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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
6章 恋の行方と愛が辿り着く場所 (後編)
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29話 不器用な宣告

久しぶりに父上と世間話をして改めて感じた。それはやはり父上は不器用だということだ。


「最近…どうだ?」から始まったのは良いものの1つの会話が長続きしない。僕が率先して喋らないと無言の空間が出来上がってしまうのだ。


お酒の力を借りても無口なのはあまり変わらないらしい。僕も父上に似た口下手だったら結構大変だったと思う。



「……朝日が高くなってきたな」


「そうですね。父上、お酒の方は大丈夫でしょうか?」


「心配ない。多少酔っていても誰も気付かないだろう」



父上が持って来たお酒の瓶は既に空になっている。ほとんど父上がお飲みになられた。


僕は酔わない程度に飲んでいたから、そう考えると父上は結構アルコールが体に入っているはずだ。家臣あたりにバレなければ良いのだけど。



「そういえば、イグニが小さい時に炎帝の丘へ朝日を見に行ったことがある」


「覚えてません…」


「物心つく前かついてからすぐだったからな」


「僕と父上で炎帝の丘に?」


「お前の母も一緒だ」


「母上も…」



僕の母、ヒートヘイズの王妃はここには居ない。正確に言えばこの世界にはもう存在してなかった。体が弱く僕が小さい頃に亡くなったのだ。 


だから幼少期の思い出にはほとんど母上の姿はない。もっと深く掘り下げれば父上の姿もあまりなかった。


それくらい僕はヒダカとヒメナと共に過ごしていた。母上は幼少期に写真でしか見たことないけど、とても綺麗で大人しそうな女性なのを覚えている。



「本当は儂が先に死ぬと思っていた」


「え?」


「母の写真を見たことがあるお前なら勘付いているだろう。儂達は歳の差がありながら婚約をした。もう歳の儂が先に死ぬはずだったんだ」



父上は最後のひと口を飲んでグラスを空にする。初めて父上とする母上の話は僕の中で聞きたいようで聞きたくないと矛盾した思いが生まれてしまった。



「本当に、風のような人だった」


「もしかして先程した篝火クレープの考案者って」


「…………」


「父上?」



父上は少し俯いて黙り込んでいる。目を瞑っているから寝たのか?僕が確認しようと立ち上がった瞬間、父上の目はゆっくりと開いた。



「イグニ」


「はい」


「アイシクルと、戦争になるかもしれん」



僕の呼吸がその言葉で長く止まってしまった。


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