38話 3人の火の子達
「はぁ……。全くとんでもないことをしてくれたものですわ」
「それはこっちのセリフだ。ヒートヘイズを侵略して何をするつもりだ?」
「内緒」
「可愛い子ぶるな。お前がどんな大義を理由にしようと、人を傷つける行為は許されない。ここで拘束させてもらう」
「殺さないのかしら?」
「殺す考えは僕にはない」
「そういう甘ったるい考えが、悲劇を生むのですよ」
女王は次々にアイスマンを出してくる。一度に10数体を出せるようで僕を囲むように迫ってきた。
「ヒートヘイズの王子イグニを殺しなさい!」
その命令に従うようにアイスマンは僕に向かって走り出してくる。僕は手に炎を宿し、回転するように体を動かせばその熱がアイスマンに伝わり行動が止まる。
その隙に父上から借りた剣で叩きつければバラバラになったアイスマンが高い気温によって溶け出してくれた。しかし女王は僕に休ませる暇もなく次のアイスマンを形成する。
「キリがないな…」
フェニックスの炎を2回見て理解した。たぶんあれは炎を溜めるのに時間を必要とするのだ。それとは逆に女王がアイスマンを形成する時に使う時間は短い。
立て続けに出されてしまえば僕が操る炎の力が先に枯れてしまうだろう。粘って勝ちの作戦は出来なそうだ。
だからと言って決着をつけようとしてもアイスマンが邪魔して本体である女王に近づけない。その間にもまた体に霜が付き始める。
「さっきの威勢はどうしたんですの?」
「ベラベラ喋るよりも静かに戦った方がかっこいいと思ってね」
「かっこいいもクソもありませんわよ」
「お前にかっこいいって言われたくてやってるんじゃない。僕は心に決めた人が居るんだ」
「へぇ…」
僕がそう言った時、女王の目の色が変わった気がした。するとアイスマンを相手にする僕の視界から女王が何かを飲んだのが見える。
出された分のアイスマンを颯爽と粉々にして女王を拘束しようと走り出すが、懐に入ることは叶わなかった。
「なっ…!」
地面から氷が突き出たと思えば生きたように僕に絡みつく。あっという間に身動きが取れなくなってしまって僕が拘束されてしまった。
「アハハッ!無様な姿ですこと!」
バカにするように女王は笑って僕を見下す。炎の力を腕に込めるけど氷の冷たさにかき消されてしまった。霜も首を伝って顔にまで出来てくる。とてつもなく寒い。口まで震えそうだ。
「あー面白い。この姿をフロスお姉様が見たらどう思うのかしらねぇ?」
「……」
やっと今確信を得れた。やはり女王は雪女様の妹か。雪女様が雪の女神になったとヒートヘイズに知らせが来た時からそこまで長い年は経ってない。
雪の女神になる条件と、過去に会った年齢を解いていけばこいつが妹だということに間違いはないだろう。
「イグニ、私は貴方を許さない。貴方がフロスお姉様を変えてしまった。静かなる王女と呼ばれていたフロスお姉様は貴方のせいで感情を植え付けさせられ、敵国であるヒートヘイズに慈愛を寄せるようになったのよ!」
「それは被害妄想じゃないのか?」
「黙りなさいイグニ!貴方がフロスお姉様を洗脳させた!陥れてアイシクルを略奪するために!」
本当に被害妄想だ。僕は呆れたようにため息をつくけどその息が真っ白になっているのがわかる。このままでは体の外側も内側も凍ってしまう。
火山のフェニックスはまだ炎を溜めていた。向こう側に見える砦は熱を与えるため、篝火に薪を更にくべたようで目印のように燃え上がっている。それでもアイスマンの攻撃に耐えるため騎士達が立ち向かっているようだった。
「……1人では無理じゃないですか。父上」
「何をぶつぶつ言ってるのかしら?遂に冷たさでおかしくなって幻覚でも見ているの?そこにフロスお姉様が居ると良いですわね!?」
女王の口は熱くなっているのに僕に纏わりつく氷は冷たいままだ。僕の体も悲鳴を上げ始めている。そろそろ限界かもしれない。
「お前の姉は今どうしている?」
「死ぬ前の質問?それを聞いて貴方は死にたいのかしら?」
「死ぬ?僕が?何を戯言を話している。僕はお前から姉を奪えていないのだぞ?このまま死ねるか」
「バカが…」
「ああ゛っ!」
僕の答えにイラついたのか女王はより氷を冷たくさせ締めつける。寒さと苦しさが同時にきて壊れそうだった。
それでも僕は女王に笑みを浮かべる。それは「バカはどっちだ?」と言わんばかりの笑いだった。
「姉妹でここまでも違うんだな。…ぐっ。…お前の姉はとても優しくて綺麗な人だ。それは心も体も。しかしお前はどちらも汚れている!月とスッポンだな!」
「イグニ……!!」
「僕は何度も雪女様に名前を呼ばれた。でも不思議だ。お前に名前を呼ばれるとヘドが出そうになる」
ヤケクソのように僕は声を出す。女王は僕にバカにされたことで顔を真っ赤にしていた。
雪女様が顔を真っ赤にした時は可愛かったけど、こいつの場合は面白くて仕方ない。女王は更に氷の力を込めようとしたその時…
「「「お待たせしました」」」
「遅いぞ」
花火が打ち上がるような音がしたと思えば僕と女王の周りに火が落ちてくる。それは生み出したアイスマンと僕を拘束していた氷を爆発させるかのように弾け飛んだ。




