34話 遠くなる意識と愛しい人
熱かったはずなのに急に冷たさがきておかしくなってしまった。気を失ったはずの私は頭が上手く回らない。それに体も全く動かすことが出来なかった。
手の指1本さえも微動しない。もしかして死んでしまった?
「あ……あ……」
でも声は微かに出る。ということはまた死んではないないはず。雪の女神は次の後継者が現れるまで死ねない。でもそれは不老の話だ。完全なる不死とは言えなかった。
「ダイ、ヤ」
目も開けられない私は小さく口を動かして妹を呼びかける。気を失ってどれくらいの経つのか。そしてここは何処なのか。
温度の感覚さえも鈍ってしまいアイシクルの何処にいるのかも検討がなつかない。氷の塔?それとも国?余計に頭が混乱してしまった。
「良いか?この塊に絶対に触れるな。俺達まで氷漬けだぞ」
すると誰かの声が聞こえる。ハッキリとした声ではなくまるで水の中で聞いているようにモゴモゴとした声だった。
「あくまでこれはアイシクル側の戦力が衰えた時の切り札だ。雪の女神は女王よりも氷の力を持っている」
男の声…。イグニ?
「そういえば氷花の液体はちゃんと溜めてあるんだろうな?力を持たないだお前らはそれくらいしか仕事がねぇんだから」
いやイグニではない。彼はこんなに乱暴な言葉遣いでは無かった。
私には敬語で、でも一緒に来る従者の方にはタメ口を使うけど上から目線の言葉は一切聞いたことがない。
「アイスマンさえ使えば人間を減らすことなく膨大な戦力を生み出せる。それでいて自由自在に動かせるから歯向かわれる心配はない」
となると誰だろうか。イグニでもダイヤでもない人。ああ、ダメだ。頭がおかしくなる。
「ったく。王族でありながら女神であるこいつが敵国の王子と戯れてるなんて。女王の逆鱗に触れるのは当たり前だな」
下品な笑いは私に対しての物なのだろうか。それすらわからなくなるほど意識が朦朧としてしまう。
「おい、そろそろ出るぞ。ここは力を持つ者以外は入れないようにする。忘れ物は無いな?ちゃんと戸棚や本棚は漁ったか?……よし。あまり有益な情報が書かれている本は無かったようだが、まぁ良い」
早く意識をちゃんと取り戻さなければ。そう思いながら脳内を整理しようとすると声を出していた男が私に近づいた気がした。
「それではゆっくりお休みください。次いつ目覚めるかはわかりませんがね」
私は反応も返せるはずがなく、男の足音は遠くなっていく。憎たらしい。それが私の心を埋め尽くす言葉だった。
次に重い音が響き渡る。この音は扉。そして何度でも聞いたであろう氷の塔の。私はどうやら氷の塔に閉じ込められたらしい。それがわかってもこの動けない体をどうやって動かせば良いのか。
「イグニ…」
また瞼が落ちてくる。少しだけ考え事をしただけで疲れてしまったらしい。今度こそ死ぬのかな。
最後に、イグニの顔を見たい。どうせならイグニの側で死にたい。そんなバカな事を思ってしまうのはきっと……イグニが好きだからだ。




