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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
8章 炎と氷が交わる地獄
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37話 フェニックス

夜なのに昼間のように明るくなる。たぶん外に出ている誰もがヒートヘイズの火山を瞳に映しただろう。



「父上…」



僕と騎士は馬を止めて火山の頂上を見上げる。噴火した溶岩は不思議なことに下に落ちることなく上へ上へと昇り、形を成していった。



「あれは神獣フェニックス!?」



伝達の騎士が驚いた声を出す。その通りだった。


溶岩は瞬く間に鳥の形になり羽ばたくように翼を動かし始める。その姿はヒートヘイズに伝わる神獣の1匹、フェニックスのよう。


フェニックスは鳥の鳴き声のように炎を吐き出すとアイシクル領から侵入してきたブリザードを一瞬で消し去る。


見えなくなってしまった砦も、炎の明るさとブリザードの消滅によってハッキリと見えるようになった。



「お前はすぐにヒートヘイズへ戻り伝達を。絶対に民や従者達を外に出すな」


「イグニ様は…」


「僕はここで様子を見る」


「ダメです!フレイヤ様の言う通り貴方はヒートヘイズの王子。もしも外で何かあったらそれこそ希望を失ってしまいます!」


「大丈夫だ」


「イグニ様!」


「僕を信じてくれ」



強い眼差しで騎士を見れば言葉を失ったように口をモゴモゴと動かす。もう僕の決意は揺るがないとわかったのが渋い顔をしながら頷いて颯爽と馬を走らせヒートヘイズへと戻って行った。


僕は馬に乗りながら焔の神が生み出したであろうフェニックスを眺める。



「神を守りし神の獣を作り出すとは……流石父上」



炎の祠の力と焔の神の力で炎が倍増しているのだ。あの時、父上が戦うのは1人で十分と言った理由が痛いほどわかる。


これではいくら氷を操る人間でも太刀打ちは難しいだろう。となれば僕がやることは決まった。馬の足を別方向へと変えてまた走り出させる。


向かう先は炎の祠の方角。神を守るのは獣だけではない。国王として、息子として僕は父上を守らなければ。



「頼むぞ」



馬を撫でながら僕は炎の祠がある火山へ走る。近づけば近づくほど熱さを感じるが、草木が燃えることはなかった。きっと父上が絶妙に調整しているのだ。


僕には出来ないことを父上はやられている。

本当に炎に佇む岩石のような人なんだ、父上は。



「っ…!」



すると急に僕の体に寒気がくる。それを自覚した時、僕の体は馬から跳ね飛ばされた。生暖かい地面に体が打ち付けられ背中に痛みを感じる。



「いっ…て…」



馬はもう既に遥か遠くへ行ってしまい僕は1人ぼっちになった。痛みに慣れてなく、倒れ込む僕に近づくのは寒い空気と無機質な足音。


痛みで瞑ってしまった目を開ければそこには人間の姿をした氷が立っていた。氷人間は僕に向けて手を挙げるとそのまま勢いよく下ろしてくる。



「あっぶな!」



危機一髪、僕は横に転がってその鉄槌を交わした。すぐさま立ち上がって氷人間を見れば今度はカタカタと音を鳴らし始める。


僕が腰の剣を抜いて構えた途端、氷人間はじわじわと溶けて水と化していった。



「な、何だったんだ?」



水は蒸発するかのように空へと舞っていく。僕は改めて砦があるアイシクル領に視線を向けると、ブリザードは収まったはずなのに何だか騒がしい雰囲気を出していた。



「本当に暑いですわね。それに最初の1人目は脆すぎる」


「え…?」



誰かが僕に声をかける。その声の方向に顔を向けようとした瞬間、僕の手から腕にかけて霜が立ち始めた。



「誰だ!?」


「この私に向かって口が悪いこと」


「……アイシクルの王族?まさか」



身なりからしてそこら辺の人間ではないのがわかる。同時に目に入ったのは首飾りに付いているアイシクルの紋章だった。


雪のように白く氷のように輝く紋章を付けられるのはただ1人。



「アイシクルの女王……ダイヤか」


「わかっているじゃない。ヒートヘイズの王子、イグニ」


「何しに来た。僕を殺しにでも来たのか?」


「貴方は二の次ですわ。まず私が成さなければならないのはあの溶岩を生み出している者を氷漬けにすること」


「ここは通さない」



僕はアイシクルの女王ダイヤとは初対面だった。しかしこいつとは仲良くなれないと1発でわかったし、何より不敵な笑みを浮かべるその姿は悪魔に見える。


女王と話している今も霜が僕の体に這いつくばっているのでヒートヘイズ王族の力を使って腕に炎を宿した。


お陰で服は焦げてしまうけど心配すべきは自分の体だ。これくらいどうってことない。



「忌々しい力ですこと」


「僕からしたらお前の方が忌々しく思える」


「なら殺しても文句無しですわね。ここを通るためならまずは貴方からですわ」



女王が力を込めると彼女の手のひらが青白く光る。そして瞬く間に氷人間を形成した。



「これはアイスマンと呼ばれる存在。氷の力を持つアイシクルの王族なら誰でも生み出すことが出来ますわ。貴方達は砦を作ったみたいですけど……無数のアイスマンに攻められてどれくらいの持つでしょうね?」


「僕達には焔の神がついている。あのフェニックスが見えないか?」


「勿論見えてますわ。憎たらしい炎の鳥が」


「ならわかるだろう。フェニックスが火を吐き出した瞬間…」



火山のフェニックスはまた声を上げるように炎を天に向かって吐き出す。女王が作り上げたアイスマンは出してすぐに溶けてしまった。



「どんな氷でも溶ける」


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