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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
9章 歯車を止める氷
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48話 姉から妹へ

アイシクルの先代の女王と王配は若くして亡くなっている。理由はわからないけど、氷の塔でグレイシャー公が言った言葉が僕の中で繋がる。


氷花の実験の土台となる部分を命を懸けて作り上げたと言っていたのだ。



「もしかして、氷花の実験はかなり前から進められていたのですか?」


「私が知らないところで実行していたみたいです。私は幼い時から雪の女神の後継者の器を持っていました。だからあえて言わなかったのでしょう。氷花はアイシクルの宝であり、雪の女神はアイシクルの女王よりも上の存在ですから」


「……何故、震えているのですか?」


「もうダイヤとは分かり合えないかもしれないって、思ってしまいました…」


「そんなことありません!」


「イグニ?」



声が震え始める雪女様を見て僕は居ても立っても居られなかった。再び繋がれた手を引き寄せて、雪女様を僕の腕の中に閉じ込める。そして言い聞かせるように耳に口を近づけた。



「神と王は手を取り合って平和へと導く存在です。本当は雪女様の言葉を否定したくはありませんが、分かり合えないという考えは間違っています」


「っ…」


「まだ手を取り合ってなかったのです。ただそれだけです。だから僕と手を取り合う前に女王と……妹の手を取ってあげてください」


「本当、貴方はどっちの味方なんですか?」


「ヒートヘイズとアイシクルどっちも好きなので」


「前代未聞ですよ」


「上等です」


「そういうところ、尊敬します」



やっと雪女様が笑顔を見せてくれた。ホッと胸を撫で下ろす。やはり好きな人は笑顔でなくては。


僕は腕で閉じ込めていた雪女様を解放すると、彼女の目は迷いがなくなったような色をしていた。



「最後に聞かせてください」


「はい」


「イグニが好きな雪女が居なくなって、ただのフロスという存在になったどうしますか?」


「要らない質問ですね。僕はフロスが好きです。今度は氷の塔ではなく、僕の方に導きます」


「…わかりました」



微笑みながら僕から離れる雪女様はまた氷柱に近づいて手を当てる。そして額を氷につけて中にいる人物に優しい声で話しかけた。



「まず、謝らせてください。私はダイヤの全てを見てあげられなかった。お母様とお父様の理想をダイヤ1人に背負わせてしまった。姉として失格です。本当にごめんなさい」



今、雪女様は雪の女神フロスとして語っていない。何処にでもいる人間、そしてダイヤの姉として言葉を紡いでいた。



「私は何よりもたった1人の家族のダイヤが大切です。だからヒートヘイズに肩入れするなんてあり得ない。私はアイシクルとダイヤが大好きなんですよ?でも、言葉にしなかったからこうなってしまったのですね。ちゃんと自覚し反省しています」



僕は白い息を吐きながらダイヤとフロスを見守る。ここではただの部外者だ。邪魔なんてしないし、他の奴らに邪魔もさせない。


雪女様は氷柱の中にいるダイヤだけを見て抱きしめるように腕を広げた。



「私はたぶん、もう雪の女神では居られなくなります。そうしたらダイヤの側にいれますね。貴方が望むなら、私は誰のものにもなりません。勝手なわがままだけど…きっとあの人なら理解してくれます」



小さくなっていく言葉はダイヤにしか聞こえない。雪女様は深呼吸をして手に氷の力を込めた。



「溶けていく…」



まるで雪女様に吸収されるかのように氷柱が消えていく。やはり神の力は不思議だ。アイシクルの王族が立てた氷花は雪の女神を超えるという仮説は見事に崩れ去る。やはり雪と氷を支配するのは神だけだった。



「うっ」


「雪女様!?」



しかし途中で氷柱の吸収が止まる。雪女様の足はふらついてその場に膝をつけてしまった。僕はそっちに向かおうとするけど、雪女様が来るなと手を向けてくる。


その手にはびっしりと霜が付いていてた。もしかして僕の炎に触れたことによって氷の耐性も弱くなってしまったのだろうか?雪の女神の力も失いつつあるということは人間に戻ることと同じ。


でも今この状態で氷を吸収し続ければ雪女様の体まで凍てついてしまう。しかし諦めるつもりはない雪女様は手をまた氷柱に当てて吸収を始めた。



「どうすれば…」



僕を止めた時のように声を出せば雪女様には届くだろう。しかしそれが伝わる可能性は低い。だって雪女様が諦めたら他に助ける手段が無くなってしまうのだ。


1夜で戦争を終わらせるためには早く女王ダイヤをここから出さなければならない。それにヒダカ達も居るのだ。でも僕はもう炎を使えない。ならばどうする?



「っ、父上!」



あの人しかいない。僕も雪女様もダメだ。女王だってヒダカやヒメナ、フレイヤだって動けない。


となると残るは焔の神。でもこの場所から炎の祠へ向かうのは遠かった。焔の神とヒートヘイズ新国王の僕は意思通じなんて出来ないし…。



「フェニックス…フェニックス…」



ならばフェニックスをこちらに誘き寄せるか?でもどうやって?



「フェニックス、フェニックス、フェニ?……そういえば伝承で」



僕は自分の顎に手を当てて神獣が載っている伝承を思い出す。手書きの本を作るときに沢山調べたので頭の中には残っているはずだ。



『フェニックスは寿命が来ると自ら火に飛び込む』



その一説が僕の頭に浮かんだ瞬間、行動を開始した。


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