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第四章 新しい生活と揺れる心(3)

 機嫌が良さそうなジークリンデに横抱きにされたまま志乃は、再び魔動車に乗っていた。

 そして、数分ほどで到着した場所は、見事な庭園を有する豪邸だった。

 ジークリンデが、志乃を伴って豪邸内に足を踏み入れると、執事と思われる初老の男性が二人を出迎えていた。

 

「ジークリンデ様、お帰りなさいませ」


「うん。ただいま。急で悪いけど、シノ……。俺の奥さんになる大切な子の部屋の準備をお願いできるかな?」


 ジークリンデの言葉に、初老の執事は一瞬目を丸くさせたが、すぐに朗らかな表情で答えていた。

 

「かしこまりました。それでは、ジークリンデ様のお部屋の隣に準備いたします」


「うん。よろしく。それじゃ、シノ、君にこの屋敷内の案内をするな」


 そう言ったジークリンデは、広い屋敷内をゆっくりとした足取りで案内したのだ。

 一通り案内し終わったジークリンデは、志乃を連れて自室に向かった。

 二人掛けのソファーに志乃を膝に乗せた状態で座ったジークリンデは、志乃を後ろからぎゅっと抱きしめながらそれはそれは楽しそうに言うのだ。

 

「シノ、君と出会えて、俺は本当に幸せだよ。これから毎日シノを可愛がってあげるから。シノも俺を甘やかしてくれよな?」


 急に甘えるようにそう言うジークリンデに志乃は胸がぎゅっと締め付けられる思いだった。

 甘えてくるその様が可愛らしく思えて仕方がなかったのだ。

 

 しかし、ジークリンデは名残惜しそうにしながら志乃から身を離す。

 

「ああ、離れがたいが仕方ない。ちょっと城に戻って一仕事してくる。でも、すぐに戻ってくるから。でも、夕食は先に摂って休んでくれていいからな。ごめんな。一人で心細いとは思うけど、家令たちには、シノに良くするように指示しておくから」


 そう言って、志乃の頬にキスをしたジークリンデは、名残惜しそうに部屋を出て行ってしまったのだ。

 志乃としては、急に一人になって心細くなっただけで、別にジークリンデを恋しがっているわけではないと思いつつも、それでもずっと傍にあった温もりが無くなったことに微かな寂しさを感じていたのは確かだった。

 

 執事や侍女たちは志乃に優しく接してくれるものの、アルエライト王国での扱いとの差に困惑し通しだった。

 そんな志乃に対して、微笑みを絶やさずにあれこれと世話を焼く執事たち。

 

 結局、ジークリンデが屋敷に戻ってきたのは日付が変わった後だった。

 王城では、アルエライト王国との国境沿いに結界石を配備し、聖属性の魔法の使い手も待機させる方針で決まった。

 その他にも、大量に流れてくるだろう難民の受け入れ先もある程度決める。

 そこまで決まれば、あとは国王たちの仕事だとジークリンデは、急いで屋敷に戻ったのだ。

 

 それから数日間は、朝早くに王城に向かい、魔力災害の対策を練り、昼前に屋敷に戻る生活を繰り返すジークリンデだったが、日増しに志乃との触れ合いが足りないと感じるようになっていくのだった。



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