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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
8章 炎と氷が交わる地獄
39/53

39話 逃亡の炎王子

ヒートヘイズには古き時代から存在する聖なる石がある。その名も火石ひせき


火を宿すとされた石の中身は熱が含まれていて削って少量使えばカイロとなるし、火を起こせない時の着火剤としても使える。そんな火石を使ったの爆弾が僕を助けてくれた。



「イグニ様!ご無事ですか!?」


「兄貴火石のカイロ大量に持ってきた!」


「ここは私達にお任せください。イグニ王子は体を温めて」



火石の爆弾を投げつけたのは従者であるヒダカ、ヒメナ。そして騎士団長のフレイヤだった。


女王と対立している時に急いで走ってくる3人の姿が見えた僕は、少しでも時間を稼げるように話を無理矢理続けた。


その結果、女王は火石の熱によって体を支える足がおぼつかなくなる。それに追い打ちをかけるように火山からフェニックスの炎が降り注いだ。



「ヒメナさんはイグニ王子に着いてください。ヒダカさんは私のサポートを」


「わかりました。フレイヤ様」 


「イグニ様、もう安心して!すぐに霜と氷を溶かすからね!」



ヒメナに支えられる僕は火石の力で体が温まっていく。大量に持ってきてくれたのでこれならば元の状態にまで戻れるはずだ。


そんな僕の前ではフレイヤが剣を抜いて女王に威嚇する。しかし女王はまたあの液体を飲み干してアイスマンを形成した。


フレイヤは疾風のように動いて一瞬で出てきたアイスマンを粉々にする。ヒダカのサポートは要らないのでは?と思ってしまうくらいフレイヤは強かった。



「ヒメナ、ヒートヘイズの様子は…?」


「大丈夫。まだアイシクルの奴らは入ってないよ。砦とあのフェニックスのお陰でね」


「なぜ僕がここに居るとわかった?」


「砦がブリザードの攻撃を受けたと伝達の騎士が来たんです。その騎士が途中でイグニ様と別れたとワタクシとヒメナに教えてくれました。直後、フレイヤ様が慌てた様子で地下避難所に来てワタクシ達の力を貸してほしいとここに連れてきたのです」



ヒダカは説明しながらフレイヤが捌ききれないアイスマンに爆弾を投げつける。徐々に体の震えも止まった僕は3人に感謝しきれないほどの恩を受けてしまったなと微笑んだ。


でもそれとは逆に険悪なオーラを出しながら戦っているのがフレイヤと女王だ。やはり僕と同じようにアイスマンに阻まれてフレイヤも女王へ近づけない。


時折フェニックスの炎が舞い落ちるけど、それでも女王はアイスマンを次々に生み出した。



「ヒダカさん!」


「はい!」



フレイヤの掛け声でヒダカは爆弾を投げつけるが女王には当たらない。やはり先程のように不意打ちでないと効かないのか…。



「イグニ様どうする…!?」


「このままじゃ、こちらの体力が底をついてしまう」


「一斉にかかりますか?」


「………」



女王は会話では止められない。力で押さえつけるしか方法がない。そう父上は言っていた。


確かにこいつは僕の言葉に聞く耳を持たないだろう。でも僕以外の言葉だったら?


少し言葉を交わしてわかったけど、女王は結構シスコンだ。雪女様の話をする時は他の時よりも声が大きくなっていた。



『静かなる王女と呼ばれていたフロスお姉様は貴方のせいで感情を植え付けさせられ、敵国であるヒートヘイズに慈愛を寄せるようになったのよ!』



女王の言う通りなら雪女様はこの戦争を良く思っていない。手を貸してくれる可能性は…ある。



「ヒダカ、ヒメナ聞いてくれ」


「「イグニ様…」」


「今から僕は氷の塔に向かう。雪女様に力を貸してもらうんだ」


「な、何言ってるの?だってあの人はアイシクルの…」


「雪女様はアイシクル側につかない。だって未来の僕のお嫁さんだからな」



この状況に相応しくない笑顔を見せるとヒダカはため息をつき、ヒメナは面白そうに目を輝かせる。



「はぁ……。では今から爆弾を大量に投げつけるので爆発した隙に走ってください。全速力以上で走らないと捕まりますよ」


「兄貴、カイロも投げて良い?」


「許可します」


「ありがとう。2人とも」



僕が立ち上がるとアイスマンを操る女王がこちらに目を向ける。ヒダカがフレイヤの名前を呼んだ瞬間、火石の爆弾が辺りに暴れ狂う熱風を与えた。


すぐに僕は氷の塔の方向へと走り出す。途中で馬を捕まえれれば良いのだけど、その期待はしないでおこう。


氷の塔はアイシクルが攻めている砦よりも離れている。アイスマンが騎士やフェニックスに気を取られていれば難なく行けるはずだ。後は僕の足を壊すかのように動かすだけ。これで壊れても構わない。



「今参ります!雪女様!!」



僕を鼓舞するかのようにフェニックスは炎を吐き出す。今が夜なのだと忘れてしまうくらいにヒートヘイズの夜空は明るく輝いていた。

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