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【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦  作者: 雪村
5章 炎王子と女騎士団長
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19話 ヒートヘイズ国王自ら

「フレイヤ様の体温と脈拍は平常に戻っています。イグニ様、本当にありがとうございました」


「良いんだ。この力が人を助けられるのに繋がって僕も嬉しい」



老医師はフレイヤが助かったことに胸を撫で下ろす。正直僕はこの王族の力は戦い向きのものだと思っていた。


しかし今回の件で人を助ける力でもあると認識させられる。まぁ使う場面は限られてくるが。



「では何があったかお聞かせください」


「氷塗れになるなんて前代未聞ですよ!」


「ヒダカ、ヒメナちょっと待て。フレイヤはまだ体力が回復して…」


「大丈夫です。話すくらいなら出来ます」


「そ、そうか?」



従者2人はこの有り様になってしまった原因を早く知りたいようだった。フレイヤは老医師の手を借りて上半身を起こすとヘッドボードに背中を預ける。



「私は国王様の命令でヒートヘイズ領とアイシクル領の国境付近を見回りしていました。何でも以前の事件で国王様は警戒を強化されたので」


「確かに父上もそう言っていた。ちなみにどこら辺を調査したんだ?」


「炎帝の丘より北にある場所…。イグニ様と行った関所とは反対方向をにいました」



となると氷の塔が佇む方面だ。あの辺りは特に何かあるわけでもない。しかし氷の塔がある方向だからなのかヒートヘイズ領では少しだけ気温が低い場所だった。


たぶん今日雪女様の元へ出向いていたら確実にフレイヤと出くわしていただろう。想像すると肝が冷えるな。



「少しの間、騎士達はバラバラに動いて居たんです。私も1人で見回りをしていた時急に寒気がして…。そう自覚した時には氷が地面から私の体を這いつくばるように出てきました」


「やはり地面からなのか」


「炎帝の丘の時も地面から氷が出てきました。不可解と言ったら不可解ですね」


「フレイヤ様!その時近くに騎士以外の人とか見かけませんでした?」


「残念ながら全く。それに自分の体が凍っていくのを見て取り乱してしまいました。騎士団長として情けない」



心底反省するようにフレイヤは手を握りしめる。取り乱すのは当たり前だ。自分の体が急に凍って平然としていられる方が珍しい。



「ヒダカ。この事は父上に伝達が行っているのか?」


「はい。イグニ様が溶かしている間、騎士から報告がありました。今国王様がお戻りになられている最中です」


「ならすぐに玉座の間に向かおう。フレイヤはここで休んでいてくれ」


「いえ私も…」


「フレイヤ様ダメです。氷は溶けたとはいえ貴方はイグニ様のお陰で命を取り留めた身。しばらくは絶対安静でお願いします」


「…はい」



回復を専門とする老医師に止められてはフレイヤも無理矢理体を動かすわけにはいかなかった。



「父上と話し終わったら報告も兼ねてまた来る」


「わかりました」


「ヒダカ、ヒメナ行くぞ」


「「はい」」



僕は従者の2人と共に玉座の間へと行く。まだ父上は帰ってきてないはずだ。その前に色々と心の準備を整えなければならない。変な胸騒ぎが僕の中で踊っていた。



ーーーーーー



それから30分くらいだろうか。父上はいつもの厳格な様子で玉座の間に入ってくる。慌てた様子なのはないが、静かなる怒りがあるのが感じられた。



「おかえりなさいませ父上」


「状況は騎士から聞いた。フレイヤの氷を溶かしたことも」


「はい」


「良くやった。引き続き力を操る訓練を怠らないように」


「勿論です」



父上は玉座に座ると厳しい顔つきになる。これからの対策がまだ完全に決まってないのだろう。



「未だアイシクルの女王からは返事が来ていない。その前にあの手紙を受け取ったのかもわからない。イグニ、確か公爵に渡したと聞いた」


「はい。あの状況で関所を突破する事は不可能でした」


「うむ。その判断は正しいと思われる。しかし今回ばかりはそうもいかない」


「再び書簡を?」


「そうだ。しかし今回はイグニは出向かなくて構わない」


「それでは誰が……まさか父上?」


「ヒートヘイズの国王として確かめなければならないのだ。それに国王直々に出向くとなれば女王も黙っては居ないだろう」



玉座の間が静まり返る。この場の誰もがこんな事を予想してなかった。僕は前のめりになってしまう。



「ならばせめて僕が護衛を!」


「必要ない。留守の間はお前がヒートヘイズを守るのだ。他に役割を担う者はいない」


「そ、そうですが…」


「明日我はアイシクルへと向かう。場合によっては1日では帰れぬかもしれない。留守を頼んだ」


「かしこまりました」



父上はそう告げると執務室へと足を動かす。これから書簡を書き留めるのだろう。僕は頭を下げて見送る。玉座の間は炎の国なのに何故か冷たい雰囲気に呑まれていた。

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