、俺も不注意でしたから…ってリーゼ様?!」

相手も頭を下げかけ、私の顔を凝視し声をあげる。


「あ、はい。えっとあなたは…」

恐る恐る尋ねると、相手は私の顔を見たまま固まっている。


身長はそう高くないが、筋肉のついたがっしりとした体つきをしている。

鍛えている様子だ。騎士団の人だろうか。


先程の呼びかけに返事がない。

「あの…」

どうしたらいいかわからず、ためらいがちにもう一度呼びかける。


すると向こうは赤毛の短い髪をぷるぷると頭ごと振る。

「すいません。あまりにお綺麗で!」

ストレートな言葉にこちらもつい固まってしまう。


「あ、いや王子様の奥様にすいません。俺、ギルバート王子に憧れてて!いつも冷静で剣もうまくて、とにかくかっこよくて!」

焦りからか相手が早口に語る。

その様子を見て思わず、少し笑ってしまった。


王子は剣も強いのか。

悪魔の子と恐れられていると思っていたが、意外とこの人のように憧れている人もいるのかもしれない。

そのことにも嬉しくなる。


「申し遅れました、私の名前はハリーです。王宮騎士団に属しています」

赤毛の彼が居住まいを正し、敬礼をする。

やはり騎士団だったか。


「は!そろそろ訓練に戻らないと!リーゼ様、またいつか!」

ぺこりと頭を下げると、ハリーは慌ただしく去っていく。


その姿を見送り、自分もハッとする。

お手洗いにしては長過ぎる、早く部屋に戻らなければ。

そそくさと廊下を後にした。




その日の夜、王子と寝ようとしていたら声をかけられた。

「お前の新たな護衛を探す」

「護衛ですか?」


昨日、マリアンヌとロルフに会ったせいだろうか。

守ってくれるのはありがたいが、護衛の数が増えるとますます一人の時間がなくなる。

内心でしょんぼりする。


「オーウェンを元の仕事に戻す。お前専属の護衛をつける」

そう言われてみればオーウェンがずっと付いてくれていたが、オーウェンは元々王子付きである。


「そうですよね、ずっとすいません」

「いや、それは構わん。しかし信頼できる者をどのみち増やしておくべきだからな」

申し訳なさに縮こまると、王子が特に気を遣う風でもなく、言う。


「そこでお前の力で、騎士団から信頼できる者を一人探してほしい」

「わ、私ですか?!」

てっきりもう決まっていると思っていたので驚く。


「ああ。お前付きだから、お前が選んだ方がいいだろう。もちろん候補者はこちらも調べるが」

そうだ、そもそもこういうことのために力が必要だと言われていたし、王子は忙しいのだ。

私の護衛選びに本来拘っている場合ではないだろう。


不安はあるもののうなずく。

「頑張ります」

「何かあれば相談しろ。騎士団のメンバーなど一人も知らないから、難しいだろう」

王子の言葉でふと一人の姿が頭に思い浮かぶ。


そう言えば昼間に会ったハリーは騎士団と言っていた。

明るい性格のようだし、王子に憧れていると言っていたのでいいかもしれない。


とりあえず手始めに彼についてルーナたちに聞いてみよう。

そう決意を固めた。



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