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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
6章 恋の行方と愛が辿り着く場所 (後編)
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23話 名物の篝火クレープ

ヒートヘイズの玉座には今日も父上の姿はなかった。アイシクルへ訪問に行って2日目。予定では明日の昼あたりに帰ってくるらいしい。


僕は時々玉座の間に顔を出して、少しの間家臣やメイドと話した後に父上の執務室に向かうということを繰り返していた。



「父上はこんなに大量の公務をやっていたとは。書類の山に目を通すだけで疲れ切ってしまう」


「これでもまだマシな方です。それにワタクシとヒメナも手を付けているのでその分減っていますよ」


「そうだけどさ…」



ヒダカは執務室の椅子に座る僕に追加で書類を渡してくる。父上が居ない間は国王の仕事を僕がやることになっているのだ。


ただでさえ細かい文字がずらりと並んでいるのにそれを大量に読まなければならないなんて……。



「目が痛い」


「少し休憩されては?休養中のフレイヤ様に顔を出される予定もありますし」


「あー、でもこの量だと結構時間かかるからな…。明日帰ってくる父上に大量の書類を預けるわけにもいかない。しかし!僕は思うのだ!人間には限界があると!」


「素直に休むと言っていいんですよ」


「休む」


「はい」



僕は椅子に踏ん反り返るように座る。それと同時に執務室の扉が勢いよく開いた。



「イグニ様!」


「うぉっ!ヒメナか。びっくりした」


「ここはイグニ様の自室ではありません。ノックをしなさい」


「イグニ様が居れば全部イグニ様の自室だもん」


「また屁理屈を…」



苦虫を噛み潰したようにヒダカは顔を歪めるけど、ヒメナはお構いなしに僕に近づいてくる。この踏ん反り返っている姿が家臣やメイドに見られなくて安心した。


するとヒメナはドサっと何かを机の上に置く。



「これは?」


「ヒートヘイズの名物、篝火かがりびクレープお持ち帰り用!」


「あの店のか」


「フレイヤ様のお見舞いで買ってきたんだ。兄貴とイグニ様の分もちゃーんとあるよ」



篝火クレープとは火を焚く篝火を模したピンク色のクリームがクレープの上に渦巻くように乗せられた食べ物だ。ヒートヘイズ城下町のお菓子屋さんで売られている。あの店、お持ち帰り出来たのか。


僕も小さい頃はよくヒダカとヒメナと共に行っていたな。懐かしい。



「ありがとう。全部同じのか?」


「これが王道の生クリーム味。こっちは代表のイチゴ味」


「フレイヤにはどれをやれば良いだろうか」


「2個とも持って行って選んでもらったら?」


「ならそうする」


「あ、私はどっちもね。兄貴とイグニ様は1つ」


「なぜヒメナだけ2個なんですか?」


「それは私のマイマネーで買ったからだよ」


「では僕達は文句言えないな」


「予算で買ったのかと思いましたよ……」


「流石にお見舞いは自分で買うもん。兄貴も買ったらほうが良いよ」


「そうします」



別にヒダカまで買わなくても良いのだけど、余計なことを言うとヒメナが怒鳴るからやめておく。でもフレイヤはそこまで気を遣われると己の真面目さが許してくれないだろうな。



「これ、早めに食べた方が良いよな?」


「まぁクレープだし」


「何で数日置けるものを選ばなかったのですか?」


「名物がこれだから!もう!口うるさいと兄貴にはあげないよ!」


「ヒダカ謝れ」


「……すみませんでした」



カタコトのヒダカを横目に見ながら僕はクレープを2個取る。王道味と代表味だ。そして立ち上がり執務室の出入り口に向かうと、両手にクレープを持ちながらヒダカとヒメナの方に振り向いた。



「フレイヤの所に行ってくる。美味しいうちに食べさせた方がクレープも喜ぶだろ」


「かしこまりました」


「はいはーい。いってらっしゃ〜い」



僕は執務室を出て治療室で休んでいるフレイヤの元へ行く。途中メイド達とすれ違えば、僕が両手にクレープを持っている姿に微笑んでいた。


何だか子供扱いされている気がした恥ずかしい。せめて袋に入れておくべきだったか。僕は2個のクレープを見つめながら考える。そういえばアイシクルにはクレープという存在はあるのだろうか。


以前読んだアイシクルに関しての本では和菓子と呼ばれるものが好まれていると書かれていた。興味あるが、アイシクルの食べ物をヒートヘイズの僕や民達が食べれる日は遠いだろう。



「フレイヤ。イグニだ。入るぞ」



あっという間に治療室に来た僕は、フレイヤが居るであろう個室をノックする。騎士団長でありながら僕の許嫁のフレイヤを他の騎士達と同部屋にするわけにはいかない。


フレイヤには事前に来ることを伝えていたから驚く様子もなく返事を返してくれる。僕はクレープを両手に持っているから肘で扉を開けてフレイヤに近づいた。

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