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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
7章 焔の神と雪の女神 (後編)
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33話 神への下剋上

「そんなのは受け入れられません!貴方は何を考えて居るのですか!?」



私は実の妹、ダイヤに向けて怒鳴っている。この子に声を荒げるなんて今までにあっただろうか。氷の塔の内部には私の声が響き渡って険悪さを表していた。



「私はアイシクルの民を思って決めたことですわ」


「それなら何故戦争なんて!民を犠牲にすると同じじゃないですか!」


「フロスお姉様。私はひと言も民を使うなんて言ってませんわよ」


「何をするつもりですか…?」



どれだけ怒っても声を出してもこの子の表情と意思は変わらない。自分は間違ったことをしていないとスンとしている。


それに比べて私は感情丸出しで、机を挟んで前のめりにダイヤと話す。そんな私と違って落ち着いているダイヤがとてもイラつかせる材料となった。


この子は突然、氷の塔に出向いたと思えばヒートヘイズに宣戦布告すると言い放ったのだ。最初は激務で気がおかしくなったのかと思ったけど、どうやら本気のよう。私はそれを止めなければならなかった。



「以前のお話を覚えているかしら?氷花ひかを使った計画とやらを」


「そういえばそんなことを言っていましたね」


「その計画がやっと花咲きましたの。特別にお姉様に見せてあげますわ」


「ダイヤ…?」



それが戦争の話とどう繋がるのか。ダイヤは私に見せつけるように薄水色の液体を持ち上げる。試験管に入った液体は氷花の花びらを思い出させる色だった。



「これは氷花の成分を凝縮した液体。安心してくださいまし。体に害はありませんわ」


「ダイヤ何を…!?」


「お披露目といきましょう」



ダイヤは勢いよく試験管を口に当て傾けると氷花の液体を飲み干す。嫌な予感がした私は立ち上がって試験管を払おうとしたけどもう遅かった。


するとダイヤはニヤリと笑って手を掲げる。次の瞬間、私の自室の床から棘のような氷柱が生み出された。


ダイヤがアイシクル王族の力を使ったのはわかる。でもここまで鋭く無数の氷柱を出せるのはいくら女王でも難しいこと。もしかして氷花の液体が…?



「まだですわよ」



ダイヤは掲げた手を戻して今度は横に振り払う。すると冷たい強風が私を襲った。テーブルは簡単に壁へ吹き飛び、棚に仕舞う本達は落ち始める。



「ダイヤ…!」


「フロスお姉様には特別に教えてあげますわ。氷花は王族が持つ氷の力を倍増させる成分を含んでいますの。つまりこれを飲めば雪の女神であるフロスお姉様を超える力を使える」



私が強風で目を瞑った時、ピキピキと氷の音が聞こえる。次は何をするつもりなのか。


とりあえずはダイヤ自身を止めなければと私は目を開ける。そんなダイヤの側には人型の氷が立っていた。



「これ、動かせますの」



ダイヤは私に向かって手を突き出すと人型の氷はゆっくりとこちらに歩いてくる。目も耳もないのに私の位置を認識しているようだ。


私は手に力を込めてダイヤを行動不能にしようと氷を発動させる。しかしそれはダイヤが投げたあるものによって妨げられた。



「何、これ」



粉のようなものが私に触れたと同時に体の力が抜けてしまう。膝から崩れ落ちた私は何が起こったのか理解できなかった。



「ヒートヘイズのお土産ですわ。雪の女神って確かアイシクルの民や王族よりも熱に弱いのですよね?その分寒さにはめっぽう強いらしいけど」


「嘘、熱い…体が、熱く…」


「ヒートヘイズには火石ひせきと呼ばれる石が存在するのです。アイシクルの氷花と同じように古き時代から存在する物ですわ。その名の通り石の中に火を宿している。今フロスお姉様に掛けたのはそれをすり潰した粉ですわ」



イグニの体温とは比にならないくらいに熱かった。まるで炎の中に体を入れられたみたいで皮膚が軽い火傷を覆う。


私は自分に氷を張ろうとするけど、体温が急激に上がったせいか氷を作ることが出来なかった。



「熱い…熱い…誰か…」



段々と視界が滲んでくる。涙が頬を流れて床に落ちた。



「私、思ってたんですの」



倒れ込む私に近づくのはダイヤではなく人型の氷。アイシクルの女王は遠くで雪の女神を見下している。



「以前のフロスお姉様ならこの話にも賛同してくれていたと」


「ダイ、ヤ…」


「でもお姉様はおかしくなってしまいましたわ。徐々に感情を露わにし始めたと思えば、教科書のような正義感を唱え始めるなんて」



ダイヤの話し声は耳に入ってくるのにその内容が半分も理解できない。それくらいに熱に浸食されてしまっている。



「あの男のせいなのでしょう?フロスお姉様」


「あ……」


「ヒートヘイズの王子、イグニ。フロスお姉様を狂わせた張本人。きっとヒートヘイズ側の手駒としてフロスお姉様を利用しようとしたのですわ」


「違う…イグ…ニは」



涙でダイヤの顔が見えない。その代わり幻かのようにイグニが私に手を差し伸べる姿が見えた。膝をついて這いつくばるようにもがく私を悲しそうにして見るイグニ。



「助けて…」



そんなイグニに手を伸ばせば彼は頷いて私の手を取ろうとしてくれる。もう離さないでください。そう思って手を重ねれば私の全身は動かなくなった。



「ふぅ。やっとひと息つけますわ。火石の粉で行動不能にして熱を与え、人型の氷アイスマンで急激に体を冷やす。そうすれば体は混乱して機能が一気に低下。グレイシャー公の助言が無ければ思い付きませんでしたわ」



ぼんやりとした意識の中、ダイヤの声が聞こえる。でも私はそれに返事も出来なくて徐々に目を閉じていった。

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