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第0話 ボーン・イン・ザ・異世界

 おぎゃあ、という声が聞こえる。どこから? 周りを見回す。ぼやけて何も見えない。泣き声はまだ聞こえる。どこだ、うるさい赤ん坊は。俺がイラつくと、余計に泣き声は大きくなる。まるで、俺のイラつきが分かっているかのように。


 まてよ、おれのイラつきが分かる? 俺の感情は俺にしか分からない。分かってたまるものか。もしかして、エスパー?


 いや違う、分かってしまった。この泣き声は俺だ。その証拠に、生温かいお湯につけられている感覚がする。それからやわらかい毛布に包まれて、誰かに抱かれる。俺が、赤ん坊だ。


 俺は、手の届く範囲を触って確かめようとした。やわらかい肌、さらさらの布、俺の目、鼻、口、それから……、耳? いや、何かおかしい。俺の知っている耳ではない。まだ手の感覚が未発達でよくわからない。でも、俺の知っている耳よりも長くて……。


 しばらくして分かったこと。その1、俺は生まれ変わったらしい。その2、俺は人間ではないらしい。そして最後に、ここは地球ではないらしい。この3つ。


 では俺はなにで、ここはどこであるか。俺の知っている言葉で説明するならば、俺は人間ではなく、エルフだ。そうなると、俺が今いる場所、俺が生まれ変わった場所、その答えも自ずと決まってくる。そう、ファンタジーの異世界だ。


 異世界って、トラックに轢かれて行くもんじゃなかったのか? 俺、自殺だぜ? 地獄じゃなくていいの? それとも、ここが地獄ってわけか?


 いろいろなことが分かってきたのは生後数か月ほど経ってからだ。それまでは、視界がはっきりしなくて何がなんだか分からないまま、親と思しき人物にされるがままに生きていた。トイレすらままならなくて、汚れた布や陰部の掃除をしてもらわなくてはならないというのは、なかなか屈辱的な体験だ。そういうプレイだと思えば楽しめたのかもしれないが、俺がそんなに能天気な人間なら自殺なんてしてないんだ。今はそもそも人間ですらないのだが。


 けれども、エルフに転生というのは異世界転生としてなかなかにアタリではないだろうか。エルフは迫害されている種族、みたいな嫌な設定はなさそうだということはすでに分かっている。


 俺が育てられているのは、いろいろな種族が住む都市部らしい。人間に、犬や猫の頭をした獣人、背の低いドワーフ、そしてわれらがエルフなどなど。みんな平和そうに暮らしていた。


 街には近代ヨーロッパ風の趣のある建物がずらーっと並んでいる。そして、それぞれの建物の背も高い。ほとんどの建物が10階くらいはあるんじゃなかろうか。文明も進んでいるし、かなり栄えた街である。


 そして俺が住んでいる家は、父母子の3人で住むには申し分のない広さのアパートの一室だ。中心部からは少し離れた場所にあるようだが、こんな大都市にまともな住居を構えられるのだから、ある程度裕福な家庭とみていいだろう。親ガチャも経済面では易々クリアだ。


 俺は新しい人生への期待で胸を高鳴らしていた。俺は昔から新しい環境が大好きだ。何かこれまでとは違う、面白いことが起こるのではないかとわくわくする。今がまさに、その最大の転換点である。なにせ、生まれ変わって、その上異世界にやってきたのだ! 


 この世界なら俺でも退屈せずに生きていけるのではないか。そう思っていた。しばらくのあいだは……


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