【番外編】リーゼとギルバード
純白のドレスを着て、扉を開ける。
「わぁ!きれい!」
「お母様、精霊みたい」
子供たちが駆け寄ってくる。
ギルバードと結婚して10年が経った。
ギルバードは30歳を迎え、自分は28歳になった。
今は三人の子供に恵まれ、日々をにぎやかに過ごしている。
子供たちの後ろから、ギルバードが現れる。
「リーゼは10年経って、ますます綺麗になったな」
恥ずかしげもなく、そういうと、私の頬を撫でる。
「ギル様こそ、いつまでもかっこいいです」
最近は結婚したころより、雰囲気はやわらかくなったが、凛々しさは年々増している気がする。
ギルバードの純白のタキシード姿に目を細める。
「ああっ!またお父様たちイチャイチャしている」
今年9歳になる長女のウィンディがぴょこぴょこ跳ねる。
「いちゃいちゃ~」
末っ子の3歳の娘であるフィールも姉を真似して言う。
「いつものことじゃん」
と最近大人びてきた6歳のアルバードは笑う。
それぞれにギルバードに似ているところがあってかわいらしい。
そういうと、ギルバードはお前に似ているんだというけれど。
「もう聞き飽きられたでしょうけど、本当にお美しいです」
私の姿を見て、目を潤ませるのはセシルだ。
セシルとオーウェンは結婚した後も、変わらず、私たちのそばで働いてくれている。
たまにセシルは産休や育休でいなかったが、10年経っても、私やギルバードにとって二人はかけがえのない友人でもあった。
「素敵よ、リーゼ」
姉が微笑む。
その後ろには姉の家族、そしてお父様とお母様、実家でお世話をしてくれていたソフィもいる。
『リーゼ、最高だね』
頭上からはルーナ、ウィリアム、アンナが声をかけてくれる。
「さぁ、始めますか」
ハリーの呼びかけで、私とギルバード以外の全員が席に座る。
子供たちの隣にはアドルフが腰かける。
実はギルバードがずっと儀礼的に済ませた結婚式のことを気にしてくれていた。
そこで結婚して10年の節目に、周りの人たちへの感謝も込めて、親しい人だけでささやかな式を行うことにしたのだ。
私の地元にある小さな教会で、ギルバードと向かい合う。
「私、ギル様と結婚できて本当に幸せです」
「ああ、俺も。リーゼと結婚してから毎日が幸福だ」
ギルバードが一歩私に近づく。
そしてベールをそっと後ろに回す。
「リーゼ、世界で一番愛している。これからもずっと」
耳元に唇を寄せ、ギルバードがつぶやく。
綺麗だとよく言ってくれるし、いつも行動で愛を示してくれるからなんの文句もない。
しかしそんなギルバードがなぜか、好きや愛しているは恥ずかしそうに、本当にたまに言ってくれるのがこそばゆくて、特別でうれしい。
「私もギル様を誰よりも愛しています。これからもずっと」
見つめ合って唇を重ねる。
ルーナたちの風で教会の鐘の音が鳴る。
あたたかい拍手に包まれて、私たちは微笑み合った。
~リーゼとギルバード編fin~




